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「東京観光日誌」#35|目黒|久米美術館

6月25日(土)晴れ。
今日は暑くなるという予報だったので、久しぶりにTシャツ短パンで恵比寿に向かった。

・ 気合を入れて恵比寿へ行く

「東京都写真美術館」は以前から気になる美術館だった。いつものようにホームページで事前にチェックしておいた。現在行われている展覧会はというと・・3階展示室では「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」。2階展示室では「TOPコレクション メメント・モリと写真 死は何を照らし出すのか」。それから、地下1階展示室では「岩合光昭いわごうみつあき写真展 PANTANAL パンタナール 清流がつむぐ動物たちの大湿原」という内容だった。

岩合さんの展覧会には25日だけのスペシャルトークもあって、それに合わせてこの日を選んだ。整理券は当日開館時間の10時から配布されるという。
入館に際しては事前予約制ということだったので、予約を入れようと思ったらすでに当日午前中は満杯だった。スペシャルトークは11時と14時の2回行われるということなので、14時に合わせるように13時からの事前予約を入れることにした。

岩合光昭・・動物写真家として有名な方だ。BSプレミアムでは「岩合光昭の世界のネコ歩き」で人気を博している。時々観ることもあった。どのような人物なのか興味があるので、生の声で話を聴いてみたかった。

こういう人気のある方の場合、かなり気合を入れないといけない。だから、10時配布ということなので、最低でも1時間前にはスタンバっていないといけない、と思った。逆算すると、かなり早めに家を出ないといけなくなる。久しぶりにアラームをセットして寝た。

気合が入り過ぎたせいか、8時ちょっと過ぎにはJR恵比寿駅に着いてしまった(写真下)。

恵比寿駅東口改札
恵比寿スカイウォーク

人もまばらで“動く通路”「恵比寿スカイウォーク」は風通しがいい(写真上)。ここは「恵比寿ガーデンプレイス」へつなぐおよそ400mの通路となっている。

恵比寿スカイウォーク出口前の様子

通路を出ると、目の前に「恵比寿ガーデンプレイス」が見えた(写真上)。「東京都写真美術館」の案内表示もある。
近くにエリアマップがあるので見てみよう(写真下)。

「恵比寿ガーデンプレイス」エリアマップ

先ほどのスカイウォークの出入り口から真っ直ぐ歩いて行けば「東京都写真美術館」に着くようになっている。

「恵比寿ガーデンプレイス」・・ここはサッポロビールの本拠地である。サッポロビール工場跡地を再開発し、オフィスビル、商業施設、レストラン、集合住宅、美術館といった複合施設として1994年に開業した。
ここには「ヱビスビール記念館」もあって試飲もできる「ヱビスツアー」もある。リコを誘ってまた来ようか。

では、エントランスパビリオンという建物を左手に真っ直ぐ進んで行こう(写真下)。

エントランスパビリオンの横道
東京都写真美術館 北側側面

あった。ここか・・東京都写真美術館(TOKYO PHOTOGRAPHIC ART MUSEUM)。入口はどこだろう・・右の方かな・・行ってみよう。

美術館 西口

ここかな・・(写真上)。まだ誰もいない。ちょっと早く来すぎたかも。
少し周りを探索してみよう。この先はというと・・

美術館 南口

立派なエントランス(写真上)だ。ここかな? しかし・・ここにも人がいない。駅から反対側に位置するのも妙だが・・もう一度先ほどの入口へ戻ってみようか・・。

美術館西口前に貼られた案内表示

・・と、コロナ対策に関する貼り紙かと思ったら(写真上)・・何々・・「岩合光昭スペシャルトーク整理券は1F東側入口へお回りください」?? そうか・・さっきの分かれ道か、右側に来てしまったが、左側へ進まないといけなかったんだ。

美術館東口に向かう通路

こっち側だったんだね(写真上)。いるいる・・やはりすでに人が並んでいる(写真下)。時計を見るとまだあと1時間もあるけどね。

美術館 東口出入口前に並ぶ人

しばらく待っていて・・ふと後ろを振り向くと、いつの間にか後ろに長い列・・。確か・・スペシャルトークが行われる1階ホールの収容人数は150名と書いてあったと思う。それを上回る人数になっていた。

・2時間の合間に行けるところ

ひたすら待って1時間。
やっと整理券をゲット(写真下)。

岩合光昭スペシャルトークの整理券
10時開場とともに長い列が動き出す

並んでいた人たちは全て整理券のためというわけではなく、10時からの入場者も含まれていた。結構来場者が多く向こうまで並んでいる(写真上)。人気のある美術館なんだね。

私の事前予約は13時からの入場。トークは14時に行われることになる。今日は開催中の全ての展覧会を観る予定なので、午後は夕方までここにいることになりそうだ。
さて、只今10時20分。13時まで2時間40分。食事に30分かかるとして残り2時間10分。どうしようかな・・。

近くで何か鑑賞できるところないかな、とスマホでリサーチ。
「松岡美術館」か・・ここは「ぐるっとパス」の“使える施設”にあった。また購入するかもしれないからここは後日にと・・「東京都庭園美術館」も同じかな・・ここは2時間ではゆっくり観るのは難しいだろう・・。
「久米美術館」? JR目黒駅近くにあるようだ。規模的には小さい美術館のようだな。ここから歩いても行けそうだ・・ちょうど良いかも。うん、ここに決めた。

