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人語の一口話(103) 三人寄ったら

 旧友3人が集まり、食事することになりました。
 友人のひとりが行きつけにしている焼肉屋さんを訪れました。

 食べるのか。それとも呑むのか。
 どちらに重きを置くのかによって注文する品が変わってきます。

 「あなたのお好きなように。」
 そんなスタンスでしたので、私は呑むを選択しました。

 このお店に誘導した者が、「俺、ごはん頼むけど、どうする?」と尋ねてきました。
 私ともう一人は、「ええわ。やめとく。」「俺も。」と返答しました。

 注文者の前に、ほかほかの白いごはんが置かれるや否や、彼は自分の口に熱々の白米を運び込みました。その後すぐに、程よく焼かれたお肉を食べて、再び白いごはんを口に運ぶのでした。

 その姿を見てか見ずかはわかりませんが、もう一人が「俺も頼も。」との発言に続けて、「ごはんください。」と注文していました。

 「あれ?ジンゴ。お前は白いごはんを食べないの?」

 口ほどに物を言う二人からの視線を浴びながら、それに気づかぬふりをして、その視線を振りほどくかのように声を上げました。

 「すいません。焼酎の水割りを一つ。」

 今夜は、このお店一軒でお開きになることを悟ったからかもしれません。
 最後の最後まで、箸と口が動いていたのは、私でした。

 『三者三様の食事風景』

 それぞれが、それぞれを思いやり、それぞれのスタンスを尊重しつつも、それぞれに楽しいひと時を過ごせる関係。

 そんな日常のひとコマに社会の一端を感じていただければ幸いです。


   

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