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独身男性が東京の銭湯を勝手に評価する(その9)

働き方の記事を書くと言ったな。

あれは嘘だ。

いや、まあ嘘ではないんですけど、自分の中で練れ次第書いていきます。

それまでは銭湯記事にお付き合いください。今回は東京23区各所のキラリと光るイイ感じの銭湯をご紹介します。

※新型コロナウイルス感染症の影響で、営業日や営業時間を一時的に変更している銭湯が多くなっています。本稿では最新の情報の発信を心掛けておりますが、実際の営業についての確認は各銭湯にお願いします。

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■ 宝泉湯(台東区)・・・水槽がトレードマーク。小雨が降る薬湯がユニーク【84点】

このシリーズでたびたび言及しているが、台東区は東京23区の中で最も人口あたりの銭湯軒数が多い。そして台東区の銭湯を訪れて驚くのは、その密度のみならず、それぞれしっかり個性を発揮している点だ。

今回紹介する宝泉湯もやはりそんなユニークな銭湯の1軒である。

宝泉湯は日比谷線入谷駅から徒歩5分程度、交差点の角に位置するビル型の銭湯だ。下足場とロビーを仕切るかたちで大きな水層が置かれていて、色とりどりの熱帯魚がその中を泳ぐ。

玄関前。右奥に水槽

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浴室は富士山などを描いたペンキ絵ではなく、「ヴィーナスの誕生」をモチーフにしたタイル絵。ザ・下町の入谷の銭湯でご対面するには不釣り合いに思いそうなものだが、意外と溶け込んでいるのが面白い。

浴槽は熱めの白湯(座風呂、ジャグジー、電気風呂)と、日替わりのぬる目な薬湯の2つ。

薬湯スペースは壁で仕切られていて、岩風呂っぽい造りになっている。薬湯スペースではなぜかミストが発生しているのだが、ミストの粒子が大きすぎて、霧というより小雨みたいになっていた。

一応自粛中なのでサウナには入らなかったが、サウナを出たそばには水風呂もあり、しっかり交互浴ができる。水風呂は20度くらい、少しぬる目なので長い間入っていられる。3人分は余裕で浸かれる広さで、水風呂で足を伸ばせるのは嬉しい。

入浴客はほとんど顔見知りなんじゃないかと思うくらいみんな仲が良く、挨拶と雑談がそこかしこで交わされていた。日常使いにもよし、ちょっと疲れが溜まったと思ったら追加でサウナに入るもよし、ほどほどにユニークで楽しい名銭湯である。

宝泉湯
住所:〒110-0003 東京都台東区根岸3-14−14
営業時間:15:00~24:00
定休日:月曜日

■ 第三玉の湯(新宿区)・・・第一、第二はどこへ?露天のついた庶民派銭湯【88点】

飯田橋から人でにぎわう神楽坂方面へ向かい、神楽坂上の交差点近くにある銭湯。昭和館漂うトタンと、居酒屋横町のようなアーケードが主張する雑然とした空間を抜けると、急にサッパリした入口が出迎える。

玄関前。レトロ感と現代感が同居する

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2018年にリニューアルしたこの銭湯は、ロビーや更衣室は木の風合いで落ち着いた印象である一方、浴室の内装はタイル張りでスタイリッシュな印象。

浴槽の種類が比較的豊富で、白湯(ジェットバス)、かなりぬるめの炭酸泉、逆に熱めの露天風呂、水風呂がある。

浴室の扉から至れる露天風呂は神楽坂らしく?落ち着いた造りで、大きくはないが奥に広め。ゆったり体を沈めて温まることができる。湯音は比較的高めで、体感41~42℃。露天の入り口付近に水風呂があり、交互浴が捗る。

近所にあれば非常に重宝するであろう、充実したラインナップの銭湯。

ちなみに、ネーミングの由来を番台に尋ねたところ、第一、第二玉の湯というのも以前あったらしい。第二玉の湯は今でもあるよ、とのことだったので調べてみたが、見つからなかった。

番台の方もそれ以上の詳しいことはご存じでなかったので、第一と第二玉の湯は謎のままである。どなたかご存知の方がいらっしゃったらぜひご教示いただきたく存じます。

第三玉の湯
住所:〒162-0816 東京都新宿区白銀町1−4
営業時間:15:00−25:30
定休日:水曜日
※訪問当時、サウナ休止中。最新の情報は銭湯にご確認ください。

■ ときわ健康温泉(板橋区)・・・銭湯の域を超えた上板橋の極上癒やしスポット【97点】

東武東上線上板橋駅から徒歩10分程度。住宅しかない静かな一角に溶け込むように存在するのが、「ときわ健康温泉」である。

飾り気のない案内看板に味がある

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正面玄関。反対側にも入口がある

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大田区の「蒲田温泉」の経営者と親戚同士らしい。蒲田温泉と言えば銭湯の域を超えたサービス精神で経営が心配になるほどのコスパで有名だが、こちらも期待を裏切らずリーズナブルに至上の入浴体験を得られるすばらしい場所だった。

名前の通り、こちらは天然温泉に入れる温泉銭湯だ。色は無色透明で、ロビーには汲み上げた源泉を入れた水槽に金魚が泳いでいる。

温泉もよいのだが、個人的に推したいこちらの名物は巨大な水風呂だ。普通の銭湯の水風呂は精々3人入れば満杯というところ、ここの水風呂は詰めれば10人ぐらい入れそうなサイズだ。足を延ばして全身リラックスできる水風呂はとても気持ちがいい。

