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人類の歩行について合気道で考えてみた

武道では「歩く姿が武」なんつって言われてたりする。

とはいえ、そもそも歩くってなんなんやろ?という疑問もあったのでなんで人は歩くようになったのか?が気になって調べた。

武道の歩行と人類の歩行とどう繋がるのか考えをめぐらせてみよう。

歩く利点

『人体600万年史』では、なぜ猿だった人類の祖先が歩くようになったかについては、色んな偶然が重なったからだとしている。
ちょっとだけ歩きやすい骨格だったことと、気候変動で木のない所を移動する必要が出て来たことなんかに由来しているらしい。

とにかく移動する必要があったことが、人類を二足歩行にし、さらに歩行に最適化された体へと進化させたわけだ。
チンパンジーやゴリラは完全な二足歩行ではなく、手を使ったナックル歩行という歩き方をするんだけど、身体がブレてとにかくエネルギー効率が悪いという。

体重四五キロのオスのチンパンジーは三キロ歩いて約一四〇キロカロリーを消費するが、これは同じ距離を体重六五キロの人間が歩いたときの消費カロリーの約三倍にあたる。

(ダニエル・E・ リーバーマン 著『人体600万年史(上):科学が明かす進化・健康・疾病』より)

人類の歩行能力はチンパンジーの3倍の性能……。


実は人間の歩く能力は自然界では恐ろしい汎用性を誇っているのだ。
人類は歩ける「だけ」と思いがちだけど、実は歩けるってのは動物界における一大革命なのである。

歩ければ狩りに武器はいらない

面白いのは石器時代よりも前のせいぜい尖った棒くらいしかない時代でも人類は動物を狩っていたらしい。
ここでも歩くことに特化した事が功を奏している。

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(板垣恵介『グラップラー刃牙』より)
普通の人は虎を狩れない

だいたいのアフリカの動物は気温が高い日中は日陰で休んでいるが、人類は汗をかいて体温を下げることができるので日中にバリバリ活動できるのだ。
これでクソ熱いことを我慢することと引き換えに天敵となる肉食動物がいない時間帯に動き回れる。

そこでクソ熱い時間に大型の草食動物を追いかけて逃げられたら足跡などをたどってしつこく追跡する。
草食動物は確かに足は人間よりも速いけれど、汗をかけないので走ったら体温を下げる必要がある。ところが人類はそのスタミナと追跡能力を活かして休む暇を与えない。
動物がオーバーヒートして動けなくなるまで追い続けてそこを狩るのだ。
実に人間らしい回りくどいやり方である。

人類史から武を考える

現在、武道で言われている歩き方もある意味ではこうした古代からのやり方の延長線上にある。
頭をブレさせず、重心を安定させたまま移動すると疲労しない。
山を登ったり、雪の積もった道を歩くときの歩き方であり、重い武器を持って長時間移動する歩き方だ。

歩くことは人類の進化の根本だし、そしてその延長線上に武もある。
現代の剣道では遠い相手にも飛び込んでいくことが主流になってきているけれど、かつての剣道の名門・有信館道場の羽賀純一は「間合いが遠ければ歩いて入ればいい」といっていたらしい。

簡単な話ではあるけど、現代ではルールが違うとは言え歩いて間合いを詰める人は少ない。それは同時に、それだけ歩いて間合いを詰めること自体が難しいからだ。

格闘ゲームのプロ、ウメハラは前歩きを多用することで歩くだけでもウメハラ歩きなどと言われている。格闘ゲームは後ろに下がろうとしていないとガードができないのに無防備にスタスタと歩いて間合いを詰めるからだ。
そういうことは意外とできない。
このように歩くことは簡単なようでいて、奥が深い。どんなジャンルでも。

まとめ

人間、歩けるだけで動物すら狩れる。

武道武術の歩法も人類が進化させてきた歩きの延長線上にある。

歩くこと、歩けることが一番難しい。



おわり



マツリの合気道はワシが育てたって言いたくない?