ということで、先ほど行った美術館南口の方へ行き、三田橋を渡って目黒三田通りを南下。今日は日差しが強く気温も高い。歩く時間も長くなってかなり消耗しそうだ。

JR目黒駅 西口

20分ちょっとで「JR目黒駅」前に到着(写真下)。駅西口前斜め右方向に久米ビルがあり(写真下)、ここの最上階に「久米美術館」がある。早速中に入ってみよう。

・ 久米美術館でタイムスリップ

久米ビル 最上階に「久米美術館」の表示
1階久米ビル入口
久米邦武像

奥には「久米邦武くにたけ像」が設置(写真上)。名前からしてここの所有者であったことがわかる。エレベータで8階へ上がることにしよう。

8階久米美術館前

エレベータから降りると、静寂的な空気が漂う8階フロア(写真上)・・外の喧騒が嘘のようだ。本日最初の来客になったかな、と思いながら窓口へ。
入場料一般500円を支払い、写真の撮影はできますか・・と確認。
展示場内は不可とのことだった。展示場外はOKとのこと。

了解。この扉を開けるとタイムスリップに落ちる、という気がした。
そっと中へ入るとそこは・・予想通り明治大正の空気をまとったワンルームのみの空間となっていた。

ここでは現在、「久米美術館 館蔵品展」が開催されている。見渡すと作品点数も少なそうだ。ゆっくり鑑賞させてもらおう。

久米美術館は、歴史家・久米邦武とその長男で洋画家の久米桂一郎を記念して、二人のゆかりの地、目黒駅前に昭和57年10月に開館しました。
通常は久米父子の資料や作品を併せて展示していますが、久米桂一郎の師であったラファエル・コランや友人・黒田清輝などの作品を盛り込んだ展示や、久米・ 黒田の東京美術学校(現・東京芸術大学)の教え子たちの作品展なども順次行っています。また、様々なテーマからなる久米邦武の特別展も開催しています。

久米美術館について(ホームページより)
久米桂一郎(1866-1934)*チラシより

展示作品は久米桂一郎の油彩画が多く占めているようだった。印象派の影響を多分に受け、少しくすんだ色調の典型的な日本近代油彩絵画のように伺える。

久米桂一郎作「秋景」*チラシより

作品を観ていくと黒田清輝せいきの姿がチラチラと目に入ってきた。

黒田清輝作「画室にての久米桂一郎」(左)「久米桂一郎肖像」(右)*チラシより

二人は共にフランスで画家ラファエル・コランに画を学び、交遊を深めた仲だったのだ。桂一郎が好んで滞在した北フランスにあるブレハ島に黒田も度々訪れている。その時に描かれた作品も展示されていた。

黒田との交遊は帰国後も続き、二人は新たな美術団体「白馬会」を創設し、美術教育や美術行政に尽力して日本の洋画界の発展に寄与した、とあった。

久米桂一郎「林檎拾い」*チラシより

この展覧会は洋画家の久米桂一郎だけでなく、その父、歴史家の久米邦武に関する資料も一緒に展示されていた。この美術館は二人の功績を称えるために創設した美術館だった。

久米邦武(1839-1931)*チラシより

そう言えば・・「クニタケ・・クニタケ・・」どこかで聞いた名前だ。
中央にある椅子に腰かけすぐにスマホを取り出して調べ始めた途端・・どこからか、窓口の女性が慌ててやって来た。
「展示場内ではスマホの操作は禁止しております」と告げられた。
「すみませんでした。それでちょっとお尋ねしたいのですが、この久米邦武さん・・もしかしたら昨年放映していたNHK大河ドラマ「晴天を衝け」の登場人物にいたような気がしたので、調べてみたかったのですが・・」
すると、
「でしたら、学芸員の方を呼んできますので、少々お待ちください」と素早く出て行った。

立ち去ったドアからすぐに学芸員の女性が現れた。
すぐさま先ほどと同じ質問を投げかけてみる。
「渋沢栄一と風貌がよく似ていて間違われたりします。大河ドラマで扱われたパリ万博使節団には残念ながら入っておりません。久米邦武は維新後の岩倉使節団に一員として欧米12か国を視察いたしました」と明瞭な回答をいただく。お礼を述べて、再び椅子に座って考えてみることに。

ちょっと調べるくらいだったんだが・・
「クニタケ・・クニタケ・・クニタケではなくてアキタケか。そうだ、アキタケは徳川慶喜の弟、徳川昭武だった」全然勘違いだ。

しかし・・確かに久米邦武の晩年は渋沢栄一と似ている(写真下)。

久米邦武(左)と渋沢栄一(右) *Wikipediaより

1873(明治6)年、1年9か月の長期視察を終え邦武は帰国。その後、視察報告書を自力で執筆、そして5年後、全100巻にも及ぶ「米欧回覧実記」を上梓した。

「米欧回覧実記 初版本」*チラシより

この出版により邦武は、政府から500円という多額の報奨金を受け取った。これを資金にして、目黒の広大な土地を購入し、実子桂一郎をフランスに留学させている。

いい時間だ。そろそろ戻ろうか・・ここは涼しくて寛ぐこともできた。
展示場を出て入り口前の写真をしばし鑑賞。
セピア色になった写真だが・・何か輝いているな。

写真左:フォンテーヌブローにて画友と(明治24年)前・黒田清輝、右・桂一郎
写真右:白馬会の仲間たち、パリにて(明治33年)

久米美術館
住所:東京都品川区上大崎2-25-5 久米ビル8階
電話:03-3941-1510
[開館時間]10:00~17:00(入館は16:30まで)
[休館日]月曜日(月曜が祝日の場合は翌日休館)、年末年始、展示替え期間
公式ページ:https://www.kume-museum.com/index.html


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