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[2024/03/08] ロンボクだより(109):日本語の先生になりたい(岡本みどり)

~『よりどりインドネシア』第161号(2024年3月8日発行)所収~

みなさん、こんにちは。お元気ですか。日本はもうすぐ卒業シーズン、こちらはいよいよ断食月です。初日がバリ・ヒンドゥー教のニュピと重なるかもしれないので、あっちもソワソワ、こっちもソワソワで楽しい雰囲気ですよ。

さて、今回は、日本語が大好きで「日本語の先生になりたい」と願ってきた、ある人の話です。

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2月のある日、義兄が家に来ました。

「妻の義弟が日本語を勉強したいそうなんだ。教えてあげてくれる?」

私は別のことに時間を使いたかったので、正直あまり乗り気ではありませんでした。しかし、いきなり断るのも失礼だと思い、一度会って話をきいてみることにしました。

週末、義兄に連れられて、ナナンさん(仮名)がやってきました。背が高く、黒いライダースジャケットを羽織っています。

ナナンさんは、年齢は40代半ば、双子を含む4人の女の子のパパです。高校を卒業後、ロンボク島各地でホテルやゲストハウスなどの宿泊業に就いていました。2018年のロンボク地震をきっかけに宿泊業をやめ、それから今まで自宅でベンケル(バイクの修理屋)を営んでいます。

・・・と、スラスラ日本語で身の上話をしました。動詞の活用もなんなくやってのけます。どこで勉強したのか、と尋ねたら、なんと独学と言うではないですか!

「どうやって勉強してるんですか?」

私は自分の立場を忘れ、イチ言語学習者としてナナンさんに尋ねました。

ナナンさんの教えてくれた勉強法は3つ。
1)夢/目的/目標をもつ
2)その言語を使って、1秒でもたくさん話す(独り言でもいい)
3)話せなかったところを調べたり質問したりして、知識を増やす

ナナンさんはホテルやゲストハウスで働く間にいろいろな言語を聞きました。なかでも日本語の響きがとても美しく感じられ、次第に自分でも話したくなりました。そして、日本語を勉強しはじめた当初から「将来、日本語の先生になる」と決めて、公言してきました。周りからたくさん笑われたけど、ずっと言い続けたことで自分のモチベーションを保つことができたと笑います。

日本からのお客様が海で泳ぐといってはガイドし、山に登るといってはポーターになりました。すべては日本語上達のためです。今は一人で壁に向かって日本語を話しているのだそう。

ものすごい情熱だなと感心すると同時に、私は不安になってきました。これ以上、何を教えたらいいのか、よくわからなかったからです。

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