●200字小説「恋」

 私を食べ尽くした彼は満足そうに眠る。彼の腹の中は温かで、恋する彼に抱かれる幸福の中、私は卵を産む。彼の腹の中でびっしりと。
 子どもたちは元気が過ぎるようで、つい彼の腹を食い破り外に出てしまう。毎回注意しても言うことを聞かない。親って大変。
 それにしても、また「彼」を失ってしまった。
 スマホの電源を入れ、画面をタップする。マッチングアプリ。これってすごく良い。
 この中にはたくさんの「彼」がいて、その数だけ私は恋をする。

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