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圧巻の力強さ、活火山にのぼる〜焼岳〜

燕岳から約1ヶ月、なかなかタイミングが合わず山のぼりから遠ざかっていたが、10月上旬の平日チャンスをみつけ、どうしてものぼりたかった北アルプス「焼岳」にのぼってきた。

焼岳は長野県と岐阜県にまたがる北アルプスの南側に位置する活火山だ。
焼岳の噴火の歴史はとても古く、1900年代前半は毎年のように噴火活動があったそう。1915年(大正4年)の噴火では梓川が堰き止められ、大正池ができたといわれている。1995年にも噴火があったが、今は気象庁の噴火警戒レベルは1で、注意は必要であるものの多くの登山客が訪れている。
焼岳は南峰と北峰があり、南峰の標高2455mが焼岳の標高として紹介されているが、現在南峰は崩れやすく夏登山は禁止となっており、のぼれるのは標高2444mの北峰まで。
いつまた噴火レベルがあがるかわからないと思ったので、のぼれるときにのぼっておきたいと、焼岳北峰をめざした。


ー 焼岳アクセス

上高地はマイカー規制があるため車でいける登山口は少ない。
焼岳の登山口は
・新中の湯登山口(こちらからのぼる人が多い)
・上高地側登山口
のいずれかになると思うが、周回ルートではないのでどこからのぼりどこにおりるかがアクセスのポイントになる。

【上高地側登山口を利用する場合】
<公共機関>
電車の場合は松本駅、高山駅から路線バスで上高地まで。
高速バスの場合、東京方面からはさわやか信州号や毎日アルペン号があり新宿や東京駅、渋谷、竹橋から直通で上高地までいける。
<車>
長野自動車道松本ICから約1時間の沢渡(さわんど)駐車場に車を駐め、駐車場からはシャトルバスで上高地までいく。

いずれの場合もバスは帝国ホテル前または上高地バスターミナルで下車し、上高地側登山口まで徒歩で向かう。
(さわんど駐車場からタクシー利用も可能)
・帝国ホテル前から徒歩15分ほど。
・上高地バスターミナルから徒歩40分ほど。

【新中の湯登山口を利用する場合】
・上高地側と同じ方法。ただし、バスは中の湯バス停でおり徒歩約1時間かけ新中の湯登山口をめざす。
・車の場合、新中の湯登山口駐車場の利用もできる。ただし15台程度と駐められる車には限りがある。

上高地のアクセスについては上高地の公式webサイトに詳しく書かれている。

<駐車場について>
市営の駐車場は第1〜第4まであり、第3駐車場がバスターミナルと隣接している。他にも民間の駐車場があり、2000台駐車できるので駐められないということはおそらくない。
駐車場についても上高地公式webサイトに詳しくある。

私がどれを選んだのかはルートの説明でお伝えします。

ー 焼岳登山ルート

焼岳の登山ルートは、
①新中の湯登山口からのぼりピストンで新中の湯登山口に下山する
②上高地側登山口からのぼりピストンで上高地側登山口に下山する
③新中の湯登山口からのぼり上高地側登山口に下山する
④上高地側登山口からのぼり新中の湯登山口に下山する
この4パターンになると思う。
車を登山口に駐めれば①が一番最短のコースになる。
私は上高地側、新中の湯側のどちらのコースも歩いてみたかったので③か④の2択だった。
通常はモデルコースでも紹介されている③を選ぶ人が多い。なぜなら、帰りにバスを利用する場合、上高地バスターミナルは始点・終点になるため乗れないということはないが、帰りのバスが中の湯バス停からだと特に週末は上高地バスターミナルですでに満員となり乗れない可能性もあるらしい。
なので、帰りを上高地側におりる方がアクセスとしては安心である。
また下山後に上高地をゆっくり観光、なんてこともできる。
また行きも、中の湯バス停から新中の湯登山口まで歩くのは上りの車道なためかなりしんどい。新中の湯登山口まではさわんど駐車場からタクシー利用するのがおすすめである。

そう考えると③1択なのだが、私が今回選んだのは④のルートである。
なぜか。
理由はひとつ。
上高地側からのコースは橋やハシゴ、鎖などバリエーション豊富なコースで、絶対にくだりではなくのぼりで歩きたかったから。
それだけである。

私が選んだ登山ルート
標高差の参考

なかなか困難もあったが、結果、このルートを選んでよかった。
その理由は、、、最後までお読みください!

