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「選ぶ」を支える エピソード1〜「歌を選ぶ」支援〜

 障がいの重い方々の自己選択・自己決定の重要性について頭では理解していても実際どのように支えるかについては多くの課題があります。学校生活の中では、子どもたちが自分で選ばなければならない場面が多くありますが、どの場面でも子どもたちの選択を丁寧に支援できているかと問われると自信を持って「はい」とは言えない現実があります。支援しなければならないことが山ほどあるのに手が付けられず日常が忙しく流れていく。そんな現状から抜け出すためには、難しさを楽しさに変えて、できることから始めるしかないと感じます。

 選択するためには選択肢を知っていることが大切ですが、障がいが重く制約の多い方々が、通常の環境の中で選択肢の情報を得ることは簡単ではありません。以前読んだ報告書には、調理のイベントのために1年かけて選択肢となる料理を食べながら説明しどの料理を作るか選ぶという取り組みが紹介されていました。本当にそのような実践ができたら良いのになあと思いつつ、そこまで丁寧にできないにしても、そのような丁寧さが必要であるという前提に立って、今回は学校でよく行われる朝の会の歌やグループの歌などテーマソングを決める場面でどのような工夫ができるか、事例を紹介しながら考えます。

 対象となっている方々については、支援者がまだその方の発信を明確に受け止める手段を持っていない状況にありました。子どもたちが「この曲が好き」という風に選択肢を持ち寄ることが難しかったので、まず、子どもたちに提示する選択肢となる曲を私が選びました。多すぎると選ぶことが大変になるので、精選が必要になります。通常は4曲ぐらいを選ぶことが多いのですが、これって大変難しい作業です。みんなの趣味も嗜好もバラバラなのでたった4曲と思ってしまいますが、そこは割り切って。大切にしているのは、年齢相応ということ。対象が高等部の生徒さんだったので「高校生 カラオケで歌いやすい曲」などで検索して選びます。こういった作業を通して、若者文化の知見をアップデートできるのも教育に携わるもの楽しみの一つ。若者文化という表現がすでに昭和ですが・・・。

話を戻すと、選択肢の中に「好きな曲がない」を入れることも重要です。選びたくないという選択も必ず入れるということを忘れずに。4曲しか提示できない理由も説明します。

最初に準備。keynoteで

曲名(ひらがななら読める人が多いはずなのでふりがなを忘れずに)

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曲のシンボル(選択画面で使います。keynoteの図形の中にもシンプルで使いやすいものが結構あります。春なので風にしました。)

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動画のリンク(ラジカセマークにyoutubeへ飛ぶリンクが貼ってあります。今は、みんなで曲を聴くときはほぼyoutubeですね。)

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曲の説明(概要や誕生秘話、アーティストについてなど)

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                         など

1曲ずつ作っていきます。背景は整理し字や図とハイコントラスにするために黒を使うことが多いです。

そして最後に選択画面

1枚1枚提示して反応を読み取り選ぶ人

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2択の人

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3択の人

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4択の人

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という風に全てのパターンを作っておきます。

これで準備終了。

実際に歌ぎめの活動をするときには、iPadをプロジェクターにつなぎ、準備したプレゼンに沿って進めていきます。プロジェクターとスクリーンは見やすい提示、注目する場所の明確化が容易で、一つのものをみんなで共有する環境整備が簡単にできます。流行りの対話型鑑賞でもプロジェクターとスクリーンは必須アイテムらしいです。

しかし、スクリーンが遠すぎる、大きすぎるなどの理由で見にくい方がいます。そういう方のためには、映像を分岐して見やすい位置に設置したサブモニターに接続します。方法は、後日別の記事で詳しく解説します。

活動は準備したプレゼンに沿って進めていくため、作った本人以外でも進めることができます。実際コロナ休校の際には、keynoteにナレーションをつけ動画書き出しDVDに焼き生徒さんに配りました。

選択場面では、iPad画面を一人一人の前で提示して行います。指差しの人、手差しの人、腕差しの人、視線で選ぶ人、頭を選択したい方へ向ける人、身体を向ける人、一つ一つ尋ねると「これ」という合図をくれる人など様々ですね。画面を触る人用に、写真のようなビニールのテーブルクロスを画面にのせると触ってもkeynoteのスライドが進まずに便利です。薄いクロスだと反応してしまうのである程度の厚さが必要です。これなら誰でも簡単に実践できます。勝手に簡易アクセスガイドと呼んでいます(笑)。

生徒さんからの反応がない時には、「選びたいものがない」と捉えました。

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iPadの画面は見えにくさのある方でも見やすいという報告があります(リンク)。注目しやすい最大の理由は、iPad自身が光源だからです。学校でプロジェクターを使うときスクリーンでなくプロジェクターのレンズの光を直接見に行く方がいます。これはプロジェクターの光源しか見えないぐらい見え方がシビアだからです。カード選択できなかった方が、iPad画面ならポインティングしてくれた事例を私も知っています。同じ原理で実物を提示して注目してもらいたい時に、下のようなトレース台の上に置くのも一つの手です。今、学校では来年度予算申請の時期なので是非一つどうぞ。

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https://www.amazon.co.jp/日本製-トライテックのトレース台-トレビュアー-7段階調光可-A4-520/dp/B01M5IG6DX/ref=asc_df_B01M5IG6DX/?tag=jpgo-22&linkCode=df0&hvadid=266458450213&hvpos=&hvnetw=g&hvrand=12758890365208863876&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=&hvdev=c&hvdvcmdl=&hvlocint=&hvlocphy=1009307&hvtargid=pla-470373905924&psc=1

見えにくさへの配慮については、別の機会に詳しくにまとめたいと思います。

一人の生徒さんは、back numberの「青い春」を選びました。

その曲のサビには

「踊らされてるのも 随分前から分かっていて
それでも それでも
また踊りながら 必死で生きているんだ 理想の未来なんて
用意されていない でもその中で願ってるのさ
ああ光を 光を」

という歌詞があります。テーマソングはマリーゴールドに決まったのですが、その後もその生徒さんと「青い春」を聴くたびにここに共感したのかなと勝手に妄想してジーンとしています。

歌が決まったら歌詞カード作り。

ここで役に立つのが、両面テープとポリラミ紙

歌詞を印刷して、細長く繋いで後ろに両面テープを貼っておきます。「『切る』を支える」の記事で紹介したクリップに紐をつけたものを両面テープの裏紙の端に挟み込み生徒さんに引っ張ってもらいながら貼っていきます。両面テープを少し剥がしてポリラミ紙つけておくのがポイント。こうすれば生徒さんの「貼る」を支えられます。両面テープの裏紙は滑りやすいので2重3重に折ってクリップに挟むと外れにくいです。

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ここで大事なポイント。ポリラミ紙は、ツルツルした面を使います。そうすることで、貼ってはがせるので修正が可能で便利です。学校では掲示する場面はたくさんありますが同じような方法で生徒さんたちが自分たちで掲示物を作成することができます。

見えにくさへの配慮、keynoteのプレゼン作り、サブモニターへの映像出力などたくさんの宿題が残ってしまいましたが、今回はここまでにします。

最後までありがとうございました。

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