見出し画像

退屈が怖い人たちへ

昨日読み終わった本

暇とは何か。人間はいつから退屈しているのだろうか。
答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。 著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見するだろう。
現代の消費社会において、気晴らしと退屈が抱える問題点を鋭く指摘したベストセラー。2011年朝日出版社刊『暇と退屈の倫理学』、2015年太田出版刊『暇と退屈の倫理学 増補新版』にあとがきを加え、待望の文庫化。

amazon紹介文より


なぜ人は退屈するのか。退屈にどう対処すべきなのか。
過去の偉大な哲学者たちが考えたことをただ紹介するのではなく、時に批判的に分析しながら、暇と退屈について延々と述べ続ける512ページ。とても良い暇つぶしになった。読めば、この言い方が全くネガティブではないということが分かる。


退屈。

時間の余裕があるのにやることがない。ワークライフバランスで仕事の時間をどんどん減らしている今の社会において、非常に深刻な問題になりつつあると私は考えている。

私が若いころは死ぬ直前まで働いていた。特にブラックな業界だったこともあるけれど、私に限らずみんな忙しく働いていた。暇とか退屈とかは欲しくても手に入らないものだった。今は残業規制でそんなに遅くまで働けないし、土日も休まなければならない。

若いころほかに何も考える時間もなくひたすら仕事だけをやっていた時は退屈する時間など全くなかった。今は仕事的に余裕ができて、暇も退屈も当時から比べたら贅沢なくらい私の周りにある。そして私は、それをありがたく享受している。

でも若い人たちを見ていると、暇な時間を与えられて明らかに戸惑っているように見える。自分の自由な時間をどうして良いか分からないのだろう。そんなことはない、楽しいこともやりたいこともある、と言うかもしれないけれど、本当にそれは楽しいことで、そして人生の貴重な時間を使って本当にやりたいことなのか、と正面から聞かれて、そうですと答えられる人が一体どれだけいるだろうか。

暇な時間。
贅沢なようだけれど、その時間に何をやればいいか分からない。
気が付けばYouYubeやSNSを見て時間をつぶし、無駄な時間を使ってしまったと後悔する。ほかの同僚たちが資格の勉強をしているとか聞くと気持ちは焦るけれど、なんとなく暇な時間で勉強する気にもならない。その暇な時間に何をやるのが正解なのか、わからない。

暇と退屈はセットでやって来る。
暇な時間。余裕ができるのは大歓迎だけれど、そこに退屈がつけ込んでくる。退屈から逃げたい気持ちにSNSや消費社会がつけ込んでくる。暇な時間に何をやるかまで誰かに提案してもらわないと退屈してしまうのが消費社会の私たちだ。

今の私は別に退屈するのも悪くないと思えるけれど、若い頃だったらとても退屈に耐えられなかっただろう。そして多くの人が退屈することを心の底から恐れているように私には見える。

なぜそんなに退屈を恐れるのか、退屈の正体が分からないからというのも大きな理由だと思う。著者は退屈とはいったい何なのか、そのことを徹底的に倫理学、哲学の立場でひも解いていく。

なぜ私たちが退屈を感じ、退屈を恐れ、退屈から逃れようとするのか。そもそも退屈とは何か。

結論だけ書いてしまうとネタバレになるし、そもそも結論だけ知っても意味がなく、そこに至るための哲学者たちの思想をたどることに意味があるのでここでこれ以上書くつもりはない。私の読解力でそんな簡単にまとめられる内容でもないし、そうやって誰かのまとめを読んで知った気になるというのも消費社会の良くない面だと思うので興味のある方は暇な時間を使って自分でぜひ読んでみてほしい。

退屈がどこからやってきて、それに私たちはどう対処すればいいのか。そのことが分かれば人生はとても生きやすくなると思う。

それを考えるきっかけになる、とても良い読書体験だった。



この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?