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臆病者による初としまえんの記録

としまえんが閉園するらしい。
名前を耳にしたことのある遊園地が
目の前で閉まっていくのを
指を咥えてみてるわけにはいかない。
絶対に肌で感じておきたい。

遊園地は好きな方だと思う。
好きな方というか、
余程のことがない限り、
嫌いな人はいないと思うのだけれど。

振り返ってみると
結構遊園地に行っているような。
ナガシマスパーランド。
恵那峡ワンダーランド。
幼い頃からディズニーも
連れて行ってもらっていた。
シーもランドも。

こっちへきてからは、
シーもランドも行ったし、
富士急ハイランドも行った。
花屋敷も抑えさせてもらってるし、
よみうりランドも行っている。

しかし、絶叫も怖いのも苦手である。
むしろ嫌いだ。本当に嫌い。
まず、機械への不安が拭えない。
そんな動き方をして、
どうして壊れないと言えるのか。
トロッコを急降下させて、
レールから外れない保証がどこにある。
空中でブランコさせて、
綱が千切れない説明をしたか?

それから、
スリルというものを楽しめるほど、
肝が据わっていない。
いつも周りに流されて乗せられては、
安全バーが降りてきた時に後悔する。
ああまた動けなくなった。
なぜ乗り込んでしまったんだと。
そこからの映像はない。
ずっと目をつむり、
風を感じるだけなのだから。

お化け屋敷も無理だ。
心臓がダメだと言う。
隣の市のスーパーに特設された
ハリボテでダメだったんだ。
資金のある団体が力入れて作ったものが
どうして楽しめよう。
脅かすぞと言われて脅かされて、
ちゃんとびっくりして暗闇を抜けて。
トラウマを頂きにいくというのは
どういうエンタメの仕組みなんだ。

「じゃあ遊園地いくなよ」って?
全くその通りである。君は正しい。
何が是で何が否かわからない世の中で、
君だけは正しいことを言っている。
俺が保証人になってあげる。

ただ、本当に遊園地は好きなのだ。
大好きだ。あの楽しい雰囲気や、
人を楽しませようという気概。
楽しんでいる人々の高い声。
あれにつられて、
また遊園地に足を運ぶのである。

7:30起床。
柔軟。Youtube流しながらほぐす。

準備をする。
今日はもう半年ぶりの遠出。
クリームソーダをイメージした
コーディネートで可愛く歩いてやる。

歯磨き、シャワー、ヘアセット。
そして出発。諸々の事情が有り、
タクシーで出発。片道9000円。
貴族の遊び。

逆に言えば、タクシー代を払ってでも
一度は行きたかったところなのだ。
としまえん。初訪問である。

ついた。
すでに人が並んでいる。大盛況だ。
経営不振で幕をおろすと聞いていたので、
面食らってしまった。

練馬区民をはじめとした、
としまえんに楽しませてもらった人たちが、
ありがとうを告げに訪れているのだろうか。

ゲートを潜って、
としまえんに足を踏み入れた。
ああ遊園地に入った瞬間のこのワクワク感。
この先にあるおもちゃで
目一杯遊んでやるんだという
浮世離れした楽しい気持ちで満たされる。
ここが遊園地の好きなところと言っても
過言ではない。

嬉々とした匂いのする空気を
目一杯吸い込みながら
真っ直ぐ歩いていると大目玉が現れた。
カルーセルエルドラドだ。

こいつに乗るために来たと言っても
差し支えない。
マツコの知らない世界で予習はしてある。
機械遺産にも登録されている、
世界最古級の回転木馬だ。

長蛇の列にヌッと入り込み、
日が照る中でジリジリと待つ。
列は長いが一回で捌く人数が多いので
三回ぐらいで自分の番がきた。
とは言え、捌く人数が多い分、
消毒する箇所が多いということになる。
一つ一つ丁寧に消毒してくれている
スタッフさんには感謝である。

いざ乗ってみる。
豚、馬車など乗るところはいっぱいあるが、
やっぱり馬だろう。
馬を目掛けてエルドラドに乗り込む。
エルドラドには内側から
3つの層に分かれていて、
内側にいくほど速さが上がる。
内側も楽しみたいが景色も見たいので、
武豊さながら、中層の馬にまたがった。

回転が始まる。

回転木馬というのは不思議な
アトラクションだなと思っていた。
すごく乱暴な言い方をすれば、
「何が楽しいのだろう」と思っていたが、
全くもって愚かだった。

外から見る速さと中から見る速さは
まるでちがう。想像以上に速く回転する。
それから、内側が本当に綺麗なのだ。
一つ一つ手彫りの彫刻が、
電飾を纏ってクルクルと回る。

なるほど。
回転木馬カルーセルエルドラドとは、
乗り込める美術館なのだな。
全て手彫りなので、馬の顔が同じものはない。
俺を乗せてくれた子と一枚撮り、
エルドラドを後にした。

次に乗ったのはトロイカという
アトラクションである。

並んでいなかったので直ぐ乗れた。
一言で言うと、気の狂ったアトラクションだ。
機械が寄生獣のような嫌な動きを
するやつと思ってくれればいい。
安全バー後悔パターンである。
その旋回に「嫌です」と永遠に叫んだ。
空が近くなったと思ったら遠くなって
最後は暴走コーヒーカップのように
地面を滑るように動かされた。
怖い。怖い。もう怖い。

