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【ショートショート】 #40 地続きヒーロー

世界を救わなければならない。そう考えた正義感の強い若者が悪を懲らしめるために戦い続けていた。そして、今日、そのボスを追い詰めることが出来た。

「ようやく、これで世界が平和になるな」

若者は持っていた銃を突きつけるとそんなセリフを吐いた。

悪は残虐の限りを尽くし、村をはじめとして最後には国を滅ぼした。国を滅ぼした悪は次第に世界制覇に乗り出していき、そのさなかに勇者と名乗る若者に急所を撃たれてしまったのだ。

 かつてこの悪にも若き日があって、若き希望を胸に秘めていた。

 悪が若いころ、村のために尽くし、国に尽くし、そして世界に尽くしていた。何を隠そう、彼は世界に尽くすことが何よりも正しいと信じていたのだ。

しかし、彼はある日裏切られることになる。どれだけ尽くしても、どれだけ身を犠牲にしてもたった一つのことが変えられない。変えることが出来ないほどに根が強くはびこってしまった「しがらみ」

 それを取り除くために彼は村を焼き、国を打ちのめし、世界を制覇しようとした。

悪はもう一息のところで他の誰かに邪魔された。もう一つの正義に邪魔された。もう一つの意思に邪魔された。

「叶えることが出来なかった、ここまでの人生で悔いはある。でも、仕方がない。それがこの世界を制覇するということなのだから」

 正義感の強い若者は引き金に手をかけると、ためらいなく悪を撃ち殺した。

 しばらくすると世界は平和になった。

でも、世界は前のまま、全く変わってもいなかった。

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