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【ショートショート】 #39 約束を守らない彼氏を持つ彼女
「彼ったら時間を守らないの!」
かなり不機嫌な顔をして喫茶店に入ってくるなり私のほうを見たと思ったら、間髪入れずに出てきた言葉がそれだった。
彼女の名前は「ひとみ」
仕事仲間の一人で私とは馬が合う。と私は思っているのだが、それは分からない。でも、時たまこうやってお気に入りに見える喫茶店に入って、美味しいと思っているコーヒーを飲みながら、好きだと勘違いしているケーキを口にして楽しむのがストレス解消。
「彼女にとってはだけど」
私がそんな彼女とこんな風に昔からの友人のように付き合うことになったきっかけは何でもない。半年くらい前にあった社内プロジェクトが一緒になって、おまけに住んでいるマンションも近いことがわかった。ただそれだけの事。実際、プロジェクトが終了すると社内ではほとんど顔を合わせなくなった。だからお互いに愚痴を言い合うにはいい関係性でもある。
ひとみは数か月前から彼氏と付き合い始めたらしい。相手は同い年のサラリーマンという情報を聞いてはいた。
「ねぇ!聞いてるの?」
ひとみは真剣な顔をしてこちらを見てきたので私は目を閉じてうなずいた。
「聞いてるよ、時間を守らないんでしょ?」
「そうよ、デートも、食事も。何もかも彼と約束したことを何一つ守ってくれないの!・・・全く!付き合い始めのころは君を裏切らない。なんて言ってたくせに」
話を聞いている私は少しだけ思い出し、微笑んだ。それは私が彼の両親の仕事が政治家だったことを思い出したからである。
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