【 第45回 】「地域と学校の連携・協働」に想う(3)
◆「協働」って何でしょう
前回のコラムでは、「学校の現状を知ってもらおう」というお話をしました。
学校の「困り感」や「現状」を、率直に地域の方々にも知ってもらえれば、「協働」への理解につながりやすいのではないかと思います。
ここで「協働」って何だろう、ということを考えてみましょう。
◆「支援」も「協働」の一つ
「協働」とは、漢字が表しているように、さまざまな人たちが協力して活動をすることを意味します。
文部科学省からは「地域(いろいろな立場の人々)と学校が協働してね」という、大まかな指針が出されていますが、「協働する活動」の具体的な内容についてはそれぞれの地域に任せられています。
何もないところから、活動をいきなりスタートするのは大変です。
そのため、これまでに先行して活動を進めてきた団体の事例集が文部科学省から出されています(学校と地域でつくる学びの未来「地域と学校の連携・協働の推進に向けた参考事例集」…以下にリンク)。
それらを参考に「協働する活動」を考えるのもよいでしょう。
しかし、そうは言っても、何か新しい活動を始めるのは大変そうだし、地域の人が協力してくれるかどうかもわからないから、とてもうちではやれそうにない・・・と尻込みしてしまう学校が多いようです。
最初から、あれもこれもと欲張らず、小さく始めるのがよいのではないかと思います。
学校が、今困っていること、なんとかしたいなと思っていることを、少しだけ前に進めてみようという思いで始めてみるのはいかがでしょうか。
困っている学校に対して、地域の人々ができることと言えば、学校(先生)を「支援すること」です。
学校だけでは手が回らない部分に、手を貸すことはできます。
例えば、通学路の見守りや絵本の読み聞かせ、家庭科の実習のお手伝いなど、先生だけでは人手が足らない部分を地域の人にボランティアとして手助けしてもらうことは、おそらく多くの学校ですでに取り組まれていることでしょう。
このような「支援」も、立派な「協働」なのです。
無理をして新しい活動を立ち上げるのではなく、こうした「これまでやってきたこと」をベースとして考えていけばよいと思うのです。
まずは「支援」から。小さく一歩を踏み出せば、スタートしやすいでしょう。
◆地域の未来を考える
協働活動を始めるにあたり、学校と地域が「こんな子どもを育てたい」という思いを共有するときに、ぜひ考えていただきたいことがあります。
それは「こんな地域にしていきたい」という、「地域の未来」のことです。
子どもたちは、将来の地域の担い手になります。ですから、子どもたちの育ちを考えるとき、それは地域の未来を考えることにもつながっていると思うのです。
21世紀に入ってから、日本は人口減少社会になっています。これからも爆発的に人口が増加することはないでしょう。
今後さらに少子高齢化が進み、地域には高齢者ばかりが残るようになってしまうと、地域の存続すら危ぶまれます。
今後の日本の姿を考えると、子どもたちに地域を支える担い手になってもらうためには、子どもたちが大人になっても住み続けてくれる地域でなければならないでしょう。そうなるためには、どのような地域が望まれるのだろうか、という観点が必要なのではないでしょうか。
学校は、昔も今も「地域の中心」ですし、これから先も、地域のコミュニケーションを築くための大切な役割を担っていくことでしょう。
ですから、学校は地域のためのさまざまな情報発信の場であってほしいと思いますし、「地域学校協働本部」は地域を支える組織になってもらえるといいなと願っています。
◆先生も「地域の一員」に
学校の先生は、定期的に異動があり、入れ替わっていきます。
地域の人から見ると、このことが学校との協働に、暗い影を落とすことがあります。
「せっかく始めた活動なのに、管理職の先生が変わったら、また一からやり直しになってしまう」という言葉を何度聞いたか分かりません。
「どうせ今だけでしょ」と思えば、活動に力が入らないのは当然のことです。
ですから、どうか先生方には、「自分も地域の一員」という気持ちを持っていただきたいのです。
「自分は異動してしまうので、あまり大きな声では発言できないな」という消極的な姿勢ではなく、「ここは自分の地域なんだ」という思いを持って、地域の人々と「こんな地域にしていきたい」という願いを共有してほしいのです。
以前のコラムで、「地域と学校が連携して協働活動を行うためには、参加する皆さんの『共通の土台づくり』が大切です」と書きました。
その「共通の土台」には、参加者みなが「自分も地域の一員」という意識を持つ、ということも含めていただけるといいなと願っています。
(2016年11月28日)
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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。
保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。
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