次に乗ったのはFLUME RIDEである。
川下りのようなアトラクションで、
丸太を切り抜いたような乗り物で下る。
めちゃめちゃ待った。地獄みたいに待った。
おかげですごく涼しい。本当に涼しい。
水というのは見るだけで癒される。
最高だ。怖くないし。大好き。
大人の男性の方も一人で乗っていた。
一人でコースを遊泳し、
一人で急降下していた。
一つも声をあげていなかったけど、
一人で乗るくらいだ、楽しかったのだろう。

その次に乗ったのはミステリーゾーン。

ライド式のお化け屋敷みたいなやつだ。
すごく嫌だった。もうお化けの屋敷て。
ミステリーなゾーンて。
怖がらせる系は作り物だと
わかっていても無理だ。
暗いし。見えないよ。もう。

その次に乗ったのはスイングアラウンド。

こいつは並ぶ時がアトラクション。
ゴンドラが吹っ飛んでくるような気がして
まともに目を向けられなかった。
円心力に任せて、
室伏のハンマーのように解放されたら、
声を上げるまもなく即死だろう。
しかもこのアトラクション、屋上にある。
つまり乗った時に
建物の外に放り出されるような
視点になるので、もうこわい。
乗ると横の動きがもうこわい。
こわい。

もう膝がすくんでいるところで、
次に乗ったのがマジック。

古い遊園地なのでイラストが剥げている。
ある種のボロさに機械への不安が
こみ上げてきたが、
もう安全バーは降りている。
ああ、またやってしまった。

しかしこいつは優秀な乗り物だった。
人生で初めて初体験のコースターで
楽しむことができたのだ。

「回転、昇降、スピード、あらゆる動きを組み合わせた回転体感マシーン」

らしい。天才。
回転体感マシーンというのは
ちょっと目的がわからないが、
楽しかったので問題ない。
最初はもう無理かと思ったが、
乗ってみるとスピードが
速くなったり遅くなったりするので、
だんだん慣れてくるのだ。
行けるかもと思い体に力を入れ、
万全の体勢を期して片手を離してみると、
思いの外いけた。楽しい。
忘れてた。ああ楽しい。
これがコースターを楽しめる体験だ。
誰かの親御さんがむけてるカメラに
ピースまで出来た。
ああ楽しい。遊園地史上最高の乗り物だ。

するともう閉園も近い。
並んでいないアトラクションを狙って、
最後に思い出を詰めにいく。

そこで乗ったのはアンチックカーだ。

古き良き外観の車に乗ってドライブするという
アトラクション。
子供たちも嬉しそうに乗っていて、
それをみるのも楽しかった。
横にはクラクションがついていて、
押すと「パフ!」となる。笑点のアレだ。
楽しくて何回も押してしまう。
子供たちも楽しそうに押していた。

素敵だな。
これがとしまえんの真骨頂なのかも。

アルピーの平子が言っていた。
親に連れて行ってもらって、
娘を連れて行って、
その娘が子供を産んだら、
孫を連れていく予定だったんだと。

もうすでに決まっていた予定が、
今後一生なくなると思うと、
その場所に宿った思い出たちに、
もう会いにいけないと思うと、
この出来事は本当に寂しいことなのだと、

すれ違ったママは、
「ミラーハウスなんて並ばずに入れたんだよ」
と子どもに語りかける。
幼いのでそんな言葉は聞いちゃいないが、
大人になった時
この瞬間がこの子に残ってればなと思う。

すれ違った大人の男女は
「私これが大好きだった、懐かしい。」
と幼い自分にかえる。
今の彼・彼女と
当時の僕・私を繋いでいるのは
紛れもなくこの場所だ。

ここはあの頃の僕たちの楽しみを
一手に引き受け胸を張って
どんな機械もライトもプールも
働き光り流れ続けた場所なのか。
全てのアトラクションが勇ましく見えた。
大人から子供までを受け入れた懐の深さに
底がないことを実感した。

もちろん自分は初めて来たので
思い出はないのだけれど、
としまえんの閉園の間際に
この場所に思い出を残せたことが
本当に誇らしい。
いろいろビビってごめん。
アトラクションは怖いけど
としまえんは大好きだ。

夜ドラド、本当に綺麗だなあ。

ゲートを出て、としまえんに背を向ける。
本当に楽しい1日だった。
いや怖いけど。とんでもなく怖かったけど。
思い返せば全てが色彩豊かな一枚絵が
何枚も脳の皺に挟まっている。

そして帰りには、
併設されている温泉施設「庭の湯」へ。

温泉最高。温泉施設の匂いが好きだ。
回転寿司の入った瞬間の匂いもすきだが、
それに勝るとも劣らない。
こういうスーパー銭湯的なところの魅力は
数えたらキリがないが、
その一つにはジャグジー的お風呂がある。

肩が凝りすぎて
整体師からは”コリ”と呼ばれているので、
このジェットの力で押してくれるのは
本当に気持ちがいい。

のぼせてしまうので少し休む。
また当てるの繰り返し。最高だ。

温泉施設はうにょの集まり。
家の隣に出来て欲しい。

20200824

〈食事〉
朝:コーンフレーク、こんにゃくゼリー
昼:焼きそば、ポテト、唐揚げ
夜:かさごの煮付け定食、野菜天ぷら


〈エンタメ〉
としまえんの全て

頂いたサポートで、ちょっといい生活を送ります。 ハーゲンダッツ買ったりとか、鶏肉を国産にしたりとか。