茉莉花(まつりか)

「書くこと」を仕事にしています。上海→横浜中華街→鎌倉在住。著書『碧い海の向こうへー異…

茉莉花(まつりか)

「書くこと」を仕事にしています。上海→横浜中華街→鎌倉在住。著書『碧い海の向こうへー異郷の福建人経営者12人』 (星雲社) ☆HP:LOVE CHU♡KAマガジン(ラブチュー)https://lovechu.jimdofree.com/

マガジン

  • 上海物語ー短編集  茉莉花

    中国・上海を舞台に日常の一コマを題材としたエッセイ、ショートストーリー。筆者が上海生活中に撮った写真、MameChangイラスト作品と共に。

  • おいしい。物語 ー短編集  茉莉花

    料理、食べ物を題材としたエッセイ、ショートストーリーを集めました。筆者撮影の料理写真、レシピ、MameChangイラスト作品と共にお楽しみください。

  • 茉莉花の童話&絵本棚

    こどもの頃の思い出、日々の暮らしで見たこと感じたことをモチーフに、童話を書いています。

  • ヨコハマ・鎌倉物語ー短編集 茉莉花

    茉莉花が暮らす鎌倉&横浜を舞台とした短編小説、エッセイ集。筆者が撮影した街の風景写真、MameChangイラスト作品と共にお楽しみください。

記事一覧

【料理エッセイ】ウーさんの冬瓜スープ

ウーさんの冬瓜スープ 寒くなるとウーさんがいつも作ってくれた冬瓜スープが食べたくなる。四角く大き目に切った冬瓜、スペアリブがごろごろと入った中国の家庭料理。冬…

【童話】あべこべ授業参観

☆小学校3年生くらいまでを読者対象に想定した童話です。私自身が子供の頃に感じたことをモチーフにして書いてみました。(イラストは娘が小学生のときに描いたお気に入り…

【童話】かいものかご(買い物かご)

☆2018年の夏、鎌倉の坂の下の海岸にシロナガスクジラの赤ちゃんの死骸がうちあげられました。この騒動をモチーフに、自然や環境問題について幼いこどもが楽しく関心を持て…

【短編小説】 山の上の美容院

☆鎌倉の丘の上の家を舞台に、認知症の母と娘のある日の出来事を描いた短編小説。6000文字。この小説の中で主人公・陶子が読んだ童話は、別途noteに掲載した童話「かいもの…

【エッセイ】鳥かごと赤い薔薇

☆横浜・元町&鎌倉を舞台に、鳥かごをめぐるある夏の出来事。スズメのヒナと小学生の女の子の心の成長、出会いと別れの物語。3600文字。※スズメの写真は実際に私が記録用…

【エッセイ】魔都上海のパリ・屋根裏カフェで見る儚い夢

魔都のパリ・屋根裏カフェで見る儚い夢  -ZEN Lifestore/ 鉦家居芸廊(徐家匯東平路)  地下鉄1号線・衡山路駅で下車して地上へ上がり、街路樹のプラタナスが緑々と…

【料理エッセイ】一皿の中国料理「龍井蝦仁(エビのロンジン茶炒め)」 杭州・緑茶料理

※「和華」第10号 特集「茶」(星雲社、694円+税)に寄稿したエッセイです。料理の写真は川海老の代わりに大正エビを使って私が作った物です。 一皿の中国料理、ひとかけ…

【エッセイ】上海・ピースホテルの夜

☆3年間暮らした上海から日本へ帰国する日がいよいよ近づいてきた。外灘の瀟洒なクラッシックホテル「和平飯店(ピースホテル)」内の老舗ジャズバーを舞台に、ある晩の忘れ…

【料理エッセイ】茶碗の中の宝探し

茶碗の中の宝探し  はじめて料理本を購入し、一人で台所に立つようになったのは高校一年生の頃のことだった。当時、両親は飲食事業を営んでいた。仕事に育児に家事に奔走…

【料理エッセイ】ウーさんの冬瓜スープ

ウーさんの冬瓜スープ 寒くなるとウーさんがいつも作ってくれた冬瓜スープが食べたくなる。四角く大き目に切った冬瓜、スペアリブがごろごろと入った中国の家庭料理。冬瓜が手に入らない時は大根が入っている。娘と私が大好きなスープだ。 ウーさんは夫の仕事で上海に暮らした三年間、家事や娘の世話の手伝いをしてくれた通いの家政婦さんだ。素朴でほがらかで子供好きなウーさんは5歳の娘とすぐにうちとけ、私達の慣れない中国生活の強力な助っ人となり、やがて、信頼できる友人となった。料理上手の彼女は

【童話】あべこべ授業参観

☆小学校3年生くらいまでを読者対象に想定した童話です。私自身が子供の頃に感じたことをモチーフにして書いてみました。(イラストは娘が小学生のときに描いたお気に入りの水彩画をあわせてみました。) あべこべ授業参観  二時間目、国語の授業の前の休み時間になると、お父さん、お母さんたちが3年3組の教室に集まってきた。チャイムが鳴って席についてからも、こどもたちは後ろが気になって、ざわついている。今日はかっちゃんが通っているうずまき小学校の授業参観だ。かっちゃんもお母さんとお父さ

