カーボンニュートラル百花繚乱、CO2排出量目標ってどうやって計算しているの?

 カーボンニュートラル、環境面でも経済面でも、そして生活面でも、聞かない日がない言葉ですが、その意味を正確に理解している人は多くないようです。8/11の下野新聞掲載の県ネットアンケートによると、県民の40.4%が言葉は知っているが意味はよく分からない、7.6%が言葉も意味も知らないと、約半数が意味を知らない状況です。
 ちょうど、本業の方でCO2排出量のベンチマークや目標策定を検討している中で、実際に手を動かしてCO2計算をしていることもあり、今回はテーマにしてみました。

【カーボンニュートラルとは】
 環境省によると、「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※ から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/
要は、省エネ(技術革新や規制など)と再生可能エネルギー(太陽光やバイオマスなど)を使用して極力、排出量を減らしつつ、植林など吸収する施策と合わせて、プラスマイナスゼロにするということです。

 日本政府は、CO2排出量を、2030年度までに2013年比46%減、2050年度には実質ゼロを目標に掲げています。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/1-2-2.html
基本的には海外と歩調を合わせていますが、2030年は現実を見て、少し目標を抑え、2050年のゼロで追いつくといったところです。この手のルールづくりは歴史的に欧州勢が上手く、日本はどうしても後追いになっています。カーボンニュートラルの仕組み自体も、太陽光パネル設置や植林ができる面積の余地が少ない日本が圧倒的に不利です。ただ、最近欧州は、様々政治情勢から、天然ガス輸入が難しくなったため、突然、原子力もグリーンエネルギーだ、言い出す始末で、まさにルールを自分たちに優位になるように変えます。EV規制も、完全な日本車潰しと言われていますが、日本は、それに振り回されないように、政府がもっと積極的にルールづくりの先頭を切ってほしいものです。

また、栃木県も今年3月ロードマップを策定し、2030年度までの中間目標として、CO2排出量を2013年度比で50%削減する政府よりも高い目標を設定しています。分野別では、家庭72%、交通46%、産業42%となっています。
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/620260
家庭で72%って、相当厳しい数値かと思います。産業と違って、技術革新の恩恵を受けにくいので、結局、太陽光パネル推進頼みになってしまう気もします。発電効率が低い点もありますが、寿命を迎えた太陽光パネルの処分方法など、まだまだ課題はあります。

【CO2削減目標の設定の仕方】
 CO2削減は、従来は法令や規制など、「やらざるえないもの」として、捉えられていますが、昨今は、ステークホルダーとの対話とともに、「自発的な実行」が求められています。言い換えると、従来は法令違反などの「リスク回避」、昨今は、企業の高付加価値化につなげる「成長戦略」となっています。CO2削減に向けたステップは大きく分けて、以下の三つです。
①    環境負荷の把握  要は数える事
②    削減目標の設定
③    削減対策の実施
大半の企業が、実は①のハードルが高くて、②も③に進めないといったところではないでしょうか。①②がなくても、削減策はできますが、やはり①②がないと、やる意義が薄れてしまうし、対外的なアピールもできず、企業の高付加価値化には繋がりません。
 CO2と言って、すぐ思いつくのは、電力発電です。石油はCO2をたくさん排出して、天然ガスは石油よりは少なく、原子力であればゼロとなります。きちんとCO2排出係数[kg-CO2/kWh]というものが設定してあります。
https://www.rite.or.jp/system/about-global-warming/mitigation/co2-emis-factor.html
国別にもCO2排出係数は算出されており、各国の発電戦略が如実に現れていて面白いです。原子力で有名なフランスの排出係数が極端に小さいことがわかります。
https://earthene.com/media/563
 実際CO2を排出するのは、発電だけではありません。実際は製品を供給するサプライチェーン全体で見る必要があります。サプライチェーン排出量には3つのScopeがあります。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html
Scope1 自社 燃料の燃焼
Scope2 自社 電気の使用
Scope3 上流と下流 原材料や配送、製品の使用、廃棄、通勤など15のカテゴリ
Scope1、2は従来からある考え方で、要は自社の省エネを頑張ってCO2削減することです。これに、近年Scope3の考え方が加わって、自社の上流、下流のCO2にも責任を持つことが求められています。製品の使用は、消費者がその製品を使って発生させるCO2なので、省エネ製品を作れば減らすことができます。通勤は、その製品を作っている従業員が出社するのにも電車やCO2を使ってCO2を発生させているので、それもカウントしています。こう見ると、確かに数えるだけでも、小さな企業には難しいと思えてしまいます。
 そして、これらをどうやってCO2に換算するかというと、先ほどの電力のCO2排出係数と同様の原単位と呼ばれる換算係数のデータベースがあります。各企業は、これらデータベースを使用してCO2を求めていきます。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_tool.html
過去からのCO2を求めたら、CO2削減目標を設定して、対策を考えていくことになります。実際、企業30%とか50%削減とか平気で掲げていますが、実際に省エネだけで、それを実現できるのかという、そんなことは無理で、いろいろなからくりがあります。そこは、8/20(土)オンラインサロンの方で語っていきたいと思います。キーワードは、再生可能エネルギー、製品の生産性向上、ですかね。

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