20240602 教員不足を解決する最善の方法

 近年、いろいろな理由で教員志望者が減少している問題は何度も取り上げられ、その対策もいろいろと動き出しているようです。
 昨日、その対策の一つとして中教審が給料の10%上乗せを提案したようで、試算では年間2100億かかるようです。

 しかし、おそらくですが10%程度の賃上げでは志望者回復にはつながらないような気がします。完全な勘による私見ですが、教員免許を取得しても教員にならずに企業就職を考える人というのは、給料が安いからではなく「やっていける自信がないから」であり、それは長時間労働を乗り切る気力体力があるかや、なんでもこなすマルチな働き方をできるかということに対する不安があることが多く「給料が高いから不安な仕事でも応募する」という感じにならないのではと思います。
 そのため、給料を上げるというのは遅効的な効果は確実にあると思いますが、即効的な効果は出にくいと思います。
 それより確実に即効的な効果がでるのは「学部時代の奨学金を教員に就職したら免除する制度の復活」だと思います。
 これ、大学院に関してはこの4月に決定されたので、現在の「教員採用試験合格後に大学院に進学した者は2年間合格を維持できる」制度と共に教職志望者の大学院進学率をあげるのにすごく役立つと思います。

 しかし、教員の多くは学部卒で就職する状況は今後変わらないと思われますし、もし教員は院卒を標準とするなどとなったら余計になり手不足は深刻になると思います。
 そのためやはり教員のなり手を即効的に増やすためには「学部段階の奨学金免除」しかないと思います。
 昔は、学部で4万、修士で8万、博士で12万程度が月額で支払われ、学部200万、修士200万、博士400万で約800万の奨学金を「教員になって15年働いたらチャラにできる」というのが日本育英会のシステムだったと記憶しています。
 学部だけもらった場合は200万程度なので、それだと一般企業に就職するのを選ぶ人が多かった気がしますが、大学院まで進学すると額が大きいので、当時の大学院生は「免除職につく」ことをすごく意識しており、それが教員就職につながっていたと思います。
 
【書誌情報】
久米忠史 2020 「奨学金の返済がきつい」と感じる社会人が知っておくべき5つのこと。困った時に使える制度とは. マネコミ!.

 現在の奨学金は個々人で月額を調整できるので借り入れの総額は個人個人で変わりますが、上の久米氏の記事を参考にすると平均で325万程度になるようです。

 これくらいのまとまった金額が「総額」として大学4年生に示されて、「それを教員として15年間働けばちゃらになる」という条件で提示されると、「教員になろう」と思う率はかなり高まるのではと思います。

 しかも、学部時代の奨学金をチャラにする制度の何が良いって「教員になる気がなかった学生を教員にすることができる」力も高いのですよね。教育学部以外の学部の学生で奨学金を借りている人が、「奨学金がチャラになるなら一応教員免許取っておこうかな」くらいの気分で開放制の教職課程を履修し、教育実習に行って開眼したり、「せっかく免許取ったのに使わないのはもったいない…というか免許を取るまで行けたのは自分が教員に向いているからでは?」みたいな認知的不協和が働いて教員を志望するようになる可能性は結構高いと思います。
 おそらくですが大学院の奨学金の免除制度が復活したので、学部の免除制度も近々復活して、その制度が適用される年からかなり状況はよくなるのではと期待しております。
 ということで、教員志望者の数を増やすためには「古き良き日本育英会の時代の奨学金免除制度を復活させる」のが最善最適であると再びまとめて本稿を終えたいと思います。

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