そして水風呂がデカいとなれば当然サウナもデカい。今でこそサウナでもソーシャルディスタンスの時代だが、詰め込めば25人は入れるのではないかというほどだ。広々としたサウナと水風呂で交互浴を繰り返せばたちまち「ととのう」こと請け合いである。

それだけでなく、露天の岩風呂に薬湯、室内の白湯にも歩行風呂(腰までの高さの湯舟の床面に丸石が敷き詰めてあり、足にジェットが当たる)、頭上から湯が落ちてくる打たせ湯、ジェットバスなどがあり、サウナに入らずともゆっくり楽しめる。

下手なスーパー銭湯をしのぐバリエーションの風呂が天然温泉、しかも日曜は朝からやっているときている。

ちょっぴりくたびれた建物の感じとか、探せば粗がないこともないが、「それがどうした」と切り捨てざるを得ないほどの至上の入浴体験。あまりにここでの「ととのい」が強烈すぎたため、過去最高得点となる97点とさせていただく。

ときわ健康温泉
住所:〒174-0064 東京都板橋区中台1丁目25−5
営業時間:14:00〜23:30(日曜は9:00〜23:30)
定休日:月曜日

■ 改正湯(大田区)・・・模倣が本物を超えることもある。唯一無二の炭酸黒湯【92点】

芸術の分野には「すべての創造は模倣から出発する」という言葉があるが、大田区蒲田の改正湯も模倣から始まり、唯一無二の個性を獲得するに至った好例である。

番頭さんに「改正湯」という名前の由来を尋ねると、もともと別に同名の銭湯があり、それを真似てつけたのだとか。今ではオリジナルの改正湯は存在しないらしく、こちらだけが残る形となった。

ちなみに、こちらの創業は昭和4年。いまや齢80年を超える老舗だが、リフォームで内外装を一新した建物は、清潔かつハイセンスな装いだ。

外装

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銭湯業界では有名な「わ」板。湯が「沸いた」ということで営業中を示す

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さて、世に銭湯は星の数ほど、はないにしても数多ある中で、改正湯にしかない風呂がある。黒湯炭酸泉である。

その名の通り、蒲田名物の黒湯天然温泉に、二酸化炭素ガスを湯中に発生させて血液循環を促進する炭酸泉を合わせたもの。

美味しいカレーに高級肉のステーキ乗っけちゃいました的な発想である。安直だが、それが嫌いな人はいないはず。

通常炭酸泉は比較的ぬるめ(例えば、千代田区の「RAKU SPA 1010 神田」の炭酸泉は38~9℃ほど)だが、ここの黒湯炭酸泉は40℃以上あるのも珍しい。ただでさえ炭酸泉は多少ぬるくても体がポカポカする効果があるのに、その温度が高いのだから短時間でしっかり温まれる。

改正湯には他にもユニークなポイントがあって、浴室の奥壁には大きな水槽が置かれている。湯に浸かりながら魚を眺められる不思議なレイアウト。

水槽を泳ぐ魚と浴槽に浸かる人間、そこに何の違いがあるのだろうか。人間至上主義に染まった現代社会に警鐘を鳴らしている…かどうかは知らないが、生き物を横目に入る温泉も乙なものだ。

また、個人的な一押しポイントは水風呂。水風呂も黒湯で、うっすら色が付いている。温度はかなりぬるめで30度以上あるはず。ほぼ1人用のサイズ感ではあるものの、炭酸泉で温めた体をゆっくり冷やし、じんわりと「ととのう」感覚を与えてくれる。

もちろん普通の黒湯、シルキーバスの白湯などもあり、実にバラエティに富んでいる。

蒲田という立地を生かし、炭酸黒湯に浴槽の中の水槽と、唯一無二の個性的かつ高水準の入浴体験を提供する。はじめは模倣でも、今や溢れんばかりのオリジナリティを発揮するようになった改正湯。遠出してでも行っておくべき名銭湯だ。

改正湯
住所:〒144-0051 東京都大田区西蒲田5丁目10−5 改正ビル 1F
営業時間:15:00〜24:00
定休日:金曜日

■ 金星湯(北区)・・・住宅街で愛される王子の名湯【80点】

南北線王子神谷駅から徒歩5分。駅前からして比較的閑静な住宅街だが、
さらに静かな公園の向かい側にあるのが、金星湯(きんせいゆ)である。

建物は奥に広く、ロビーに当たる場所には背の高い椅子がならび、昭和の喫茶店のような風情だ。ちなみに、ロビーを横切って脱衣所の入り口に下足箱がある珍しい構造をしている。

年季を感じさせる外観に少々心配したが、脱衣所や浴室は手入れが行き届いていて清潔感がある。

浴室の構成はかなり熱めの白湯・薬湯と水風呂というシンプルな組み合わせだが、それだけあればもはや十分。日曜は朝からやっているので、ひとっ風呂浴びて目を覚ますのは気持ちがいい。

ドリンクや(朝湯のやっている日曜のみ)モーニングセットもあり、外のテーブルでは地元のお爺さんたちが談笑していた。番台のお爺さんも気さくな人で、差し出したお遍路ノート(スタンプ帳)にスタンプを押してくれながら、「頑張ってるねえ」と声をかけてくれた。

暖簾をくぐって出るとき、スポーツの練習帰りだろうか、若い人たちともすれ違った。地元に根付いて人が集まる拠点として、ずっと残ってほしい銭湯である。

金星湯
住所:〒114-0002 東京都北区王子4丁目1−3
営業時間:16:00−25:00(日曜は8:00−12:00も営業)
定休日:金曜日

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