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ブラジリアン柔術の消費カロリー:痩せる?痩せちゃう?

ブラジリアン柔術を始めるきっかけのひとつにダイエットがあります。運動で健康的に痩せるのを目指すわけです。実際、ブラジリアン柔術を始めて痩せたひとは私の周りにもたくさんいますし、SNSなどでも頻繁に目にします

運動強度と消費カロリー

運動による代謝向上には体重を減らす効果があります。ただ、運動によるカロリー消費はなかなか大変です。例えば、体重60kgの人が10分およそ700mを歩きます。これだと30 kcalしか消費しません(厚労省https://bit.ly/34JqWvK)。ルマンド1本分、37 kcalより少ない消費量です。1袋ではありません。1本です。10分歩いてこのくらいですから運動で痩せる難しさがわかります。

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こんだけ…  30分歩いても2本半です。

ブラジリアン柔術の運動強度

痩せるための鉄則は摂取カロリーより消費カロリーを増やすことです。食べるより多く消費すれば痩せます。細かいことはいろいろあるのですが、時間が長く、強度が高い運動ほど消費カロリーが多くなります。

さて、ブラジリアン柔術ではどのくらいのカロリーを消費するのでしょうか?カロリーの消費は、運動強度、運動時間、その人の体つき、年齢、性別などによって変化します。そのため正確に求めるのは難しい。なので、おおよそのところを紹介します。

まず、柔術がどのくらいの運動強度か確認しましょう。Øvretveitは、ブラジリアン柔術のスパーリングにおける心拍数や血中乳酸濃度などの変化から運動強度を調べました(Øvretveit, 2018)。12名が実験に参加し、平均年齢は30歳。柔術のレベルはさまざまでしたが、試合に出ているか、2年以上の経験がある人たちでした。楽しみとして柔術に取り組んでいる人たちでいわゆるトップ選手ではありません

6分のスパーリング5本行い測定をしたところ、心拍数は6本のスパーリングの間、最大心拍数85%の値をおよそ維持し続けることがわかりました(平均164回/分)。平常時が最大心拍数の45%ですから、かなり心拍数が多い。これは相当高い運動強度であることを裏付けています。一方、疲労を反映する血中の乳酸濃度は、スパーリングのラウンドを重ねるほど高くなりました。これらの結果は、スパーリングは、長時間続けられる、高強度の運動であることを示しています。

消費カロリー計算

運動における消費カロリーを求める式をKeytelたちは以下のように定義しました(Keytel et al., 2005)。

消費カロリー = ((-55.0969 + (0.6309 x 心拍数) + (0.1988 x 体重) + (0.2017 x 年齢))/4.184) x 60 x 運動時間 (注1)

Øvretveitのデータをこの式に当てはめると、6分間5本、30分のスパーリングの消費カロリーは506 kcalとなります。30分でなかなかの消費カロリーとなります。松屋の肉カレーうどんと同じくらいです(542 kcal)。

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いやーなかなかの大物ですねー。

なお、506 kcalは30歳男性、体重80kgの例です。同じ心拍数で40歳男性65 kgですと498 kcal、40歳女性50kgですと356 kcalとなります。いずれも上で示した10分の歩行と比べると、かなりカロリーを消費していることがわかります。

かなりの消費カロリー

通常のブラジリアン柔術のクラスでは、スパーリングだけを行うわけではありません。ウオームアップ、基礎ドリル、テクニック指導なども行います。時間としてはスパーリングより長い(ことが多い)。ウオームアップやドリルをそれなりの強度で行うなら、1回の練習で1000 kcalくらい消費するでしょう。松屋なら牛めし大盛りです。

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いやー夢が広がりますねー。

実際の消費カロリーを正確に計算するのはなかなか難しいのですが(注1)、これらの例は目安にはなると思います。ブラジリアン柔術はかなりカロリーを消費するのです。強度が高い運動をひとりでするのは大変です。フィットネスジムやジョギングが習慣化しづらいのはそのせいもあります。柔術は対人競技なので、相手と組んで行います。周りには指導者も、他の仲間もいます。そういう環境では、周りに乗せられて、強度の強い運動もこなせてしまいます(なお、初心者の方に無理をさせることはありません)。慣れてくるとスパーリングはとても楽しい。ですから、楽しく遊んでいる感じでカロリーがガンガン消費されます。

さらにブラジリアン柔術は、程よく力も使いますので、単にカロリーを消費するだけでなく、筋力や筋肉をつけることもできます。ですから、単に痩せるだけでなく、身体も動くようになり、身体つきもよくなります。身体も柔らかくなりますね。しばらく運動をしていなかったひとが週3回、半年ほど続けると、劇的な変化を実感できると思います。健康的なダイエットをお考えの方にはおすすめです。

あと、最後になりますが、柔術をやっていても消費カロリー以上に食べたら痩せません。悪しからず。運動するとご飯が美味しくなって、ついつい食べすぎるというのは「柔術あるある」です。

引用文献

・Keytel, L. R., Goedecke, J. H., Noakes, T. D., Hiiloskorpi, H., Laukkanen, R., van der Merwe, L., & Lambert, E. V. (2005). Prediction of energy expenditure from heart rate monitoring during submaximal exercise. Journal of sports sciences, 23(3), 289-297.
・Øvretveit, K. (2018). Acute physiological and perceptual responses to Brazilian jiu-jitsu sparring: the role of maximal oxygen uptake. International journal of performance analysis in sport, 18(3), 481-494.

(注1) これはあくまでも簡易推定値で、実際の値ではありません。実際の値はひとりひとり、身体の組織まで詳しく調べなくては求めることができません。ただ、不正確なわけではなく、ダイエット等の指針としては十分な正確性があります。

なお、女性の場合は以下の式になります。

消費カロリー(女性)= ((-20.4022 + (0.4472 x 心拍数) - (0.1263 x 体重) + (0.074 x 年齢))/4.184) x 60 x 運動時間

最大酸素摂取量も考慮する式もKeytelは提案しています。柔術家の最大酸素摂取量は平均的に見る限り一般の人と変わりません。そこで、ここでは単純な式を示しました。柔術の競技特性から考え、心肺機能はあまり強化されないためです。

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