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「Clubhouse」のFOMOマーケティングがとんでもなく緻密な計算があった話

この記事を読むような人はすでにClubhouseを利用し、その新しい体験にハマっているような情報感度の高い人達だと思います。

説明は不要だという方も多いと思いますが、一応解説をしておきます。

声のSNSとして、またたく間に時代を席巻しようとしているその中身は、個人的には「ネットワークラジオ」の印象を受けました。
Clubhouseでは、会話のための部屋(room)を誰でもモデレーターとして設けられ、参加者は気になるroomに参加してラジオ番組のように聞き流しながら楽しめる。その一方、議論の輪に参加して一緒に盛り上がることも可能。
そして特徴としてはアーカイブやスレッドが基本的にないということ。
その点では「SNOW」や「Snapchat」「Instagram」のストーリー機能が出てきた時の衝撃に似ています。

その刹那性(今しか聞けない)×偶発性(メンバーが固定化されていない)×(映像が不要なので準備がいらない)等の要因から、注目されているのではないかと推察できます。

当然、動画を大衆化させた「Youtube」や、写真による感情を基軸とした「Instagram」を考えると「声」という誰しもが持ち得ているリソースに注目した点は、非常に面白い。


ただ、今回記事を書こうとした背景として注目したのはそこではない。

素人ながらマーケティングに携わってきている僕は、その拡散の綿密に計算された市場の獲得方法にビビり倒している。
なぜそう思うのか。メモがてら皆様にも参考になればと思い、整理することにします。

キーワードは「FOMO × 3つの心理効果」です。

僕がすごいなと感じた部分はいくつかあるが1月30日に
事前の連絡なしに付与された追加招待枠

1人がたった2人しか招待できない(※ 実効再生産数が2の状態)で展開されたのが1月の中旬。
そこからたった2週間後に追加された謎の招待枠、更に不思議なのが人によってその付与数が違うこと。
ここに綿密に計算されたマーケティング戦略が垣間見える。

ここで、まずClubhouseの人が増える流れについて紹介しておきましょう

まずClubhouseは2つの登録方法があります。

1. 招待を受ける方法
これはすでに参画している人から、招待をしてもらう方法である。
至極簡単で紹介者が連絡先を連携し、電話番号からSMSで招待を送る方法である。

2. 神待ち
条件としては招待を受ける側が、アプリに登録してユーザー名(電話番号まで)登録している状態であること
その連絡先を共有している友人がClubhouseのメンバーになると、登録待ちの人が表示され、招待コードの消費なしに招待することができる。
※ こちらの方法はあまり知られてませんが、実際にできます。

さて、こういった背景がある中でマーケティング視点でいくとどこがすごいのか
前置きが長くなりましたが、書いていきます。

こういうサービスではこのアーリーアダプター(EA)からアーリーマジョリティ(EM)の間にあるキャズムをいかにぶっ飛ばせるかどうかが重要になってきます。(ここでもたつくとマーケティングコストが爆増する)
※イノベーター理論

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しかし、ClubhouseはiOS(iPhone)のみの対応の中、悠々とこのキャズムを越えようとしている。
これはとんでもないことです。
しかも現在のトレンドではない昔ながらのトップダウン方式で行っている。
※ トップダウンとは影響力のある人からの拡散
※ 若者が利用し始め、今やご年配の方まで使っているInstagramとは逆

なにせ、希少価値の高い見せ方と拡散方式がとんでもなくお上手。

ここで重要になる概念が「FOMO × 3つの心理効果」です。
FOMOとは「the Fear Of Missing Out」といい時代や流行に取り残される不安・恐怖のこと。
近年、現代人のSNS病としてよくあがっており、こちらは2011年にNew York Timesが取り上げて有名になった。

みんなが集まるイベントや飲み会、話題のお店など、自分が参加しないことに対して恐怖心を抱いたことはないだろうか。みんなが行くのに自分だけ行かない、そこで何か大きな出来事があったらどうしよう、話題に乗り遅れたらどうしよう。そう考えると不安が募り、いてもたってもいられなくなる。そのうち現実社会のイベントだけでなく、情報からも取り残されたくないという恐怖を感じる。そうして、SNSをこまめにチェックしないと不安に襲われてるという症状であり、SNS疲れの根幹にある概念として注目されている。

そして3つの心理効果とは
「バンドワゴン効果」は他者の消費が増えるほど需要が増加する現象
「スノッブ効果」はバンドワゴン効果とは反対に他者の消費が増えるほど需要が減少する現象
「ヴェブレン効果」は価格が高いなど見せびらかす効果(顕示性)が高まるほど、需要が増加する消費現象

これらの概念の歴史は古く経済学者、ライベンシュタインが1950年に発表
マーケティング概念として有名だが、それらは人の心理を上手く体系化させた概念である。

つまり、
1. 世界のVIPや情報感度の高い人(インフルエンサー等)が利用しているものを自分も使っているという優位性が「ヴェブレン効果」で顕示欲を刺激し、SNSでの拡散に拍車が掛かる
→ これおもしろいよ / 俺使ってるよ / 招待したげよっか?
2. 周りが使っていることで「FOMO」を煽り、「バンドワゴン効果」に拍車をかける
→ 招待してほしいです / 招待枠余っていませんか?
3. iOSのみの対応で市場の上限が決まっているので限定性がある程度担保され「スノッブ効果」が起きにくい

そしてここで活きてくるのが最初に記載した「刹那性」と「偶発性」
Instagramなどはフィードに投稿されたものは残り、IGTVはアーカイブされるものもある。しかし、Clubhouseはなにも残らない。
そのメンバーで、その話題が、今この瞬間。なのだ。
だからこそ、招待枠とは別にコンテンツの希少性が担保されているがゆえに、今すぐに参加したいと思う。

また、連絡先を強制で登録させるというフローが個人情報流出(SMSなので招待側の情報が広がる)の観点から知らない相手への拡散を妨げ、信頼関係がある程度ある関係性の中で拡散されることを想定している。

そしてとどめに1月30日に勢いそのままに招待枠の追加付与。
需要の爆発寸前に追加させることで、行き渡ってない枝葉の人間にまで招待できる状態にする。
この時点でeアダプターからeマジョリティのキャズムを一気に飛ばし一般化を狙ったものだろう。

さらにはおそらく、この時点で招待枠が余る人が出てくる。
そこからのAndroid展開が控えている。
この一連の流れを計算していたとしたら、これはなんとも素晴らしい。
人の心理を上手く活用し、SNS時代にあったマーケティング手法である。

そして最後にもう一つ。
連絡先の強制連携をさせているSNSは存在しない。
ここがどのような活用方法になるのかが個人的には注目しています。

近しい人をTOPページに表示させFollowさせようとしている導線も秀逸だ。
人とのつながりを完全に掌握できるこのサービスのこれからの展望が気になりますね。

思えばFacebookもmixiも招待制で爆発的にユーザーを獲得した背景がある。
Clubhouseを運営しているAlpha Exploration Co.のCEO/Co-Founder・Paul Davison氏の手腕はこのまま新しいSNSの誕生として残り続けるのか、トレンドだけじゃなくユーザーが根付いくのか。

そこに注目しながら、これからのマーケティング戦略を追いかけたいと思います。

久しぶりに興奮したので長文になってしまいました。笑
参考になれば幸いです。

#Clubhouse

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