「イネーズ」移りゆく風 その2

「風の感じが変わってきた」

そう俺は足元の住人と話をしていた。

この、今の場所に移されてからかなり日が経って、「おれくん」も「わたしちゃん」も同じくらいの背になってきた。

次の世代に伝えるための「実り」もこの時期を堺にだんだんと大きくなっていった。

そういういわゆる、「重要な時期」とでも言えばいいのだろうか、そういう時期に限ってやつは計ったかのようにやって来る。

足元の住人は囁いた。

「そうだねぇ、今晩辺りが一番つよいんじゃないかな?」

そう、それはまさに「ひと」が「災害」と呼ぶもの。

「台風」が来ていた。

雨風共に強さは来るものによってまちまちだが、大体の場合被害を出して立ち去っていく。

その影響は俺たちにももちろんある。

その日、「おれくん」「わたしちゃん」たちのところにも様子を見に
「ひと」が来ていた。

「わたしちゃん」たちのほうに来る人は「足元の水」を増やしたり、心配そうに空を見上げていた。

一方、「おれくん」たちのほうにきた「ひと」はここも相変わらず、俺たちと話をしているだけだった。

おれは少し気になってその「ひと」に聞いてみた。

「おいおい、風が強くなってきてるけど、何もしなくてもいいのか?」

すると「ひと」は答えた。

「大丈夫だよ、きみらは図太いから」

そういうと笑っていた。

「無責任」・・・というわけではなさそうで

どこか自信に満ち溢れていた。

長い時間、おれは「ひと」と会話してきたが、この「ひと」は「なにも考えてないわけ」ではなく、「考えたからこそなにもしなくて大丈夫」にしたんだと思う。

その答えは、台風が過ぎ去った日にわかることになった。

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