見出し画像

【 第30回 】子どもをあなどることなかれ(1)

◆「助けられる人」から「助ける人」へ

4年前の東日本大震災では、中学生が地域の一員として活躍した、という話を多く聞きました。
避難の際に、中学生が小学生の手を引き、また近所の高齢者を連れて逃げ、多くの人の命を救った「釜石の奇跡」を筆頭に、避難所では、たくさんの中学生が自ら率先して手伝い、大人の手の回らない部分をカバーした、という話は皆さんがご存じのことでしょう。

私は、この一連の話題の中で聞いた、「中学生は『助ける人』になれる」という言葉が強く印象に残りました。
これまで、「まだまだ子ども」と思っていた中学生を見直しましたし、見方を変えなければいけないなと思ったのです。

中学生となり、体は大きくなっても、精神的には幼い部分が多く、まだまだ甘えたい気持ちがあるのが普通で、大人の保護が必要です。親は、我が子に関して、いつまでも「子ども扱い」をしてしまうものですね。
そんな「助けられる人」だった中学生が、立派に「助ける人」になっていた姿を見て、「子どもをあなどってはいけないな」とつくづく思いました。
私たち大人の接し方一つで、子どもたちは、こんなにも変わることができるのですから。

◆「普通救命講習」を通じて自覚を持たせる

我が子が通う小牧市立小牧中学校では、2年前から、3年生全員が、消防署の協力を得て「普通救命講習」を受講します。

多くの学校で教職員対象の講習が行われていますので、先生方も一度は受講されていることと思います。
通常3時間かけて行われる講習では、心肺蘇生法やAEDの使い方などを学び、受講後には「修了証」を発行していただけます。
この講習は「大人向け」であると思っておられる方が多いと思いますが、学校の要請があれば中学生でも受講できます。
短時間(50分)で、実技を中心に簡易的な講習を行う例もありますが、通常版をしっかり受講し「修了証」をいただくと、子どもたちのモチベーションも違ってくるようです。

先日、今年度の「普通救命講習」が本校で行われ、お手伝いをしてきました。
その中で、先生や指導してくださった救急救命士の方がおっしゃっていたのは、まさに「中学生は『助ける人』になれる」ということでした。
「目の前で突然人が倒れる」という場面に出くわすことは、もしかしたら一生ないかもしれません。習った心肺蘇生法やAEDを使うことも、一生ないかもしれません。
それでも、体験しておくことには大きな意義があります。知識として知っているだけでは、実際にできるとは限りませんが、体験しておけば行動に移すきっかけになります。

◆大人の思いを伝える

学年主任の先生とお話をしていて、とても共感したことがあります。
それは、「困っている人がいたら、一歩前に出て、大丈夫ですかと声をかけられる人になってほしい」という思いです。
「何か自分にできることはないだろうか、と考えられる人になってほしい」という先生の思いに、保護者としても、大人としても深く共感しました。
「普通救命講習」は、いざというときに役立てるための講習ですが、その根底には、こうした大人たちの思いがあることを教えていただき、とてもうれしく思いました。

その思いは、しっかり伝えなければ、子どもたちには伝わりません。
ただ「講習を受けなさい」と言うだけでは、子どもたちは「どうせ使うことないし、誰か他の人がやってくれるだろう」という気持ちで受講するのが関の山です。そのような気持ちで受講しても、せっかくの機会が、その場限りの体験で終わってしまいます。
この講習を通じて、あなたたちは「助ける人」になれるんだよ、というメッセージを送り、体験することがいかに大切なことなのか、ということを子どもたちに学んでほしいと思います。

講習のお手伝いをしていて感じたのは、大人の接し方の重要性です。
指示の仕方も、手取り足取り、とにかく丁寧に指示をすればよいというものでもなく、子どもに任せて考えさせる指示も時には必要です。
必要以上に子ども扱いをせず、子どもをあなどらず、「あなたたちは自分の役割を果たすことができる」という自信を持たせることが大切だと感じました。
「中学生は『助ける人』になれる」という言葉には、「自分で考えて行動できる人」になってほしい、という大人の思いがあることを、子どもたちに伝えていきたいですね。

(2015年9月7日)

**********

2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。

保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。


ご覧いただきありがとうございます。よろしければ、ついでにブログにもお立ち寄りくださいませ(^o^)→https://mattaribetty.hatenablog.com/