中小企業にとってのGX

GX(グリーントランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがない!という人は、まだまだ大多数だと思います。
※この出だしは、8/19のオンラインサロンのもう一方の発表者の「DX」をオマージュした対比です。
https://note.com/marunote_note/n/n77e856f9c0d0?magazine_key=m4a06c531a944

DX(デジタルトランスフォーメーション)の方が、知名度がありますが、GXも経済産業省の政策にも何度も登場し、「GXリーグ」といった政策名としても登場しています。ちなみに、GXの定義は、「化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動」です。
さて、ちょうど一年前の2022/8/13に「カーボンニュートラル百花繚乱、CO2排出量目標ってどうやって計算しているの?」と題して、GXについて述べました。
https://note.com/matsumotoseiken/n/n4b8c7f9a7e7b

今回は、もう少し中小企業にフォーカスして述べたいと思います。

1.中小企業もGXが必要なのか?
2.サプライチェーン全体で求められるGX
3.具体的に何を求められるのか?

1.中小企業もGXが必要なのか?
総論で言えば、「必要」との回答になります。ただ、日々の経営で苦労されている中小企業に、短期的に利益に繋がらないGXを無理強いするのも、現実的ではありません。実際、2023年の中小企業アンケートでも、中小企業経営者の9割以上が「GX」を知らない、もしくは説明できないと回答し、6割近くが気候変動の情報収集をしておらず、約8割がGXに取り組めておらず、まだまだ中小企業にとってGXは身近でないと言えます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000117855.html

2050年カーボンニュートラル実現という目標がある限り、取り組まないのは経営リスクとなるのは確かです。その理由として、よく挙げられているのが下記です。
①    取引機会の減少
②    税制・法律によるコスト・制約の増加
③    エネルギーコスト増
④    金融機関・投資家・求職者からの評価下落
⑤    取り組んでいる他社に比べマイナスイメージ
とは言っても、大企業にとっては、リスクであっても、中小企業にとっては、例えば、④や⑤は、取り組んでいない企業が大半であるため、まだまだデメリットとして顕在化してこないと思います。また、③は化石燃料が大半を占める日本では、まだまだ再エネ使用に明らかな優位性が付けられないでいます。②はGXに取り組むと様々な優遇がある施策がどんどん打ち出されていますが、優遇を受けるための費用対効果を考えると積極的にはなれないとは思います。
ただ、①については、取引先企業の方針によって、急に対応が求められることがあり、対応できない場合は取引停止など、経営に直結するリスクとなり得ます。現在のGX、具体的にCO2排出量削減においては、自社だけでは完結できず、サプライチェーン全体の取り組みが求められるためです。

2.サプライチェーン全体で求められるGX
有名な事例で言うと、下記のAppleの「サプライヤーに対して2030年までにカーボンニュートラルを求める」宣言になります。
https://www.apple.com/newsroom/2022/10/apple-calls-on-global-supply-chain-to-decarbonize-by-2030/

日本においても、ホンダがサプライヤーに対しCO2の年4%削減、大和ハウス工業がサプライヤーに削減目標の設定を求めるなど、その動きが増しています。要求されるのは、直接取引するTier1だけではありません。Tier1が、CO2の目標設定や削減をするには、Tier2の協力が必要になります。その次はTier3と、下請けの企業に対しても要求が伝達することになります。
この要求が、取引継続の条件となった時に、準備ができていないと、取引を失うことになります。逆に考えると、GXの取り組みを先行していることで、取引機会が増えるとも言えます。

3.具体的に何を求められるのか?
最初に思いつくのは省エネですが、ただ省エネをしても、それをCO2に換算して、取引先に削減効果を伝えることができなければ、意味がありません。そうするとまずやることは、CO2排出量を把握することになります。これはそんなに難しく考えることはなくて、自社の電気、ガス、燃料などの月々の検針票から使用料を調べるだけです。例えば、電気であれば、「CO2排出量(kg・CO2)=電気使用量(kWh)×0.376・kg-CO2/kWh※)」(※東京電力@2022年)で求めることができます。
この後は、計画を立てるため、省エネ施策と再エネ転換方針を決めます。このあたりは、下記のような説明資料がたくさん出ているので、ここでは割愛します。
http://www.pref.kanagawa.jp/documents/8158/02_chushoukikou.pdf

これで取引先企業からの計画提示や削減要求については対応できると思います。もちろん、削減するための省エネや再エネ転換の実行も伴う必要があります。
ただ、取引先企業から求められるパターンはもう一つあって、取引先企業に販売提供している製品・サービスの排出量情報を求められることがあります。これは、取引先企業が、サプライチェーン全体の排出量を算出するため、自社以外の間接排出(SCOPE3、カテゴリー1購入した製品・サービス)を計算したいためです。これは取引先がどこまで精度の高い排出量を求めているかによります。取引した製品全ての排出量でよいなら、例えば自社の総排出量を、取引先に販売した製品の質量や売上で案分する方法があります。ただ、製品一つ一つの排出量を求められると、とても大変で製品ライフサイクルアセスメントを実施する必要が出てきます。このアセスメントを自社だけで実施するのは難しいので、やはり専門家の助言などが必要になってきます。

このように、GXの必要性は取引先次第といった側面があります。ですので、中小企業の経営者は、まずは取引先の動向・意向をしっかり確認することから始めるのが肝要かと思います。GXが必要であれば、各種国の支援が充実しているので、積極的に活用するのがよいと思います。
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/SME/pamphlet/pamphlet2022fy01.pdf


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