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覆面パトカー


今回の部員日記は、経済学部3年の松川雄大が担当させていただきます。


みなさんは覆面パトカーを見たことがありますか?

もし車を運転している人で「スピード出したい!」と常日頃考えている道交法軽視者がいるのだとすれば、さぞかしよく気にしていることでしょう。

覆面パトカーとは、通常の赤色灯や黒白のカラーリング等を模した警察車両とは違った、一般車両と同じ見た目をしている警察車両のことです。反転式赤色灯などを車内に備え、緊急時には赤色灯を上げて走行します。覆面パトカーには、交通取締用・捜査用・警護用があり、今回は「交通取締用」の覆面パトカーに着目していきたいと思います。


それでは目次です。



1.覆面パトカーについて


交通取締用の覆面パトカーは、正式名称「交通取締用四輪車」と呼ばれ、各都道府県警察本部交通部に所属する、交通機動隊高速道路交通警察隊、また所轄署の交通課が交通取締用に使用するパトカーの総称です。車両は、国費で警察庁が、都道府県費で各都道府県警察が、それぞれ一般入札にて購入します。

この車両についてはトランクの容量等の細かい規定がありますが、特に速度違反車両に対抗する目的から、警察庁は入札条件に「2.5㍑以上」の高排気車両であることを定めています。また車種は4ドア型のセダンが基本となります。

覆面パトカーは普段、赤色灯を隠して走行します。赤色灯には主に「反転式赤色灯」と「着脱式赤色灯」の2種類があり、世の中に存在するほとんどの覆面パトカーが、前者の赤色灯となっています。



2.覆面パトカーの仕事


今回は交通取締用覆面パトカーの解説なので、仕事とはその名の通り、交通の取り締まりです。取り締まりの対象となる違反はさまざまで、例えば 酒気帯び運転・速度超過・信号無視・通行禁止違反・横断歩行者等妨害・一時不停止・駐停車違反などがあげられます。

それぞれの交通違反の点数一覧はこちらです。

先に書いたとおり、交通取締用覆面パトカーは、「交通機動隊」・「高速道路交通警察隊」・「所轄署の交通課」の3つに区分分けできます。前者2つは都道府県警警察本部直下の執行隊で、一日に50~60件もの取り締まりを行うともされています。

交通機動隊は一般道での取り締まりを行う一方で、高速道路交通警察隊(高速隊)は高速道路での取り締まりに従事しており、うまく棲み分けが出来ています。これらの隊員は基本、両サイドに白ラインの入ったブルーの制服を着用し、またヘルメットを装着しています。なので、覆面パトカーの後ろについたり、また追い越しざまに車内を見ると、はっきりと警察官が乗車していることが分かります。

警視庁など各都道府県警察HPにいくと、「重点取り締まり場所」が公表されており、そこでは実際に取り締まりが行われているので、あらかじめ予定されている取り締まりポイントを知ることもできます。

興味のある方は、こちらをご覧ください。



3.覆面パトカーの見分け方


覆面パトカーはその名の通り、一般車両の覆面をかぶったパトカーなので、一般車両との見分けが非常に困難です。ひと昔前だと、装備品などの関係上、不自然にアンテナが出ているなどのポイントもありましたが、現在はほとんど区別が出来ない程まで仕上がっています。

結論から言えば、

「無彩色の国産セダン車は、覆面だと想定する」

というのが、最も合理的な覆面パトカー回避方法です。

それでは以下に【内装】・【外装】・【車種】の3つの部類に分けて、一般車両との違いを紹介していきます。(前提として、夜間ではほぼ確認が不可能なものばかりであることは先に断っておきます)


【内装】

① バックバックミラーが2つあること・・・前席に2名警察隊員が乗っている状態が基本形なので、助手席の隊員用のためにもバックミラーが2つ設置されています。

② リヤガラスがスモークであること・・・すべての覆面パトカーが当てはまるわけではありませんが、中の様子が見えないように、後部座席後ろのガラスがスモークになっている覆面パトカーがあります。

③ その他公務用の機材があること・・・車内1列目に、サイレンアップ用のボタンやマイク、赤色灯などがおいてあれば、間違いなく覆面パトカーだと言えます。


【外装】

① カラーが無彩色・・・覆面パトカーのボディカラーの多くは、黒や白・シルバーなどの落ち着いた印象を持つ、無彩色が採用されています。(ただし、埼玉県警察高速隊のWRX(ブルー)は例外)

② 装着ナンバーの地域が走行区域内・・・警察にはそれぞれ管轄する地域が割り振られていて、管轄外の地域まで出向くことはあまりありません。逆に、装着ナンバーの地域が走行区域内でなければ、その車が覆面パトカーである可能性は極めて低いと言えます。

③ 最も低グレードのクラウン・・・交通取締用覆面パトカーは、その多くが国からの国費で購入されているため、グレードが最も低い車種となっています。そのため、「ハイブリッド車」は採用されなかったり、また「Royalsaloon」等のグレード表記も撤去された車両が多くありました。しかし現在は一般車両に寄せるためか、都道府県購入の覆面パトカーには、高グレードの車種が採用されるパターンも見られてきました。

