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プラットフォーム

3種類の人間がいる 上にいる者 下にいる者 転落する者

中年ゴレン、目覚めるとそこはコンクリートの殺風景な部屋。
その部屋は地下(?)48階層。窓は無い。床の真ん中に四角い大きな穴。
床の穴の下には同じような部屋の階層がずっと下まで続いている。
穴を挟んだ向かいのベッドには老人トリマガシ。そして老人はこう言う、
「何を食うのか、それが問題だ」
「何を食うか?」
「“明らかだ”、上の者の残り」
しばらくすると天井の穴から巨大なテーブルが下降してくる。
そこには食い散らかされた、おびただしい残飯。そんな不条理劇。
【以下、引用による解説ネタバレ】

ゴレンと元管理局職員イモギリの会話
「200層には食べ物が足りない」
「皆が必要なだけ食べれば第200層まで残る」
「そう簡単じゃない」
「そうだけど外も同じ でもVSC(垂直自主管理センター)なら
 そのうち自然と連帯感が生まれる」
「VSC? 自然に生まれる連帯感? それがこの穴の目的か?」
「あなたもここで学んで」
ほどなくしてその連帯が決して叶うことのない幻想だと悟ったイモギリ
「私は25年間働いてきた そのうちの8年ここへ人を送り込んだ、
(こんなにも酷い所だとは)何も知らずに…… 信じてくれる?」
(癌に冒されたイモギリは懺悔の念から食肉として身を捧げる)

車椅子に乗った黒人の偉い方の言葉
「(VSCの)管理者は良心を持っていない」

ドン・キホーテからの引用
「罪多い偉人は罪人でしかなく 寛大ではない富者は貧者だ
 富は持っているより使うことで幸せになるが気まぐれではなく
 上手に使う必要がある」

共産主義者か、とゴレンの提案を小馬鹿にし利己的に生き延びようとして
逆に殺され被食者となったトリマガシの、亡霊となってからの言葉
「我々は共に発ち 共に旅をする 我々は運も財産も共有し分かち合う」

この流れを考察すると“明らかだ”
VSC垂直自主管理センターとは、
社会の一員として理想的な振る舞い(人の身になって思いやる心)を
一切指示なく自主的に学ばせる教育(実験?)施設であることが分かる。
最初から人数分の食事を個別に配布すれば不幸は起きないわけだが、
敢えて階層を設けて上層順に無尽蔵に食事させてゆく環境を与え、
不平等な貧富格差社会を作りあげる。そして
階層をひと月ごとにランダムに入れ替えそれぞれの境遇を理解させる。
その状況を踏まえて上層者が下層者の気持ちをその身になって思いやり
自主的節度をもって必要最低限の食事を心がければ、
全員が連帯的に生き長らえることが出来る、わけなのだが、
実際はほとんどが人の身になって行動できない利己主義者で、
ならば翌月には他人に食われてその身(血となり肉)になってしまえ、
と。それがVSC垂直自主管理センターの恐怖の教育法の主旨である。
“明らかだ”
ちなみにこの物語に答えや説明や結末は示されない。
“明らかだ”
この物語は自主的に想像を働かせない限り
不条理感を拭い去れないよう意図された寓話なのだから。
しかし面白い。“明らかだ”

2019年スペイン SFホラー映画
監督 : ガルデル・ガステル=ウルティア
原案 : ダビド・デソーラ
脚本 : ダビド・デソーラ / ペドロ・リベロ
出演 : イバン・マサゲ / ソリオン・エギレオル / アントニア・サン・フアン

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