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柔術で左右のバランスが良くなる

世の中には右利きが圧倒的に多く、およそ9割の人が右利きです。これは世界のどこでもほとんど変わりません(注1)。通常、利き手のほうが力が強く、手先も器用です。ただし、柔術をやると左右のバランスが良くなるようです。

握力の比較

Burdukiewiczたちは、柔道家、柔術家、ボディビルダーを対象に筋肉の付き方と握力を比較しました (Burdukiewicz et al., 2020)。大学にあるそれぞれの競技を行うクラブから30人ずつが研究に参加しました。また、比較対象として、運動経験がない人も参加しました。

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上の図に握力の左右差を示しました。柔術家では、左右の握力にほとんど差がありません。柔道家ではわずかに左右差が増えました。一方、運動経験がない人ではかなり大きくなり、ボディビルダーではその差がさらに拡大し、なんと5 kgほどになりました。この差はすごいですね。なお、これら左右差は、右手から左手の握力を引いた値です。右利きが多いため、どのグループでも正の値になっています。運動経験がない人でも3kg近く右が強い。それが柔術家ではほとんど差がなくなっています。

なお、比較した4つのグループ(柔術家、柔道家、ボディビルダー、運動経験のない人)の間で、握力そのものに差はありませんでした。どのグループもおよそ50 kg弱。日本の成人男性の平均とだいたい同じです。

なぜ柔術をやると左右差が減るのか?

ブラジリアン柔術では全身を使うことが求められます。左右を同じように使うわけではありませんが、両手、両足を含め全身を隈なく、そして、練習中は絶え間なく使います。また、コンタクトスポーツなので、身体の左右動作を自分の好き勝手に選べるわけではありません。相手にあわせる必要があります。これらの結果として、競技中の動きに左右差が減ります。もちろん差はあるのですが、他の競技に比べれば圧倒的に少なくなります。野球やテニスと比べると違いが直感的にわかるのではないでしょうか。

身体の左右でバランスが崩れると、肩こりや腰の痛みなどが発生しやすくなりますスポーツ場面での怪我にもつながりやすいです。柔術をやると左右のバランスが良くなるので(やりすぎなければ)肩こりや腰痛も減るかもしれません。

まあ、柔術は楽しすぎるので、たいていやりすぎて逆効果になるんですが。ある程度やりこんでいる人は、腰痛、肩痛、膝痛とお友達なはずです。

引用文献

・Burdukiewicz, A., Pietraszewska, J., Andrzejewska, J., Chromik, K., & Stachoń, A. (2020). Asymmetry of Musculature and Hand Grip Strength in Bodybuilders and Martial Artists. International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(13), 4695.

注1:例外はあり、例えば中国語圏では右利きがさらに多くなります。


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