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従業員と企業のこれからの関係性を考える

昨年来、各企業および働く人々は、新型コロナウイルス感染防止の対応を通じて、否応なしに働き方の変化を迫られました。ホワイトカラーを中心に、在宅勤務の利用が急拡大し、「働く場所」に関する前提(従業員は所定の勤務場所に来て働く)が変わりつつあります。在宅勤務の中では、いわゆる公私の時間の区別が揺るやかになり、勤務制度や労働時間管理など「働く時間」にかかわる前提も変化を迫られています。

新型コロナワクチンの接種が徐々に進み、日本の総人口に占める接種率が32.7%(8/7時点)、11月までに希望者への接種を完了を目指す(by首相官邸)という中で、色々ななところで、コロナ後の働き方や人材マネジメントについての議論が、各社で行われていると思います。

私の勤める会社では、「在宅勤務制度」自体はコロナ前から存在していたのですが、利用者は限定されているのが実態でした。むしろ、2020年始めには、オリンピック・パラリンピックによる混雑緩和に向けて、いかに在宅勤務を利用してもらうかを、真剣に検討していました。

ところが、新型コロナ感染拡大、首都圏の緊急事態宣言を受けて、一定の出社率の上限のもと、在宅勤務を余儀なくされ、各職場においては、業務管理、労務管理、日々のコミュニケーションなど、試行錯誤しながら、何とかやってきたという感じです。

とはいいながら、在宅勤務による効果、メリット、もちろん課題も含めて、誰もが実感した中で、今後コロナ前の働き方に完全に戻ることはなく、会社での勤務と在宅勤務を、いかに効果的に組み合わせていくかという議論になるでしょう。その中で、各社の人材マネジメントにおける課題や方針を踏まえて、生産性向上を目指す、ワークライフバランスを目指す、といったねらい、そして、具体的な諸制度の見直しなどに落とし込んでいくと思います。

そういったとき、そもそも現在の人材マネジメントの基本思想や、各種制度の成り立ちに目を向けてみたいと思います。(いわゆる日本の大企業を中心に)
まず、従業員と企業の関係性に着目すると、「就職」よりも「就社」と言われるように、企業の一員になった仲間には、手厚い教育、成長段階に合わせた仕事の機会、様々なキャリア、海外勤務、生活に困らない給与や手当、盆暮れの賞与、住宅の世話、果ては老後の年金まで、企業がしっかり面倒みるという、大げさてすが「保護者と子供」のような関係性が一般的でした。
その中で、「仲間」たる正社員は、いわゆる5点セット※が求められます。
※この言い方は、「人事と法の対話」(有斐閣)で、イオンの人事部長さんの言葉を拝借しています

すなわち、①何でもやります(業務内容)、②どこでも働きます(勤務地)、③いつでも働きます(長時間労働)、④定年まで働き続けます、それに加えて、⑤一定の能力、適性などをクリアしている、といったものです。これらを一律、デフォルトとして、育児や介護など特別な事情がある人などに、①~④に限定をかけるといった人材マネジメントを行ってきました。

ただ、働く人たちの価値観、家庭環境の面(配偶者の就業、介護ほか)、あるいは労災等にまつわる裁判例などをみても、こういった限定解除な働き方は、もはや受け入れられ難いばかりか、企業の競争力や生産性の点でも問題を抱えていると思います。

上記③の労働時間制度に関して、EUの労働時間規制がありながら、イギリスでは「オプトアウト」と呼ばれる個別の制限解除ルールがあったそうです。(これはこれで非難が多かったそうですが)

日本の勤務制度をどう変えていくか考えてみると、「デフォルト」(限定が当たり前)の転換+オプトアウトという個別方式、あるいは、今のデフォルトは維持しつつも、事情がある人に「限定」を加えつつ、徐々にその範囲を拡大していくか、コロナを契機に一気に変えるか、じわじわ進めるか、各社のやり方がありそうです。

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