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【ショートショート】 #41 ※この物語は1分で読むことが出来ます。

「読むことが出来ません」

 私はこの物語の主人公。そう、主人公。この物語はあなたの物語でも、私の物語でもありません。「誰かがきっと面白いだろう」と考えて書かれた物語であることは間違いありません。

 ですので1分という短い時間で読むことを想定されていないのです。

 素敵な家族がいます。お父さん、お母さん。息子に娘の4人に加えて犬が2匹飼われています。理想的な家族です。ですが、ここから悲劇が起こり始めます。

 息子さんに病気が見つかりました。

両親は息子に対して手厚く、そしてできる限りのことをしました。飼っていた犬も売却して、大学に行くはずだった娘もそれを諦めて夜のお店で働き始めます。

 借金まではしませんでしたが、マイホームもマイカーも全て売りつくしました。娘は一向にお兄さんの病状が良くならないことを重く受けとめてさらにお金を稼ごうとしました。

そうです、夜の仕事を増やしたのです。

 娘だけではありませんでした。両親も身を粉にして働いたのです。

しかし、数年後、息子はこの世から去りました。

 あなたはこの物語を読んだとき、誰に身を寄せましたか?父?母?それとも娘、息子。それとも犬かもしれません。主人公を変えることが出来るかどうかは読むことが出来る人がもっている特権かもしれません。

 この物語を深く受け止めて明日へ繋げる。そんな思考の先には何もありません。

1分の物語ですが、その先を見ようとするのはもしかしたら、あなたの中に住んでいる小さな小説家なのかもしれません。


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