従業員の企業を見る視点や基準が投資家のそれと近づいてきている

ここ最近、持続的な企業価値の向上に向けて、人的資本経営の実践が強く求められており、企業における「人材」が特に注目されています。他方でも、従業員の就労観、考え方、ライフスタイル等の変化とともに、企業と従業員の関係性にも変化が見られます。かつては、企業と従業員の関係は、特に大企業を中心に、家族、保護、奉公するといった言葉で語られていましたが、すでに転職も一般的ですし、選び選ばれる関係に変化してきています。
確かに、企業に就職するというのは、その人の時間や能力、情熱の多くをそこに注ぐわけで、人材という資源を投資するとも言えます。そういった意味では、相応のリターン(報酬、やりがい、成長など人それぞれ)が期待できないのであれば、投資先を変える(転職する)だけのことですし、人によっては転職する機会等を逃して、あるいは踏ん切りがつかず、ずるずるとリターンが得られなくなったとしても、なかなか損切りできない、すなわち前向きさに乏しく企業に塩漬けになっている従業員が一定数いることも、何となく理解できるような気がします。
最近では、投資家から様々な情報開示が求められており、中でも人的資本の情報開示が義務化されることが2022年に決定しました。これは、投資家からの期待に応えるのはもちろんのこと、それ以上に、企業の中にいる従業員にこそ、その企業のポリシーや課題、施策とKPIなどを開示することが、結果として人材のリテンション、惹きつけに効果をもたらすとも言えます。情報開示に関する企業への期待は、ほぼそのまま、自分という資源を投資する従業員への開示ともいえる、と感じました。

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