【 第28回 】「授業力」に想う(1)
◆経済格差と学力格差
「学校の授業はわからない」「塾の授業の方がよくわかる」
子どもたちから、よく聞くセリフです。
こんな風に言われた時、親として、どう答えたらいいものか、本当に困ってしまいます。
学校では、様々な学力の子どもたちがいて、全体がわかるように授業をされていると思います。最近では、教科によっては、習熟度別のクラスに分かれて、子どもたちがより理解できるような授業をしている学校もあります。
一方で、学習塾では、一斉授業だけでなく、個別指導にも力を入れて、子どもの理解度をこまめに確認し、わからないところをなくすだけでなく、テストで点数が取れるような授業が行われています。
学習塾に通っている子どものすべてが、それだけで成績が上がるということはないでしょうが、少なくとも学習塾は高い授業料を取っている分、到達目標が明確で、目標達成のためのプロセスもよく考えられているように見えます。
このところ、「保護者の経済格差が、子どもの学力格差につながる」ということが話題になりますが、このように学習塾が子どもの学力向上に大きく寄与していることを考えると、それもうなずけることです。
◆学校の「危機意識」
だから、「学習塾がよくて、学校が悪い」ということではありません。
学習塾に高額の授業料を払っている保護者は、学習塾に対して、それに見合った効果を求めます。それが達成できなければ、さっさと見限って、他の塾に変わっていってしまいます。ですから、学習塾は企業努力を続けていかなければなりません。
しかし、学校はそうではありませんね。
もちろん、学校では、授業以外にも多くのことを学びます。それらは、子どもにとっては、人として生きるためのとても大切な学びです。
学力が伸びないからといって、子どもが学校を変わるということはまずありません。テストの平均点が低いからといって、担当の先生が配置換えになることもないでしょう。
学校に対して「企業努力」のようなことを求めるのは、筋が違うと思われるかもしれませんね。ただでさえ忙しい先生方に「もっとがんばって!」と言うことは、本当に気が引けてしまいます。まして、学校に、学習塾に対抗してほしい、と言うつもりもありません。でも、学校には危機意識が少し足りないのではないか、と感じることがあるのです。
◆「自己満足」の授業になっていませんか?
言うまでもなく、先生方の仕事は「教えること」ですよね。そして「授業のプロ」であるはずです。
その先生方の授業がさっぱりわからない、という子どもたちの話を聞いていると、先生が一人でずっとしゃべっている「講義型」の授業の風景が浮かんできます。
教科によって、または単元によって、どうしても説明中心になってしまう内容があることはわかります。先生が丁寧に説明することで、子どもたちが理解する場面も多くあることでしょう。
でも、そればかりだと、どうしても子どもは飽きてしまいますね。ですが、先生はお構いなしに授業を進めていきます。その結果、子どもたちの集中が切れてしまい、先生の話は上の空になってしまって、結局、授業がわからない・・・という悪循環になってしまっているのではないでしょうか。
人は経験を積んでくると、以前からやってきたことは、上手にできるようになります。
先生方も、経験を重ねると、「自分の授業スタイル」ができてくるでしょう。つっかえながらだった授業が、流れるような授業に変わってくると思います。それは一つの成長の証なのかもしれません。
ただ、これまでは上手くいっていた授業が、いつまでも同じ形で通用するとは限らない、ということもあるのではないでしょうか。
相手にしている子どもたちは、毎年変わっているのです。
それに気付かないでいると、先生の「自己満足の授業」になってしまいませんか?
「授業のプロ」であるならば、先生の自己満足ではなく、「本当に子どもたちに授業が届いているのかどうか」ということにこだわってもらえるといいなと思っています。
(2015年7月6日)
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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。
保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。
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