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おいでおいで

 恋人も友人もいない僕は、家と会社との往復の日々。その途中には横断歩道があり、何やら囁き声が聞こえるのだ。最初のうちははっきりとしなかった言葉が、次第に輪郭を持ち、いくつもの声と重なっていた。

「おいでおいで」

 とうとうその声たちに抗うことができず、僕はズブズブと横断歩道へと飲まれてしまった。
 僕に仲間ができた。1人じゃなくなった僕は、今日も仲間と声を合わせ囁いている。

「おいでおいで」

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