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#44 島暮らしのこと

フリーランスでICT(情報通信技術)に関わる仕事をしている。愛知県で暮らしていた頃に成り行きでフリーランスとして仕事を受けることになり、それ以来ずっとフリーランスである。奄美へ越して来て一時的に企業の一員になった事もあるが、その時も並行して個人事業主としての仕事は続けていた。一時期はワーカホリックのように朝3時から夜中まで仕事をしていた事もある。
 
当然、顧客をつかむところからお金を頂くところまで全て自分でおこなう。ただしそこは島の良いところで、営業活動などまったくしていないのに人の繋がりでボチボチと仕事が入って来る。良く言えば恵まれていると言えなくもないが、悪く言えば、ぬくぬくとしたぬるま湯のような環境である。優秀な企業が島に入って来ればぬるま湯はあっという間に沸騰してぬるま湯に慣れた者は茹で上がらざるを得ない。
 
島内だけでなく鹿児島からも仕事の依頼があるが、これもまた人の縁である。十数年前に鹿児島で知り合った人がたまたま同業企業の社長で、それ以来仕事を振って頂いている。
そのほかに、以前はクラウドソーシングも利用していた。ネット経由で仕事の受発注がおこなわれるのだが、先方の素性の確認がしづらいのが難点である。最近は質の高いクライアントに巡り合うことが少なく、めっきり利用が減ってしまった。数年前には運良く起業したての良質なベンチャーと巡り合い、しばらくの間、1社だけで継続して月に相当の利益を上げた。しかしそんな蜜月もそう長くは続かなかったのだった。
 
当然ながら会社勤めのような安定した収入はない。常に来月の収入の心配が頭のどこかにある。しかしながら先日のように、突然北海道の母から来てくれと電話があれば、すぐに飛んで行くことが出来る。パソコンひとつ抱えて行けばそこで仕事が出来てしまうという利点もある。「パソコンひとつでどこででも仕事が出来るように」とは30代の頃から準備をして来た事で、20年を経てそれがうまく行ったという事だ。今の自分にはこのスタイルが合っている。
 
仕事以外でもNPOの活動や地域づくりにも関わっており、何だかんだと充実した日々を送っている。趣味の時間もあり、夜になれば妻と晩酌を交わす。先の見えない時代に入って久しいが、これからの生き方として、成り行きではあるが実は理想的な在り方を知らず知らずのうちに実現できていたのではないかと思っている。

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