イギリス柔術連盟(UKBJJA)のコロナ対策ガイドライン

UKBJJA(イギリス・ブラジリアン柔術連盟)が、新型コロナウイルス感染症に対するレポートを公表したので内容を紹介します。

UKBJJは連盟として、各アカデミーのコロナ禍での練習方法について方針を出し、その効果を検証し、さらに会員それぞれの状態まで調べています。すばらしいですね。検証をきちんとしているところが流石です。

UKBJJAが示した練習ガイドライン

UKBJJAは、コロナ禍での練習について、地方や感染状況によって、どのような対策をとり練習をすべきか丁寧に解説しています。例えば、

(1) クラスは予約制にすること
(2) 体温と健康状態の記録を取ること
(3) 3−5人のグループを固定し、その単位で練習をすること。その単位での感染者が出た場合はその単位ごと練習を停止すること。
(4) リスクが高いひと(高齢者、基礎疾患があるひと)と練習参加者が道場外でも交流しないようにすること
(5) 参加者の行動履歴を追えるようにしておくこと
(6) 練習の再開にあたっては資格のある感染症対策官から評価を受けること。
(7) 行動履歴を追うための NHS(注1)のQRコードを道場に掲示すること。参加者はそのQRコードを必ずスキャンすること
(8) 自分自身や周りの人の体調が悪い時は参加しないこと

などです。なお、ガイドラインは状況の深刻さによって変更されるようです。

効果の検証

このガイドラインの効果を検証したところ、感染対策が有効に機能したことがわかりました。

練習が再開した2020年6月1日から10月31日にかけデータを取り、効果の検証は行われました。なお、イギリスでは、3月には1日あたり5000人を超えていた新規感染者が、6月初旬には1000人ほどにまで減り、練習をこの時期に再開したという事情があります。

186人の一般参加者と90人のコーチからデータを集めました。参加者で2727回、コーチで1337回、上の期間にクラスへの参加がありました。

この4064回(2727+1337回)の参加について、体温が基準(イギリスでは37.7度)を上回っていたのはたった2件でした。この2件について追跡調査を行ったところ、1名はその後すぐ平熱に戻り、その後10日間に渡り、熱が上がることはありませんでした。また、彼女の周りでその前後に新型コロナウィルスに感染する人もいませんでした。もう一人は、道場まで走ってきたため、熱が高かっただけでした。どちらも一般参加者で、コーチでは体温が基準を上回ったケースはありませんでした。

これらの結果は、ガイドラインがきちんと守られており、しかも、機能していたことを示しています。結果として、調査対象の範囲で、道場での感染も感染の連鎖もありませんでした。何かあった場合の履歴追跡まで実施できる体制であることも発熱者の行動履歴が取れていることからもわかります。

きちんとした感染対策をとり、万が一に備えておけば、コロナ禍でも安全に柔術をできることをこの結果は示しています。

このレポートはpdfで公開されていますから、興味のある人は目を通してみてください。下にURLを示しておきます。

さらに柔術家にコロナ禍が与えた影響についても報告がなされています。長くなったので続きます。

引用文献

・Martin, R. (2021). A study into the balance of risks to mental and physical health from the 2020 lockdown and cessation of training for Brazilian Jiu Jitsu (BJJ) players in the UK versus the risks to physical health from Covid-19. 

[https://www.ukbjja.org/wp-content/uploads/2021/01/Study-into-the-effects-of-lockdown-on-the-BJJ-community-versus-risks-from-Coronavirus.pdf]

注1:NHSは国民保険サービスの略です。イギリスの医療は基本的全て無料で、NHSが保険省の監督の元、これを司っています。

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