ー 焼岳上高地側登山口までの道のり

日増しに起きる時間は早くなる。
車中泊を考えないからなのだが、今回も起床は夜中の0時過ぎ。もはや起きる時間ではない。さっと準備し1時過ぎに出発。
いつものように近くのコンビニで食料を調達し中央道に乗る。
4時半ごろ長野自動車道の松本ICをおり、5時半ごろさわんど第3駐車場に到着。夏の間は高速を走っているとき日の出と出逢えて興奮したが、時間が早い上に日の出の時間も遅くなっているので、駐車場に到着してもまだあたりは薄暗かった。
松本ICをおりてからの道は整備されており激しいカーブもなく運転はしやかったが、道が暗いので運転には少々気をつかった。
さわんど第3駐車場の上段はすでに満車で下段に駐車。下段も半分以上埋まっていた。
お手洗いをすませてシャトルバス乗り場へ。
平日にも関わらず長蛇の列。切符売り場はまだ開いてない。
そして寒い。思わず手袋を取りだす。
時刻表には5時が初便で30分毎に出発するようだったが、この日切符売り場が開いたのは6時だった。
さわんど地区〜上高地の往復で2400円。
私は2便目のバスに乗り、終点の上高地バスターミナルに6:30ごろ到着した。

上高地バスターミナル

上高地側の登山口からのぼる場合は、シャトルバスを帝国ホテル前のバス停で下車する方が登山口に近いが、せっかくなら河童橋も通りたいと思い終点の上高地バスターミナルでおりて登山口に向かうルートにした。
上高地バスターミナルからは西穂高岳登山口を過ぎ焼岳上高地側登山口まで40分ほど梓川沿いの平坦な道を歩く。

有名な河童橋からのぞむ穂高の山々。ガスでてっぺんはみえない、、、
河童橋から穂高岳を背に、正面には焼岳。これまたガスでみえない、、、
梓川沿いの道はとても気持ちがいい

ウエストン碑の前には朝早いのに観光客らしき人が数人いた。

ウエストン碑
西穂高岳登山口。帝国ホテル前のバス停をおりると10分ほどでこの登山口につく。
焼岳の登山口まではあと800m

西穂高岳登山口を過ぎると、本当に人っこひとりいなかった。
ちょっと怖かったので、熊鈴を大きめに鳴らしながらズンズン進むと、これからのぼる焼岳がチラリとその姿をあらわした。

焼岳
朝もやで幻想的な景色を眺めつつ歩く
山々のシルエットがカッコいい

ー 焼岳上高地側登山口からのぼり開始!

焼岳上高地側登山口

いよいよ登山道に入ったが、しばらくはゆるやかな道を歩く。
1ヶ月ぶりの山のぼりだったので、ちょうどいいリハビリになった。

序盤はゆるやかな登山道

登山道に入ってから40分ほど歩くと、次第に傾斜がキツくなってきてひらけた景色ものぞめるようになった。

ちょっとハシゴがでてきた
崖がすごい

さらに進むと崖と崖をまたがる橋があらわれた。高度感があり、個人的にはここが一番怖かった。ロープがゆるいので慎重に歩いた。

崖と崖をまたがる橋
高度感があり怖い

そこからハシゴの連続。ハシゴはしっかりしているので、一歩ずつゆっくり進めば怖くはない。

ハシゴの連続

徐々に視界も開けてきて眺めがいい。

真っ青な空と少し色づいた葉っぱたち

いつくかのハシゴをのぼり、いよいよ最後の難関がやってきた。

最後の難関

直角?しかも、な、長い。
動画でみてはいたが、間近でみるとなかなかの急勾配をのぼる頼りなさげなハシゴだった。
「さて!いきますか!」
ひとり気合いを入れて挑む。
いっけんすると不安定そうにみえるが、意外としっかりしていて(そうでないと困るけど、、)一歩ずつのぼれば決して怖くはない。
ただ、絶対に後ろはふり返らなかった。
後ろをふり返ったら一気に恐怖心がでていたに違いない。
そして、ハシゴのあとは鎖場と続く。

鎖を使ってのぼる岩

やだ、愉しい。
やっぱりこちら側のコースをのぼりにして正解だ!
あのハシゴはおりる方が怖いと思う。
ルンルン気分でアスレチックのぼりを愉しんだら一気に視界がひらけた。

焼岳小屋まであと少し

焼岳小屋まであと少しと思いつつ、なかなかつかない。それでもこの素晴らしい景色に包まれているとしんどさはなかった。
上高地側の登山口からおおよそ2時間、焼岳小屋に到着。

焼岳小屋

焼岳小屋で小休憩し、いよいよラストスパート!焼岳小屋を過ぎ少しのぼるとひらけた場所がある。そこから中尾峠までの道のりは絶景の連続だった。

勇ましい焼岳の姿
この先の稜線がみえる

中尾峠まではいったん少しくだる。
一歩進むごとに風景は変わっていく。

幻想的な焼岳の姿

中尾峠から少しのぼりふり返るとこれまで歩いてきた道と穂高の山々が広がっている。なんという絶景なんだろうか。

奥に穂高の山々がみえる

さあ、最後の急登!岩のぼりのはじまりだ!

最後の急登は岩だらけ
噴煙があちこちでみられる。まさに活火山の息吹を感じる。

つかない。
目の前にあるのになかなか辿りつかない。岩はどんどん険しくなっていく。10m進んでは立ちどまり、なかなか進まない。
だが、絶景と湧きあがる噴煙の生命力に力をもらう。

これでもかと岩が押しよせてくる

ようやくのぼりきった!と思ったらてっぺんはさらに上。

今度こそ最後ののぼり

そしてついに!!!
上高地のバスターミナルから歩き、のぼり続けること3時間45分、ついに焼岳のてっぺんに到着した!!

