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【ショートショート】 #42 花束クレンの送り物

「むかつく相手に、嫌な意味を込めて、最上の花束を送りませんか?」

 普通はそうないでしょう。俺は居酒屋に張ってあったポスターを見ながら店主に聞いた。

「なんのことで?」

 店主はとぼけた顔をして俺に聞き返してきた。

「これだよこれ。普通は祝いたいとか、幸せになってね、とかそういう感情で花を贈るんじゃないのか?・・・どうしてこんな変なポスター張ってるんだよ」

「ああ、それのことですか・・・私の娘がですね最近になって始めたんですよ」

「・・・大将、あんた娘さんがいたのか」

「ええ、ご存じなかったのも無理はありません。私もつい最近まで知らなかったのですから」

 少し嫌な空気が流れる。

「ああ・・・それは・・悪いことを聞いたな・・・あまり事情を聴くつもりはないけど、そういうこともあるってことか」

「そうですねぇ、私も急に成人した娘が現れてびっくりしましたよ。でも優しい娘でね、この間花をもらったんです。ほら、そこに飾ってあるでしょう?」

 店主が指さす方向には花瓶が置いてあって、見たことない花が飾られていた。

「・・・あまり見慣れない花だけど・・・なんて花なんだ?」

「あれは○○という花だそうで」

「・・・そうか」

 次の日、何も疑うことなく店主は娘に殺されたらしい。俺は行きつけの店をまた一つ失ってしまった。

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