【童話】かいものかご(買い物かご)

☆2018年の夏、鎌倉の坂の下の海岸にシロナガスクジラの赤ちゃんの死骸がうちあげられました。この騒動をモチーフに、自然や環境問題について幼いこどもが楽しく関心を持てるように、私自身の子供の頃の懐かしいエピソードを交えて書きました。掲載したクジラの写真は、実際に浜辺で撮影した物です。 対象年齢は幼稚園年中〜小学校一年生。オリジナル版は小学校一年生の児童が自分で読む想定で書きましたが、ここでは大人が読みやすいように、学習漢字以外を使用しています。 ※短編小説「山の上の美容院」

【短編小説】 山の上の美容院

☆鎌倉の丘の上の家を舞台に、認知症の母と娘のある日の出来事を描いた短編小説。6000文字。この小説の中で主人公・陶子が読んだ童話は、別途noteに掲載した童話「かいものかご」です。 山の上の美容院          プロジェクト決行日の夜、母は兄夫婦に連れられて我が家にやって来た。実行メンバーは、兄の拓海、兄嫁の真理子、夫の優也と私の四人。一か月前から話し合って計画をたてた。二泊三日間分の母の荷物が入ったボストンバッグを兄から受け取り、任務は私達夫婦に引き継がれた。 

【エッセイ】鳥かごと赤い薔薇

☆横浜・元町&鎌倉を舞台に、鳥かごをめぐるある夏の出来事。スズメのヒナと小学生の女の子の心の成長、出会いと別れの物語。3600文字。※スズメの写真は実際に私が記録用に撮ったものです。 鳥かごと赤い薔薇 【鳥かご、差し上げます!】 『スズメの雛を保護した3日間だけ使用し、保管していた大変きれいな鳥かごです。近くまで取りに来てくれる方、ご連絡ください。』  年の暮れ、毎年恒例のやっつけ仕事の大掃除に取りかかった。新居に引っ越してから1年が経ったというのに、未だに処分できてい

【エッセイ】魔都上海のパリ・屋根裏カフェで見る儚い夢

魔都のパリ・屋根裏カフェで見る儚い夢  -ZEN Lifestore/ 鉦家居芸廊(徐家匯東平路)  地下鉄1号線・衡山路駅で下車して地上へ上がり、街路樹のプラタナスが緑々と続く道を歩く。国際礼拝堂を通り過ぎ、烏魯木斉路を越えてピンク色の洋館 「Sasha」の前まで来たら、そこは東平路ーー。この通りを含む旧フランス租界エリアには歴史を感じさせるふるい西洋風建築物と共に、洗練されたカフェやレストラン、バー、雑貨店などが点在し、異国情緒を醸し出している。  上海のプチ・フラ

【料理エッセイ】一皿の中国料理「龍井蝦仁(エビのロンジン茶炒め)」 杭州・緑茶料理

※「和華」第10号 特集「茶」(星雲社、694円+税)に寄稿したエッセイです。料理の写真は川海老の代わりに大正エビを使って私が作った物です。 一皿の中国料理、ひとかけらの思い出 「龍井蝦仁」(エビの龍井茶炒め)〜杭州西湖と緑茶料理〜  浙江省の省都であり、かのマルコ・ポーロが東方見聞録の中で「世界で最も美しく華やかな町」と絶賛したという杭州市。中国十大風景のひとつに数えられる西湖を中心に据え、風光明媚な町として知られている。上海・虹橋駅から高速鉄道に乗って約1時間。アクセ

【エッセイ】上海・ピースホテルの夜

☆3年間暮らした上海から日本へ帰国する日がいよいよ近づいてきた。外灘の瀟洒なクラッシックホテル「和平飯店(ピースホテル)」内の老舗ジャズバーを舞台に、ある晩の忘れられない出来事を綴ったエッセイ。3300文字。 上海・ピースホテルの夜  「タクシーが下で待っているよ、さあ、急いで」  階下のガードマンからの知らせを受け、私は娘に靴を履くよう促してから家中の施錠を小走りで確認して回る。上海の住居は広く、玄関のインターホンまでもちょっとした距離だ。慌ててかけつけて受話器を取

【料理エッセイ】茶碗の中の宝探し

茶碗の中の宝探し  はじめて料理本を購入し、一人で台所に立つようになったのは高校一年生の頃のことだった。当時、両親は飲食事業を営んでいた。仕事に育児に家事に奔走していた母は、自分も働く母となった今思えば、本当によくがんばっていた。  両親は夕飯時にはいつも不在で、兄と妹と私の三人で食事をする。近くのスーパーで買ってきた惣菜を皿に盛って並べただけという日も珍しくない。テーブルの上に料理ではなく、数枚のお札が置かれているだけの日もあった。そんな日は近所のファミレスや定食屋さん