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中村郁さん著:『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』を読んで

発達障害(ASD/ADHD)をお持ちで声優・ナレーターである中村郁さんのご著書、『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』を読みました。読書感想文です。

現代において生きづらさの代名詞と言っても差し障りない発達障害。そんな発達障害と仕事、そして子育て(!)を成立させている中村さんの、工夫に満ちた一冊です。

動画でも紹介していますので、動画派の方は以下からぜひ。

どんな本か?

一言でいえば、中村郁さんが発達障害とともに歩んできた人生のエッセイ&ライフハック集でしょうか。

  • 日常生活上の困りごと&対処法

  • ”コミュ障”なことへの対処法

  • 「嫌われる勇気」的マインド

  • 失敗への向き合い方

  • 幸せを拾い上げる視点

※発達障害に関する医学的な正確さや知識の収集が目的の場合は、ピントが合わないかもしれません

「自己肯定感」への問い

昨今よく「自己肯定感を高めましょう!」というような意識高い系ビジネス啓発が行われることがよくあります。本書ではこのことにも発達障害当事者の立場から疑問をぶつけているのが印象的でした。

「自己肯定感」でWikipediaを参照すると、冒頭に次のような記述がありました。

自己肯定感(じここうていかん)とは、自らの在り方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉である。しかし、後述のように定まった定義はなく、他の類似概念との弁別も充分とは言えない。

Wikipediaより

要するに、”自己肯定感”ってなんとなく使っているけど実際には「ヤバい」みたいに多義語化してるよねということです。

本書では、”「俺のここがすごい!」と自分で言える部分がたくさんある人”をみんなが言っている「自己肯定感が高い人」として使用している(と僕が読解した)ので、ここでもそれに倣います。

この「自己肯定感」なるものに疑問を投げかけ、本当に大事なのはすごいと自慢できることが多いことではなく、あるがままの自分を受け入れることだとあります。個人的に非常に共感できる内容ですし、重要だと思います。

たしかに、「俺つえー」な人は傍から見たらなんか仕事できそうに見えたりすごそうに見えたりするのかもしれません。(僕は思いませんが)
でも、人生にとって、あるいは幸せに生きたいと思った時に本当に大切なのは「自己肯定感」でしょうか?

中村さんのおっしゃる「あるがままの自分を受け入れること」は心理学でいうところの「自己受容(self-acceptance)」なのだと思いました。
ダメなところも含めて、そんな自分を受け入れてあげる態度のことです。ちょっとおちゃめでやらかすこともあるけど、そんな自分も可愛いじゃん!といった感じです。

複数のエピソードを読んで、自己受容の大切さを経験から自然に習得していると読み取れました。そしてそれを言語化しているすごさ!

必要なのは、”工夫”

本書には具体的なエピソードがたくさん出てきますが、表紙にもなっているスペアキーの例が代表的。

鍵をとにかくなくすので、最初にスペアを10個作ってしまうという力業!

僕には無い発想だったので面白いなと思いました。
そして我々読者はこの大量の鍵に目が奪われがちですが、不動産屋さんに返すことになる「本物の鍵」は一切使わずに絶対に無くさないところにしまっておくというところが実はけっこう”カギ”だったりします。ADHD特性への適切な対処ですね。

僕も常々思って実践しているのは「工夫が大事」ということです。このことを体験からご理解されて実践していらっしゃるのすごいなと思いながらふむふむと読んでいるとあとがきに次のようにありました。

私たちに必要なのは、工夫です。(中略)これは私の主治医の先生の言葉です。

『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』あとがきより

やはり!と、「工夫」を意識していたことがわかり得心して読み終えました。

僕は、発達障害を持ちながら社会とうまくやりとりして生きている人に共通するのがこの「工夫」の意識だと思っていて、さらにその自説を補強することができました。

少しでも気になった方はぜひチェックしてみてください。

…というか、表紙がいとうのいぢ先生な時点でジャケ買いですよね!!!(いにしえのオタクの圧)


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