【随想】 火星へ Let'sらGo!!

 地球から太陽系第四惑星である火星へ行くのに、往路だけで1年半の日数が掛かるという。現代の科学力を駆使すれば、機械的には行けない距離ではないとはいうが、小さな宇宙船に閉じ込められての長旅は、人間の精神に想像を絶する負荷を掛けるともいわれている。
 そうなると、人類は永遠に火星の大地に立てないのか?

 そこで、老生なりの“火星移住計画”を考えてみた。
 1年半の長旅に人間が耐えられないのなら、「人間ではない人間」にこの旅をさせたらどうか──と。
 つまり、人間を“受精卵”の状態で火星に送り出すのだ。受精卵は宇宙船の中で胎児へと成長し、誕生後は宇宙船内に設置されたAIによって教育を施される。
 尚、火星に送り出す受精卵は、誕生後に「男」と「女」になるものを選ぶ。火星到着後、彼らが火星の“アダムとイブ”に成長し、火星人類の祖となるのだ。

 さて、人間の受精卵を送り出す前に、火星の自然環境を生物の棲息可能なレベルにまで改造する土木機械を多数投入しなければならない。土木機械には自動で作業をする性能が求めらる。山を削り谷を埋める──それらの機械の働きによって、火星は生命誕生以前の地球と似た自然環境になるだろう。

 次に人間以外の生物を植物、動物の順に火星へと搬出する。もちろん、これらも種子や受精卵の状態で搬出する。その際、地球から消えた生物や絶滅危惧種のDNAを含んだ受精卵を送り出すのも、ひとつの案だ。
 火星の海にステラーカイギュウが浮かび、火星の空をリョコウバトが埋め尽くす。火星の小島にドードーが営巣し、火星の草原をマンモスがのし歩く。そんな世界を想像する。
 火星の“アダムとイブ”が到着する頃には、火星は“エデンの園”になっているという段取りだ。

 ──とはいうものの、もしこの火星移住計画(案)を口に出そうものなら、きっと“倫理的”な問題を引き起こすに相違ない。

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