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5万人以上が来場する手作りイベント 東北風土マラソン(#1/2)

2007年の東京マラソン開催をきっかけに全国各地に大きく広がった市民マラソン。しかし、近年は大会によって集客に差が出てしまい、どうあるべきか見直されています。そんな中、毎年春に宮城県登米市で開催されている「東北風土マラソン」は年々参加者数を伸ばしており、来場者も増加の一途を辿っています。人口7万人の登米市で開催されているマラソン大会は、なぜ人を集めることができていて、どんな想いで開催されているのか、調べてみました。

※多くの市民マラソンは2020年、2021年と一時中断しています。東北風土マラソンも2019年まで開催され、2021年はオンラインのみで開催となりました。

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市民マラソンの開催意義

市民マラソンは公道を利用するという性質上、自治体が中心となって開催されることが多いです。ではなぜ、自治体はマラソン大会を開催するのでしょうか。古くは「住民の健康促進のため」という意味合いが強かったですが、近年は経済効果やブランディング・地域活性化という側面も強くなってきています。「運動する機会を提供する」だけではなくなってしまったマラソン大会にどのような価値を付加させるかは自治体の悩みの種であり、大きな資金や人員を投入した競争のようになっています。その結果、長い歴史を持ちながらも廃止にせざるを得ない大会が出てきています。

そんな中、「東北風土マラソン」は2014年に初回が開催されました。宮城県登米市で春先に開催される大会で、初回1,300名だったランナーは、第5回目となる2018年大会に6,800名となり、来場者総数は53,000名にもなりました。登米市は宮城県と岩手県の県境に位置し、仙台から車で1.5時間程度。美しい田園風景が拡がり、周囲約20㎞の長沼では四季折々の自然が楽しめます。自然豊かではありつつ、決してアクセスが良いとは言えないこの地に53,000名が押し掛ける理由のひとつは「フード」です。

「東北風土マラソン」

甘酒、サイコロステーキ、りんご、いぶりがっこ、金のさんま、最上そば、焼ホタテ、蒸しホヤ、フカヒレスープ、いちごチーズケーキ、牡蠣のしぐれ煮。これらは全て、マラソンのレース中にエイドステーションで提供されるものです。ここに記載したものもほんの一部で、フルマラソン種目では20種類以上のグルメが提供されます。さらに、マラソン中だけでなく、前日に堪能できる「Food Night」、当日に飲食・物販ブースが並ぶ「登米フードフェスティバル」、東北の日本酒が蔵人と共に集まる「東北日本酒フェスティバル」も同時に開催されています。

また、「仮装賞」もこの大会の特徴のひとつです。事前に仮装テーマが設定され、当日は豪華賞品が授与される表彰式が実施されます。そのため、コース上には仮装ランナーが溢れ、マラソンというよりもはやお祭り状態です。

さらに、メイン種目のフルマラソンとハーフマラソンだけではなく、老若男女健障問わず来場する全ての人が楽しめるような企画も用意されています。2018年大会では、小学生~高校生向けの種目や親子ラン、障がいのある方と伴走者のペアランなどの種目が用意されており、会場では芝生の上で子どもたちが楽しめる遊び場や、「ゆるスポーツ」も開催されています。

マラソンではなく「お祭り」

ここまで特徴を見てきてわかる通り、東北風土マラソンはいわゆるマラソン大会と一線を画しています。実は事務的にも、「マラソン競技」ではなく「お祭り」の要領で道路使用許可を取っているとのこと。ただ走るだけではなく「ランナー以外も訪れて楽しめる場にしたい」という想いがあり、マラソン以外に他の楽しみをどれだけ作れるかを重視しています。東北の魅力をたっぷり味わえ、ランナーも、子どもたちも、ボランティアも、観光客も、地元の人たちもみんなで楽しめる、まさにお祭りイベントとなっています。

その結果、第5回(2018年)大会のランナー6,800名、来場者総数は53,000名、さらに外国人が200名という大規模なイベントにまで至ったのです。さらにおもしろいのが、外国人参加者の出身国。アジア圏はもちろん、チェコやポーランド、ボスニア、エジプトなど、さまざまな地域から大会へ訪れているのです。ここには、東北風土マラソンの基になった「メドックマラソン」の影響が大きくありました。

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