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年をとっても上達できる: 70歳が柔術を12週間やると…

70歳でも柔術をはじめられるし、3ヶ月で身体が変わるという話です。

71歳で試合に挑戦

Elaine Wynnさんが試合に挑戦している動画付きのツイートが話題になりました。6人のお孫さんがいる71歳の女性です。

もう少し詳しい話がjiujitsutimesに紹介されています。68歳のときGracie Barraで柔道と柔術をはじめ、1年半ほどして青帯を授与されました。それまでの格闘技の経験は50年前に柔道のクラスを6週間受けただけだそうです。

平均70歳が柔術を

高齢になると運動不足が深刻な健康問題につながります。ちょっと検索すると山ほど情報が出てくると思いますが、日本人の運動不足は深刻です。そのためもあり医師会や厚労省や自治体はそろって運動を習慣にすることを勧めています。せっかくはじめるなら、楽しく、全身が無理な使えるものがよいですよね。そこでブラジリアン柔術の出番です。「70歳をすぎて格闘技なんて」と思う人もいるかもしれませんが、意外にできるものです。

ブラジリアン柔術が高齢者の運動能力向上に与える効果を検討するため、de Queirozたちは平均70歳の高齢者に12週間、ブラジリアン柔術を経験してもらいました。なお、研究には健康面の基準をクリアした人だけが参加しました。


31人が12週間、週2回90分のクラスを受講しました。また、別の31人が比較対照群として、運動をしないで12週間を過ごしました。90分のクラスは、ウォームアップ、マット運動、柔術テクニック、クールダウンと進む通常のクラス構成です。世界中、どこも同じような感じですね。なお、初心者ですのでスパーリングは行いませんでした。

12週間の効果

柔術を始める前と12週間後に体力テストを行い、その結果を比較しました。体力テストは高齢者の体力を測る典型的な6つでした。
・モビリティ・動的バランス(イスから立って2メートル先まで行って帰ってくる秒数)
・心肺機能(6分間歩行)
・背中の柔軟性(上体起こし)
・腰の柔軟性(座って前屈)
・腕の強さ(アームカール)
・脚の強さ(30秒で何回イスから立てるか)

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12週間でどれくらい違いが出たのか、上の図に示しました。全ての項目で柔術のトレーニングが効果を上げていることがわかります。比較対照群で変化はありませんでした。変化をパーセンテージで表すと

・モビリティ・動的バランス 15.7% up
・心肺機能 11.8% up
・背中の柔軟性 46% up
・腰の柔軟性 52.7% up
・腕の強さ 11.8% up
・脚の強さ 18.1% up

でした。変化は特に柔軟性に大きくみられることがわかりました。下半身の強さやモビリティが向上しました。これも高齢者の生活を考えると重要なポイントです。日々の移動が楽になることにつながるからです。これらの結果は、柔術のトレーニングが比較的短期間で高齢者の体力を向上させ、健康にポジティブな影響を与えることを示しています。

82歳で黒帯

先日、82歳でブラジリアン柔術の黒帯に昇格したことがSNSで話題になりました。

これまた歳をとってもできることを示す好例ですね。柔術道場ホームページの「よくある質問」に「40歳からでもはじめられますか」など年齢に関する質問がよくあります。「何歳でもはじめられます」というのは柔術道場の決まり文句です。この記事で紹介した話はそれを裏付けています。

最初に紹介したElaine Wynnさんは、70歳を過ぎて柔術をやるメリットについて話し、筋肉が付く、心肺機能が高まるなどの身体的な効果にとともに、新しいことに挑戦すること、若者に囲まれて取り組むことの効果の素晴らしさを強調しています。

「練習では11歳の子から30–40歳のひとまでいろんな人とスパーリングをします。マットに上がれば自分の年齢なんて完全に頭から消えてしまいます。私の道場は本当にすてきで、ウエルカムなムードがあるんです」 

下の写真からもその雰囲気が伝わります。


引用文献

de Queiroz, J. L., Sales, M. M., Sousa, C. V., da Silva Aguiar, S., Asano, R. Y., de Moraes, J. F. V. N., ... & Simões, H. G. (2016). 12 weeks of Brazilian jiu-jitsu training improves functional fitness in elderly men. Sport Sciences for Health, 12(3), 291-295.

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