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データから見る白帯の試合対策:ポイント奪取編

ブラジリアン柔術を始めて1、2年、スパーリングがいい感じでできるようになると試合を目指す方がちらほら出てきます。とはいえ、白帯ですと経験も知識もそれほど多くありません。使える技も限られています。さて、白帯の皆さんは、試合でどのような技を使うのでしょうか?これがわかると試合の対策や準備に役立つと思います。ご当人だけでなく指導者の方にも。

Williams らの研究

インターネット上にある白帯と青帯の試合動画140本を使いWilliamsたちはテクニックの分析を行いました(Willams et al., 2019)。今回は白帯のデータに焦点を絞り、立ち技、パスガード、スイープに分けて紹介します。

立ち技

全体として247回立ち技の攻防がありました。白帯では立ち技で一番多く見られた展開は引き込みでした。実に攻防の46%です。そのうちの94%が成功でした(ガードに入れました)。試合に出るからには、まず引き込みをしっかりできる必要がありそうです。

他はダブルレッグ・テイクダウンが20%、足払いと払腰(*1)が10%ずつでした。ただし、どれも成功率が低かったです(10%程度)。立ち技は難しく、柔道やレスリングの経験者でないと、試合で使いこなすレベルにはなかなか達しません。普段の練習は寝技ばかりですからね。別の言い方をすれば、立ち技の(テイクダウンの)能力が高ければ強力な武器になります。

パスガード

パスガードは全体で107回の攻防がありました。白帯ではトレアナパス、ニースライスパス、レッグピンパス(*2)で全体の93%でした。どれも80%以上の成功率でした。白帯では、いわゆるステップ系のパスが多く用いられるようです。相手のガード技術が高くなければ、適当にどこかを掴んで動くだけでパスできることがあります。そういう意味でステップ系のパスが白帯では有効かもしれません。一方、プレッシャー系のパスはコツをつかむまで少し時間がかかります。白帯で有効に使える人は少ないかもしれません。

ステップ系のパスの代表はトレアナパスですね。

パスガードの高い成功率は、引き込みをしっかりすることの重要性を改めて裏付けています。高いパスガードの成功率は、多くの引き込みが、結果としてパスガードされポイントを取られることを示しています

スイープ

スイープは全体で56回の攻防がありました。数が少ないので参考にならないかもしれません。シザーズスイープとヒップスロー(ヒップバンプスイープ)が多く使われました。成功率はシザーススイープで55%、ヒップスローは38%でした。

立ち技・パスガード・スイープ

立ち技、パスガード、スイープの順で攻防が多いことが上の通り示されました。パスガードはスイープよりも攻防が多く、しかも成功率は非常に高かったです(80%以上)。また、立ち技の半分は引き込みで、それ以外の技はほとんど成功しないことがわかりました。これらの結果は、白帯にとってパスガードが勝利の鍵になることを示しています。白帯でガードワークに習熟することは難しいので、パスガードが得点に結びつきやすいと解釈できます。

別の角度から見れば、簡単にパスされないガードを身につければ、白帯では頭一つ抜け出た実力があるということかもしれません。

立ち技、パスガード、スイープの順で攻防の数が多いことは、(1)スタンドの状態で膠着し、(2)どちらかが辛抱が切れガードに引き込み、(3)そのガードがパスされるという展開が多いことを示唆しています。この展開を頭に入れた上で、自分の得手不得手、目指す方向性などを考慮して対策を立てるのが良いでしょう。

例えば、パスガードが得意だからといって、相手の引き込みを待ってばかりいるとスタンドで膠着が続くばかりです。比較的安全な立ち技(アンクルピック、アームドラッグ)を仕掛け相手が引き込みたくなるように仕向けると良いかもしれません。あるいは、一度自分で引き込み、少しでも悪いポジションになったらすぐに立ってしまうのも有効です。たいてい次は相手が引き込んできます。

試合に出るひとにも、出ないひとにも

今回紹介したテクニックの分析は、試合に出ない白帯の方にも有効だと思います。白帯の方がよく使う技は、比較的身につけやすい技なので、それらが練習すべき技の候補となるからです。

今月から少しずつブラジリアン柔術の試合が再開されます。もしかすると初めて試合に出る白帯の方がいるかもしれません。この記事が試合の対策を立てるために、また準備を進めるために参考になると良いのですが。

次回「データから見る白帯の試合対策2:極め技編」に続きます。

引用文献

・Williams, J., Callaway, A., Gara, M., & Tattersall, P. (2019). Technique utilisation and efficiency in competitive Brazilian Jiu-Jitsu matches at white and blue belts. International Journal of Performance Analysis in Sport, 19(3), 353-369.

*1原文ではforward throw。
*2 原文ではknee pin pass。もしかするとニースルーパス(同側の膝を踏むパス)かもしれません。


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