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柔術での怪我(2):どれくらい、どんなとき?

ブラジリアン柔術は怪我が少ない格闘技と言われています。とはいえ、直接のコンタクトがあり、実践形式の練習もあるので、それなりには怪我をします。

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McDonaldたちが行なった研究では、1週間以上練習を休むレベルの怪我をおよそ9割の人が過去1年に経験しているとのことでした(McDonald et al., 2017)。

とはいえ、他の競技と比べ特別に多いというわけではありません。例えば、バスケットボールと比べると救急車を呼ぶレベルの怪我は、格闘技の方がだいぶ少ないということもわかっています(Pappas, 2007)。

どれくらい怪我をするのか?

Hinzたちは、ブラジリアン柔術における怪我について、もっと細かく情報を集めるため、1140人を対象に調査を行いました(Hinz et al., 2021)。対象者は、柔術経験者で、平均年齢31歳、およそ9割が男性でした。過去3年間に2週間以上練習を休むレベルの怪我をしたかを尋ねました。さらに、怪我の部位やその状況についても報告してもらいました。

まず、どのくらいの人が2週間以上休む怪我をしたか尋ねたところ、3割以上の人が、そのレベルの怪我をしないで済んだそうです。下の図のとおり、過去3年で大半のひとはせいぜい1回程度です(0回と1回でおよそ8割)

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McDonaldたちの研究では、1週間休むレベルの怪我は9割くらいくらいが経験していました。怪我のレベルがこの違いに影響しているのでしょう。2週間以上休むのはなかなかの怪我ですから。

どんな時に怪我をするのか?

怪我のほとんどはスパーリングで起こっていましたスパーリングでおよそ8割(77.6%)です。それ以外では、試合で9.6%、テクニック指導や打ち込みで11.4%でした。ほとんどの怪我は、スパーリングや試合のように競技の場面で起こることがよくわかります。

怪我の状況を詳しく見ると以下の図になりました。

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関節技・絞め技、立ち技、パスガードはだいたいどれも同じくらい。どれも20-30%です。これらと比べるとスイープは少ない。スパーリングでもどの場面で気をつけるべきかがよくわかります。関節技・絞め技は直感的に危険性がわかるので、多くの人が気を使います。一方、パスガードについてはそこまでではないと思いますから、注意喚起が必要かもしれません

ちなみに関節技・絞め技で、怪我に結びつくのは基本的には関節技でした。多い順に並べると、腕十字固め(22.4%)、キムラロック(12.6%)、ヒールフック(11%)でした。

どこの怪我が多い?

怪我の部位では、下半身が45.7%、上半身が30.7%でした。特に膝(27.1%)と肩(14.6%)が多い。また、診断名が付いた怪我を多いものから順に5つならべると、膝十字靱帯損傷、足関節内外側靭帯損傷、膝側副靭帯損傷、半月板損傷でした。

個人的な印象としては、柔術における急性の怪我は膝、肘、一方、慢性的な痛みは膝、腰、首が多いように思います。無理せず、怪我を悪化させないようにしたいですね。特にスパーリングは気をつけて、怪我なく無理なく参りましょう

引用文献

・Hinz, M., Kleim, B. D., Berthold, D. P., Geyer, S., Lambert, C., Imhoff, A. B., & Mehl, J. (2021). Injury Patterns, Risk Factors, and Return to Sport in Brazilian Jiu Jitsu: A Cross-sectional Survey of 1140 Athletes. Orthopaedic Journal of Sports Medicine, 9(12), 23259671211062568.
・McDonald, A. R., Murdock, F. A., McDonald, J. A., & Wolf, C. J. (2017). Prevalence of injuries during Brazilian jiu-jitsu training. Sports, 5(2), 39.
・Pappas, E. (2007). Boxing, wrestling, and martial arts related injuries treated in emergency departments in the United States, 2002-2005. Journal of sports science & medicine, 6(CSSI-2), 58–61.

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