【ショートショート】 #44 交換条件
「あなたの人生と私の人生を交換したいんだけど、条件はある?」
手を差し伸べてきたのはなんと有名なインフルエンサー的存在の人だった。その人は動画のネタに困ったのか、それとも完全に危ない薬に手を出したのかは定かではないが、私にそんな要求をしてきた。
私は何なのかというとしがない一般人。大抵の人がなる一般人である。そんな私に彼女がこんなことを持ちかけてきたのには理由があって、それは彼女と私の関係は友人だからである。
「同じような年代に生まれて、同じような学校に行ったんだけど、その後の人生がまるで違うでしょう?私は有名人。あなたは一般人。それだけで面白いと思わない?」
私は正直彼女が昔から苦手だった。
明るくて元気。そしてはきはきとしたしゃべり方で友人も多かった。というよりも一方的に友人であることを押し付けるのが得意な人だった。
余計な一言を付け加えるのであれば「悪い人ではない」
「いい人でもないけどね」
人生を交換するというネタについて彼女に聞くと結構本気らしくて、自分が持っている環境をそっくりそのまま私と交換したいみたい。
「もちろん、お金も家もあなたと交換するわ。それで1年後に結果を見たいじゃない?あ、動画は投稿し続けるけど、そのお金は私の物ね」
私はその言葉を言っている彼女の目を見てため息をついた。
「はあ・・・あんた・・・じゃあ交換してあげなくもないからそこから降りてきなさいよ」
彼女は首にかかったロープを握りしめると声を上げて泣き出した。
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