④ 反転台およびグリル内赤色灯・・・普段赤色灯を隠して走行しているとはいえ、緊急時には赤色灯を回して走行します。そのため車高の高い車からは、車両上部の反転式赤色灯用の反転台が見えることがあります。また、車両を前から見た際に、グリル(前照灯の間のスペース)の奥にうっすらと、点灯していない赤色灯用ランプが確認できることもあります。


【車種】

覆面パトカーの多くの割合を占める車種が、トヨタの「クラウン」です。これは以前から、警察庁の定める入札条件をクリアし続けたトヨタの「クラウン」が、長い間国費調達用の覆面パトカーに採用され続けてきたからという背景があります。

ですが、最近は覆面パトカーの車種も多様化してきましたので、豊富なラインナップを紹介していきます。

トヨタ「クラウン・220系」

2022年度より導入の最新型

トヨタ「クラウン・210系アスリート」

現在の覆面パトカーでは最も主流

トヨタ「カムリ」

都が都費で購入した、警視庁初のハイブリッド車

トヨタ「マークX」

日本最速覆面パトカー、価格800万円台

トヨタ「SAI」

台数はかなり少なめ

日産「フーガ」

警護用だが、かっこ良いため

日産「スカイライン」

日産「ティアナ」

主に機動捜査隊で活躍

スズキ「キザシ」

「キザシを見たら覆面だと思え」が合言葉

スバル「レガシィ B4」

スバル「WRX S4」

埼玉県警所属、覆面らしからぬ覆面パトカー

トヨタ「ランドクルーザー」

交通取り締まり用ではない

トヨタ「ハイエース」

安全教育兼交通広報車として導入、取り締まりもする



4.覆面パトカーに捕まったときは


交通取締用覆面パトカーに追いかけられたことを想定した際、「現行犯でなければ捕まえることは出来ない」という原則があります。これは、仮にナンバーなどを抑えて後日持ち主に違反手続きをしようとしても、その瞬間に運転していた人物を立証することが困難であるためです。よって追いかけられた時に、覆面パトカーを巻いてしまおうと試みる不届きな市民も見受けられるのが現状です。

そんな話はさておき、いざ覆面パトカーに捕まってしまったとき、どのような対応が考えられるのかを簡単に記します。大きく分けて2つの方法がとれます。

大雑把に言えば、不服申し立てをするかしないか、です。

比較的軽微な交通違反の場合、違反の内容に応じて反則金の納付を求められます。これは警察官から「交通反則告知書(通称青切符)」にサインするように求められます。これは、「交通反則通告制度」を適用するという意思を表すもので、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けない代わりに反則金を納付するといった制度です。

これにサインをすると、不服申し立てをしなかったと見なされます。

代表的な不服申し立ての例を2つ出します。

1つは証拠がある場合です。例えば、ドライブレコーダーなどで記録がされており、警察官の指摘に誤りがあった際などは、その証拠を本に不服申し立てをして、その場で違反の取り消し、または裁判での係争に持ち越されるパターンがあります。最近では、「歩行者等妨害」において違反を指摘された運転者が、ドライブレコーダーをもとに警察官に抗議を行い、警察署より謝罪を受けた例があります。

もう1つは速度違反についてです。覆面パトカーの速度取り締まりの測定方法として、「(高速道路上では)当該車両後方50mの車間を保持し、赤色灯をあげた状態で300メートル追尾し、測定する」といった決まりがあります。この測定方法に則っていない違反測定は、不当検挙となります。明らかに測定時間が短かったりした場合、もしくは赤色灯をあげなかった場合は指摘ができます。

また、計器の誤差という特性における問題も存在します。詳しくは国土交通省が発表している道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第148条(速度計等)に記載してありますが、以下の式によって、車検におけるスピードメーター誤差の許容範囲が求められます。(2007年以降)

10(V1-6)/11 ≦ V2 ≦ (100/94)V1
※(V1=メーター表示の速度
・V2=測定器による実測速度)

これを制限速度120km/hの高速道路に当てはめると、V1の誤差上限は127.7㎞/hになります。実際に7㎞/hの速度超過で捕まることは滅多にありませんが、もし不遇にも違反を取られてしまった際は、この式を思い出してみてください。



5.おわりに


いかがでしたでしょうか。覆面パトカーと一言にいっても、交通取締用以外にも種類があったり、また警察車両だと気づかれないようなたくさんの小細工を、警察側も頑張ってしているんだなとつくづく思います。

近年はセダン型の車種が不人気となってきており、セダンの不動の王様だった「クラウン」でさえ、一度は販売終了との声明が出されたほどでした。一般道にセダンの車が走っていると違和感を覚えてしまう、といったレベルにまで来ている人もいるかもしれません。

そんな背景から今後より一層、現行の覆面パトカーでは苦戦を強いられる警察。そのうちSUVミニバンなどの車種を積極的に採用し始める未来も、そう遠くないのかもしれません。

覆面パトカー、誰かを捕まえる瞬間を見る分にはかっこ良いので、前述の重点取り締まり地域などがもし近くにあれば、出歩いて観察してみてはいかがでしょうか。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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