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努力と計画のハザマ (2020.09.23メールマガジン『ほぼ週刊さろま』寄稿)

それがたとえ重要な仕事であったとしても、無計画な人は意外と多い。そんな人に限って「努力します」「頑張ります」と言う。しかし彼らの多くは努力の仕方も頑張り方も知らない。「努力します」「頑張ります」とはその場をやり過ごす方便でしかなく、もし仕事のパートナーがこんな言葉遣いをする人なら要注意だ。その言葉を聞いた瞬間に「いつまでに何をどのくらい」するのかと具体性を問う質問を立てるべきだ。「なるべく早く」などの具体性の無い言葉にも同様の質問が有効だ。

努力の仕方、頑張り方のひとつとして、WBS(Work Breakdown Structure)という言葉を知っておくと生活の上でも役に立つ。直訳すると「作業分解構造」、つまり目標を完遂するために必要な作業を洗い出し、分担し、時間を割り振る。これを行うことで全体の作業量を見渡すことが出来る。

それが出来たら次に、同時に進められる作業はどれか、この作業に着手するためにはどの作業が終了していなければいけないか、というマップを書き出す。これをPERT(Program Evaluation and Review Technique)図と言う。ここからクリティカルパス(予定通りに終わらなければ全体に影響が及んでしまう作業経路)を見つける事が出来る。
WBSとクリティカルパスについてはネットで検索するとたくさんの情報があるので、ここでは書かない。

上の2つを行うことで初めて作業の見積りを立てることが出来、それによって「私にお任せ下さい」と言えるのかどうかが決まる。

「努力します」「頑張ります」と言う言葉を聞いたら、「じゃ、明日までに全体の作業量と最大でどのくらい時間がかかるかを見積もって、それから返事をちょうだい」と返すことで、管理者としての責任を全うする事が出来る。

以前、信頼できるパートナーだと思っていた女性が「頑張ります」「努力します」「なるべく早く」を繰り返すタイプで、そのくせ実務を学ぶ事もなく、人より上の立場を得ることばかりに執心するため仕事にならず、立ち上がったばかりの会社だったが私はすぐにそこを離れた。その後、彼女が「頑張った」お陰で会社はすぐに消滅した。世の中は些事の集積だ。経営者は数字に強くあるべき、との言葉は、Factfulness、現実は具体的にどうなのかを問い続ける事が肝心である事を示している。

*今週の参考図書
・『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』中島 聡 2016年/文響社
・『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング 2019年/日経BP

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