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#26 人生のタイパ

韓国が「無限競争社会」なのだそうだ。「厳しい競争社会で安定した生活を送るためには大手企業に就職しなければいけない。そのためには名門大学に進学する必要がある――こうした社会通念が強くなり、学校ではなく『私設の学習塾』が教育の中心になり、いわゆる名門塾が台頭した。いまでは、名門塾に入るための試験勉強を指導する『セキ塾』まで登場している」【文藝春秋digital 2020年1月27日】
 
かつての日本だってそうだったのだが、対岸の火事はよく見えるものである。現在の日本は違うのか?と問われれば、やはり火事は此岸でも起きていたのだった。
 
日本はどうやら「タイパ社会」らしい。先日のNHKのクローズアップ現代でやっていた。コストパフォーマンスがコスパならタイムパフォーマンスはタイパなのだそうだ。久しく島暮らしをするとそんな言葉すら知らない。単なる時間短縮ではなく時間の使い方の密度を問うらしい。最短の時間で最大の効果を得る。それが評価軸だ。食事は調理時間を短縮するが必要な栄養とおいしさを最大限確保する。読書は最短の時間で結論を取得する。明らかに振り子は片側に振れており、この後、振り子は反対側に振れるであろう事は容易に想像がつく。しかし渦の中にいる人はその事に気づかない。いや、気づかない振りをしないと立ち位置が脅かされる。韓国の無限競争社会もそのような状態なのだろう。競争心理に付け込んだ市場がさらにその状況を煽る商品を売り出して振り子の傾きはどんどん大きくなっていく。そしていつか静止して、次のフェーズへと振り始める。
 
島で静かにアカショウビンの声など聞きながら暮らしていると、そのような都会の群衆の姿がよく見えてしまう。「そんな場所から抜け出してしまえば良いのに」と島暮らしのオジさんは簡単に思ってしまう。群衆の中にも端然と筋道を弁えながら暮らしている人はきっといるのだろうが、そんな群衆の中で人生の時を費やしてしまうのは実にタイパが悪いと思ってしまうのだ。人生のタイパを考えろと。

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