●200字小説「僕はいるよ」

 少しだけ開けたカーテンの隙間から外を見る。かれこれ八時間。電柱に身を隠すようにしてあの男はずっといる。
 今日に限ったことではない。二年ほどあの男はこの家を見てるだけ。
「モテるのも考えものだな」
 家主である女に声をかけるが、返事はない。愛しの女はただの肉塊となり、床に転がるだけ。もちろん、そうしたのは僕。
 もう一度隙間からあの男を見る。お前がそこから見るしかできなかったこの場所に、僕はいるよ。

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