【 第44回 】「地域と学校の連携・協働」に想う(2)
◆初めの一歩を掘り下げる
前回のコラムで、地域と学校の連携・協働には、「共通の土台作り」が初めの一歩です、と書きました。
そのためには、学校側の働きかけが大切なこと、そして校長先生が「どんな子どもに育てたいのか」「どんな学校を作っていきたいのか」という思いを伝えることが必要ではないか、という提案をさせていただきました。
ここをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
◆見通しを持つ
例えば、「地域学校協働本部を立ち上げよう」という場合、学校では、どのような人々に参画してもらうかを検討するでしょう。
一般的には、PTAやボランティア活動などで学校に関わってくださっている地域の人々に声をかけることになると思います。
このとき、声をかけられた人々は「今度は、一体何が始まるのだろう」と不安に思っていることでしょう。
学校側にしても、初めてのことであれば、「どのような組織にしていけばいいのか」「どんな活動をすればいいのか」と疑問を持ちながらのスタートになるのは仕方のないことです。
このように、誰もがどうしてよいのかわからず、不安な状態では、せっかく皆さんで集まっても「なんとなく集まって、なんとなく話を聞いた」という会議になってしまいがちです。
また、いきなり意見を求められても、なかなかすぐには答えられるものではありませんから、活発な意見交換をするというのも難しいでしょう。
やはり、学校側がある程度の見通しを持って、皆さんに声をかけるのが望ましいのではないでしょうか。
◆学校の「困り感」を話題に
では、その見通しを持つためにどうすればよいか。ここが悩みどころだと思います。
ただでさえ忙しい学校現場で、余計な時間を取られることは誰もやりたくはないですよね。
ですから、わざわざ手間のかかるようなことではなく、身近なことを使って考えてみるのはいかがでしょうか。
例えば、どこの学校でも定めている「学校教育目標」を軸に考えてみるのもいいのではないかと思います。
「学校教育目標」に定められた「目指すべき子どもの姿」はどんなものでしょうか。
「目指すべき学校の姿」とはどんなものでしょうか。
ぜひ考えてみて下さい。
そして、学校の現状を見直してみる。
どんな課題があるのかをリストアップしてみる。
「目指すべき子どものも姿」「目指すべき学校の姿」にするために、どんなことが足りなくて、どんな対応が必要なのか考えてみる。
こうして出てきた課題は「学校が困っていること」ではないでしょうか。
やりたいけれど、人手が足りない、時間がない、などでできないことではないでしょうか。
中には、問題を解決するための手立てが思いつかないけれど、できればなんとかしたい、ということもあるかもしれません。
いずれにしても、学校だけでは解決できないような課題が出てきただろうと思います。
それを話題にすればいいのではないかと思うのです。
「今、学校ではこんなことが課題だと考えているのですが、解決する手立てを一緒に考えてもらえませんか」と、学校の困り感を話せばよいのではないでしょうか。
そんなことを言ったら、「『学校は一体何をやっているんだ』とお叱りを受けるかもしれない」と躊躇される校長先生は多いだろうと思います。
しかし、今、学校だけで解決できない問題は、学校だけで考えているうちは、いつまでたっても解決することはできません。
「だから協働するんだ」と意識を切り替えていただけるといいなと思うのです。
参加されるメンバーも、最初は戸惑うかもしれませんが、学校の「現状」を知り、「学校の困り感」が伝われば、きっと「何かできることはないか」と一緒に考えてくださることでしょう。
学校側が真摯な態度で思いを伝えれば、それは必ず伝わるはずです。
ぜひ、勇気を持って「困り感」を伝えてください。
◆学校の「現状」を知ってもらう
地域の方の中には、長い間学校と接点がなかった人もいらっしゃいます。
そうした人は、「今の学校」がわかりません。
できれば、学校公開日などを利用して学校に来ていただき、授業を参観してもらったり、子どもたちの様子を見てもらったり、学校の施設の様子を見てもらったりする機会を設けていただけるとよいと思います。
その際に、「困っていること」も具体的な事例を紹介しながら説明していただけると、皆さんの共通認識になりやすいのではないかと思うのです。
こうした機会を作ることで、皆さんに「現状」を知っていただき、それが学校の「困り感」の理解につながるのではないかなと感じています。
「組織を立ち上げなくちゃならなくなった。どうしよう、困った・・・」と困惑されている学校が多いと聞きます。
せっかく始めるのであれば、「とりあえずやりました」という形だけの会議や組織で終わってしまうのはもったいないですよね。
「地域学校協働本部」が学校にとっても地域にとっても、真に連携できる組織になり、楽しくやりがいのある活動になることを願っています。
(2016年10月31日)
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2013年4月~2018年3月まで、5年にわたり寄稿・掲載された教育コラムの原稿集です。
保護者の視点で考えていた教育のこと、また先生方へのエールなど、自由に書かせていただきました。
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