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上手に歳をとる方法

今からもうかれこれ30年ほど前のことです。当時80代の後半を迎えた僕の祖母は、徐々に足腰がおぼつかなくなり始めていました。深く腰を曲げ、難儀そうに歩く姿が後ろ姿を今でもはっきりと憶えています。

そんな祖母の晩年をなんとか安全で過ごしやすいものにしてあげようと。母は四苦八苦でしていました。例えば電子レンジでご飯が炊ける容器が発売されると、すぐに買ってきては祖母にプレゼントしていました。しかし、祖母は電子レンジでご飯を炊くという発想にどうにもなじめなかったのか、結局ほとんど使われることなく台所の片隅で埃をかぶっていました。また、せっかく母が買ってあげた補聴器も「うるさすぎる」と結局ほとんど使われることがありませんでした。

そんなふうに祖母の面倒を見ていた母も、今はもう84歳の後期高齢者です。そんな彼女にiPadを買ってあげたのがもうかれこれ5年ほど前でしょうか? それ以前にも何年かパソコンを使ってきた母はすぐにiPadに馴染みました。そしてアマゾンで買い物し、FacebookやTwitterで暇をつぶし、iBookで読書をしています。その上、ある日唐突に iPhone を買ってきて、今ではLINEで家族とやりとりしています。やっていることが僕らの世代とまったく変わらず、非常に助かっています。

そんな母の口癖は、「老人こそネットをするべき」です。歳をとれば体が不自由になり、出かけるのがおっくうになる。大雨や雪の日に買い物に出かけて、転んで骨折したくはない。でもネットを使えば、お米でも洋服でも玄関先まで届けてくれる。遠隔地に住む孫や息子の顔も見れる。いつもそんなふうに言っています。「老人こそネットを使うべき」という母の言葉には説得力があります。

何が両者を分けたのか?

タブレットに限らず、テクノロジーは高齢者の大きなチカラとなり得ます。将来的には自動運転車や家事代行ロボットなども登場し、きっと高齢者の暮らしを大幅に快適にしてくれるでしょう。すでにルンバのようなお掃除ロボットが存在しますが、冷静に考えてみれば電子レンジとか皿洗い機、あるいは洗濯から乾燥までやってくれる洗濯乾燥機だってすごいものです。今の高齢者と30年前の高齢者の生活の質とでは、かなり大きな差があります。

母がテクノロジーを造作もなく使いこなしている姿を見るたびに、かつて祖母がうまく使えなかった電子レンジ用の炊飯器を思い出します。新しいものにはどうにもうまく馴染めなかった祖母と、割とスイスイと慣れていく母。母はもうかつての祖母と同じような年齢なのに、何が母と祖母を分けたのでしょうか? 一体僕はどうすれば、老後も新しいテクノロジーについていけるようなメンタリティを維持できるのでしょうか? 自分の母ながらもかなり不思議なので、今日はこのことについて考えてみたいと思います。

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