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【ショートショート】#55 次の自分は、誰が塗る?

 「2度目はうまく行く」

そう自分に言い聞かせ、びっしりと解答が書かれた答案用紙をリュックにいれたことを何回も確認した後家を出て、乗り慣れない電車を乗り継ぎ、都心部へ向かった。

「・・・・次は上手く行くに決まっている」

 何度も自分に言い聞かせながら足を進め、2度目の試験会場へたどり着いた。1度目は失敗したんだ。その理由もわかってる。

「私は、答えを持ってこなかった」

 試験に出された問題が難しいとかそういう話じゃない。ここは答えの持ち込みは出来るはずなのに、以前の私はそれを持ってこなかった。だから上手くやれなかったんだ。この日の為に私が用意してきたのは、たんまりと公式が書かれている試験対策をした答案用紙。あとはこれを出された問題に合わせて書くだけでいいんだ。

 受付を済ませて机に座る。時計を机の前に置き、筆箱から鉛筆と消しゴム、そして用意してきた答案用紙を目の前に置いた。

時間が近づくとどこからともなく試験官が現れ、受験番号を照合した後、一枚の白い紙が伏せられて置かれた。じんわりとした静寂が訪れる。時計の秒針だけが部屋に響き渡るあの感じ、嫌いではないけど好きでもないよという気持ち。

「それでは始めてください」

 一斉に受験生たちは目の前の白い紙をひっくり返してペンを握った。私も同じようにひっくり返し、ペンを握った。そこまでは順調だった。

何故か知らないが私は渡された紙を見つめ、思わず呟いてしまった。

「・・・そうか、私は問題を用意することを忘れてしまったんだ」

目の前に存在する真っ白な紙を見つめ、3度目は無いのかもしれないと感じてしまった

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