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【統計でみる銭湯】東京における「銭湯砂漠」はどこだ?

最近いつも銭湯のレビューばかりしているが、今回はちょっと趣向を変えて、数字を使ったアプローチで銭湯について考えてみた。

■ 文京区は銭湯不毛の地か?

筆者は東京の東の方に住んでいるため、上野や谷根千(谷中・根津・千駄木)エリアの銭湯に訪れることが多い。同エリアには台東区の寿湯や荒川区の斎藤湯をはじめとした歴史ある名銭湯が多く、いつも楽しませてもらっている。

そんな時、ふと思った。



「そういえば文京区って、銭湯少なくないか?」



文京区といえば、東京大学をはじめとした教育機関が集う区部随一の「文の京」。学校以外にも、東京ドームや、つつじ祭りで有名な根津神社のように観光客を呼べる資源も多いため、下宿暮らしの大学生や日本文化に触れたい外国人などの銭湯需要も高いはずだ。

それなのに文京区には、銭湯が少ない。事実、銭湯の同業組合である東京都公衆浴場業生活衛生同業組合(以下、組合)に加盟している文京区の銭湯はわずかに5軒(富士見湯、ふくの湯、豊川浴泉、白山浴場、大黒湯。2019年10月時点)※ちなみに組合に属さない銭湯の「君の湯」が区内にある。

これより銭湯数が少ない区は千代田区と港区(いずれも4軒)しかないが、宅地利用の少ないこの2区と比較するのはあまり意味のあることではないだろう。絶対数という意味では、文京区はどうやら銭湯数が事実上最も少ない区と言えそうだ。

同区ではここ数年銭湯の廃業が相次いでいる。2013年には千石の「おとめ湯」、15年には目白台の「月の湯」と本郷の「菊水湯」、19年には春日の「歌舞伎湯」が廃業となった。6年で半分近くに減ったということになる。

絶対数と閉業のペースから言っても、どうも文京区は銭湯砂漠のように思えてくる。

■ 計算してみよう


とはいえ、だ。


単純に数だけを見ていると実質を見誤る可能性がある。公衆衛生施設の側面を持つ銭湯の数は、おおむね商圏の人口に比例するだろう。

というわけで、銭湯施設数と人口データから東京23区における「銭湯砂漠」(=単位人口あたり銭湯数の少ない区)を特定してみた。

やることは簡単で、

①組合の配布する銭湯マップと、同じく組合がウェブで公開している銭湯廃業リスト(下記)を照合して各区の営業中の銭湯数を特定する
※休業中は含む。スーパー銭湯、サウナ、岩盤浴など同様の機能を有するが組合に所属しない施設は対象外。
②銭湯数を各区の人口で割って、単位人口当たり銭湯数を算出する。そのまま割ってしまうと桁数が非常に小さくなるので、ここでは人口1万人あたりの施設数を算出した。

■ 住宅地ほど銭湯砂漠?

算出結果がこちら。銭湯の少ない砂漠順に並べている。
※小さくて読みにくい方は、下のリンクからExcelファイルを参照いただきたい。

人口1万人当たり銭湯数

まず23区の平均は、人口10000人当たり0.5と、わかりやすい数字が出てきた。0.5を下回ると銭湯砂漠ということになる。

銭湯砂漠トップ(ワースト?)5は、高級住宅街の港区、筆者の肌感で砂漠認定していた文京区がワンツーフィニッシュ。ここまでは予想通りだ。

他方、世田谷、練馬、目黒といった閑静な住宅街のイメージが強い区も銭湯砂漠というのが少し予想を外れた結果となった。

逆に表の下側に目を移すと、銭湯豊穣の地トップ5は台東区、荒川区、北区、墨田区、豊島区。下町的な区が多くランクインし、こちらはすんなり納得できる結果となった。

特にトップ2、台東区と荒川区は人口10000人あたり銭湯数が1を上回り、3位以下を大きく引き離している。

ちなみに23区内で銭湯数ワーストの千代田区(施設数0.63)が予想外の健闘を見せ、23区平均(0.5)を上回っている。施設数こそ少ないが、人口も著しく少ないためだ。

これを東京区部の地図にプロットしたり、区の平均所得などとの相関を取ってみると、もう少し面白い示唆が出てくるだろう。今回思い付きでやってみたが、案外面白く遊べるかもしれない。


次回気が向いたらまたやってみたいと思います。ここまでお読みくださりありがとうございました!

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