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英国でEdTechの修士課程に通ってみた備忘録

すっかり期間が空いてしまいました。最後に投稿をしてから、修論の波に飲まれアップアップしていたり、卒業後の進路を考えたりしているうちに、すっかり時間が経ってしまいました。

その中でご縁があり、昨年9月よりベネッセホールディングスの方で、引き続きEdTech領域に身を置き、海外事業開発の仕事をしております。なぜベネッセを選んだのか?については、また改めて書ければと思います。

この記事と、以降何回かは、これまで書いてきたEdTech関連の話だけでなく、ロンドンでの留学生活についても書こうかと思います。

2019年7月から2020年9月まで、University College London(以下UCL)の教育大学院にて、Education and Technologyという日本ではあまり馴染みのないコース名の修士号に通っており(UCLの教育大学院は、QS world university rankingにて、教育領域で8年連続世界1位)、ここで、7年間スタディサプリでEdTechサービスを創ってきた経験を、学問の観点からアプローチしてみようと試みた1年間のチャレンジになります。

1. 課題の量が尋常じゃなく多い 

これは留学を経験した人のほぼ全員が異口同音におっしゃられることと思いますが、とにかくやることが多かったです。課題の量が尋常ではなく、一回の授業の予習で求められる量が「数百ページの論文を読んで考えをまとめてきなさい」が毎度なのは、慣れるまでなかなかにcrazyでした(苦笑)。

そして当然のことですが、予習をしてこないと授業での理解も追いつかないですし、グループワークで何も発言できず相槌をうつしかできなくなるので、やらない訳にもいかず、さらには授業後にはその議論を踏まえて毎回グループワークとエッセイが待っている、という短距離走を週単位で繰り返すイメージの構成です。

久方ぶりの学生生活ということで、色々じっくり本を読んだり、いろんな場所に出て行こう、インターンもしてみよう等と思っていたのですが、7月に授業が始まった中で11月末くらいまでは、そんな余裕は全くなかったです。。。

履修した授業一覧

・Design and Use of Technology for Education
・Researching Digital Learning
・Learning Design for Blended and Online Education
E・ducation and Technology: Key Issues and Debates
※これに加えて、修士論文、もしくはサービスのプロトタイプを作っての実証結果をまとめる、などのfinal assingment。

ある授業1コマでの事前Reading list

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2. 英語よりも内容それ自体に苦戦した

授業が始まって以来、英語力という文脈で何か致命的につらいと感じたことはそこまでありませんでした。7-8月にかけてプリセッショナルコース(留学生向けの準備コース)に参加していたこともあり、ある程度readyの状態でスタートできたのが幸いしたと思うのですが、授業が始まって困ったのは、いかんせん内容それ自体が難しい、ということでした。

もしもう一度留学前に戻れるとするならば、自分の専攻する研究分野や、アカデミックなリサーチ手法などについて、一定程度日本語でインプットをしておくと思います。留学される方に「留学が始まるまでに何をしておけばいいですか?」とご質問頂くことがありますが、英語力、体のメンテナンス、に加えて、上記のことをお勧めしています。

例えば英語で「ontology」という単語が出て来て、わからず英和辞典で調べたところ「オントロジー」とだけ書いてありました。・・・あー、オントロジーね!うん、で、そのオントロジーって、いったい何だっけ・・・?一時が万事その体たらくで、そもそも論文や課題の意味を理解するのに時間がかかり、なかなか前に進まない、という有様でした。

3. フルタイムで働いている人が結構いる

これはかなり新鮮な驚きでした。私の専攻しているコースは、授業時間が基本的に17-20時という、日本で大学生活を過ごした者の感覚からすると、かなり遅めな時間設定であることに、最初は「・・・???」となっていました。

ですが、働きながら通う学生の方が一定数存在する専攻分野だと、こうした時間の組み方になるケースがわりと起きるらしいです。もしかすると、学部ではなく大学院の場合は日本でもそうなっていて私が知らないだけなのかもしれませんが、こうした柔軟な時間の組み方は新鮮でした。

ちなみに、とある授業で3か月ほど一緒にグループワークをやっていた友達の一人はGoogle UKのHead of なんちゃらで、ロンドンオフィスとパリオフィスを行ったり来たりしながら授業にも参加するというかなり多忙な生活をしていました。

もちろん授業には参加していましたが、授業外の時間でのグループワークは、だいたい空港かホテルからインターネット通話で参加するか、もしくはGoogle UKのオフィスの会議室に案内してもらってディスカッションする、といった具合でなかなか面白かったです笑

Google UKオフィスでグループワークした時の様子

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4. 教育学はサイエンス、と言われた

これが私が留学していた中で特に印象的な出来事だったシーンのひとつです。本コースの授業が始まり暫くたった頃に先生と話していて、修士論文で何を書きたいかと聞かれた際、「まだ明確ではないが、世に数多あるEdTech系サービスの学習効果を測定できたら良さそう」的な話をしました。

その発言が迂闊で、その先生は目を爛々と輝かせ「学習効果を考えるには、どうすれば人は知識を習得するのか、脳の働きを知る必要がある。教育はサイエンスだからね」(ちゃんと理解できたかわかりませんが、おそらくこのような意味)と意気揚々と言われ、そのまま脳科学・神経科学の先生の研究室に連行されてしまい、二週間に一回、ランチの時間帯に自主ゼミを開いてもらえることになり、ド文系の人間が、ガチ理系の論文を追加で読みこむ羽目になってしまいました。(私が学部時代を過ごした一橋大学は、社会科学の総合大学で、いわゆる理系コースがありませんでした)

少し本題から逸れますが、私が通っていたUCLは、私個人の実感値ですが、かなりオープンな校風というイメージです。その一つの例として、ランチの時間帯に、教員陣がランチセッション、ランチミーティングという形で、空き教室や自分の研究室を使って、ランチを取りながら専攻の枠など気にせず自由に話す、というカルチャーがありました。

このカルチャーが基になり上記の流れになったのですが、もちろんかなり大変に有難いのですが、ただでさえ本コースの課題が多い中、この追加課題は正直つらかったです(苦笑)。しかし、ふと、約7年間も、スタディサプリを作る仕事をしてきておきながら、どうすれば身につくのか、身につかないのか、ということを、脳の仕組みから科学的に考えたことは、本当に恥ずかしながらほとんど無かったことで、本当に有難い機会だなと感じました。

日本では「教育学」というと一般的には「文系」という枠組みとして捉えられることが多いと思うのですが、UCLそして英国においてはそうした括りではなく、サイエンスとして教育を捉える、というアプローチは非常に新鮮で、学ぶ中で色々とハッとさせられることが多かったように思います。この辺りの具体事例については別途noteに書ければと思います。


今回はちょっと長くなってしまったが、このような形で、週一くらいで、留学生活の時のことをまとめたり、EdTech、教育領域における様々なトレンドやサービスについて、定期的に更新していければと思います。

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