焼岳北峰てっぺん

360度見渡せる絶景はまさに圧巻。

南アルプス方面(だと思う)
左のとんがりが笠ヶ岳
右に穂高岳、左の奥にちょこっと槍ヶ岳

大パノラマに息を呑み、あがってきた人たちに「すごいね〜」と声をかけあう。てっぺんの絶景を堪能し、少しおりたところでお昼休憩。
そういえば、ずっと孤独だった今回の山行も、てっぺん付近からすれ違う人が増え、やはり新中の湯方面からのぼる人が多いのだなあと思った。

左が焼岳南峰、右の青緑色をした火口湖が正賀湖

お昼も含め1時間ほどてっぺんを満喫しとうとう下山へ。

ー 新中の湯登山口に向け下山

帰りは新中の湯登山口へ。
少しおりてふりむくと焼岳がふたつどんと構えている。

焼岳北峰
焼岳南峰

上高地側は穂高の山々が見渡せたり、荒々しい山を間近に感じながら進む道がてっぺん付近になると多かったが、新中の湯登山口方面は山の斜面が美しい。

艶のあるススキ
山の斜面が美しい
草も紅葉しはじめていた

そして、ちょうど紅葉シーズン。
まだ紅葉のはじまりだけれど、ナナカマドが赤くなっていて緑と赤と黄色のグラデーションが美しかった。暑さのせいかすでに枯れている葉も多かったが、光をうけてキラキラ輝く葉っぱたちに心をうばわれ、またしても前になかなか進まない。

少し枯れかかっていたが、紅葉するナナカマドはやはり美しい
グラデーションな道を歩く幸せ
紅葉と焼岳
自然が織りなす緑と赤のコントラストが眩しい

さあ、紅葉を愉しんだあとはひたすら樹林帯をくだっていく。
中間あたりで一度ゆるやかな道があるが、後はほとんどずっとくだる。

樹林帯に入っていく
そこまで大きくはないが石の道が多かった

行きも帰りも足がつかるほどではなかったが、ぬかるみが結構あった。
雨のあとや梅雨のころはズボッといくかもしれない。

ぬかるみ道

下山ももうつくか、もうつくか、と何度も地図をみてはまだまだあるを繰り返す。一度だけ少しのぼり返しがあり、グンと足をあげたその瞬間!太ももの内側がつった。悶絶。
そうこうしつつ下山開始から2時間ちょっと、ようやく新中の湯登山口までおりてきた。久しぶりの山行とあってか、いつもより筋肉痛がありそうな予感。でも膝は相変わらず痛くならず、いたって元気だ。
ここまでは。
そう、ここで終わりならよかった。
まだ私はここから中の湯バス停まで歩かねばならない。しかも車道のうねうね道。
YAMAPの地図をみるとショートカットできる箇所があるのだがその道がどうしてもみつからず、仕方なくずっと車道のうねうね道を歩いた。
車道は楽かと思いきや、1時間も固いアスファルトを歩くと足の裏が痛くなる。しかも、バスの時間が迫っていたのでかなりの早歩き。
いや〜、最後の1時間の車道歩きはこたえた。
早歩きのおかげでなんとか14時半のバスに間に合い、無事にさわんど駐車場に15時前にたどりつくことができた。
朝1時に自宅を出発してから長い長い1日だった。

ー 山行を終えて

全体を通してキツさでいうと上高地側からの登山道と新中の湯からの登山道と、どちらも同じくらいかなという印象。
上高地側は山の絶景が堪能でき、新中の湯からは紅葉が愉しめるので、9月下旬〜10月なら絶対に両方歩きをオススメする。
もしどちらかにするならば、紅葉シーズンなら新中の湯のピストン。それ以外なら上高地側からの一択だ。(私の場合)
なぜなら上高地側のコースは絶景だけでなくバリエーションが豊富でおもしろいから。
両方を歩く場合は最後の車道歩きが一番のネックだと思う。
たぶん、行きを新中の湯登山口までタクシーで向かい、帰りを上高地側からバスで帰るのが一番負担の少ない方法だと思う。
でも私はやはり逆ルートがいい。
なぜなら上高地側のハシゴはのぼりの方が好きなのと、やはり焼岳を前にみながら進む絶景が素晴らしいから。のぼりのキツさはアスレチックのような愉しさと絶景のおかげでかなり解消された。
その代わり、最後の車道歩きというなかなかハードなおまけがついてくる。
どれを取るかは季節と体力と、あとは混雑具合によるかなと思う。
いずれにせよ、焼岳は魅力あふれる山だった。
噴火レベルがあがらなければ、また季節を変えてのぼってみたい。

次きたときは、絶対温泉入りたい!!


距離:14km
累積標高(のぼり/くだり):1041m/1232m
タイム:7時間47分(休憩36分含む)



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