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柔術家の食事:十分な栄養は足りていますか?

身体をつくる基本は食事です。ハードなトレーニングをしても十分に栄養を取らないと身体はむしろ衰えます。体重別の競技であるブラジリアン柔術では、食事を含む栄養補給が不足気味になる傾向があるようです。

Paiyaratの研究

Paiyaratたちは、試合準備期間におけるブラジリアン柔術家の食事状況を調べました(Paiyarat et al., 2024)。タイに住む経験1年以上で国内最高峰の試合に臨む選手が対象となりました。日本だと全日本選手権の前という感じでしょう。男性、女性とも平均年齢22歳。アダルトの選手です。平均身長は男性168 cm、女性160 cm、平均体重は男性61 kg、女性63 kgでした。男性は少し日本の平均より小さいくらい。女性はちょっと大きめですかね。

炭水化物が足りない

日々の食事を記録し、選手たちの栄養摂取量を計算しました。そして、推奨の栄養摂取量と比較しました。栄養素としては、米、パン、糖分から摂取される炭水化物、肉類からとれるタンパク質、そして脂肪の3つを集計しました。まとめたものが下の表です。

柔術家の栄養摂取状況。摂取量、推奨量ともに体重1 kgあたりのもの。
***は p < .001で推奨量より有意に少ない栄養素。

炭水化物が推奨量より圧倒的に足りないことがわかります。推奨される量のおよそ半分となっています。試合前の減量期間ということもあるとは思いますが、これでは疲れてしまい十分な練習ができない可能性があります。

炭水化物はエネルギー消費に比較的すぐに使わる栄養成分です。これがないとエネルギー不足で身体や頭が働きません。エネルギー不足になれば、練習の質も低下します。過度に減らしすぎるとデメリットが多いので気をつけるべきです。

タンパク質は主に身体を作ることに使われます。選手の皆さんは、きちんと推奨される量をとっているようでした。今回の調査対象となった選手について調べたところ、タンパク質の摂取量と筋肉量に正の相関がありました。タンパク質を多くとっている選手ほど、筋肉が多くついていたのです。特に女性でその傾向がはっきりと出ていました。

脂質はエネルギーのなると同時に身体の調子を整える役割もあります。こちらも適切な量を取れているようでした。

減量との兼ね合い

おそらく炭水化物を極端に減らしたのは減量との兼ね合いがあるのでしょう。ただ、過度に減らすと上に書いたように弊害もあるので、きちんと計画を立てて体重管理をするべきでしょう。

なお、今回対象となった選手たちは、タンパク質と脂質はきちんと推奨量をとっていました。やみくもに食事を減らしてはいなかったのです。食べる量を減らすと体重は落ちますが、ただ単に食べなければ身体が衰えてしまいます。この辺のことも食事を準備する上では考えていきたいですね。

日本人の食事にはタンパク質が足りない

なお、タンパク質は意識しないと推奨量を取るのはけっこう困難です。男性アスリートの場合、体重1kgあたり1.76gが1日あたりのタンパク質推奨量。なので、体重70 kgの男性なら123 gになります(体重55kg の女性だと80g)。2019年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると日本人の平均タンパク質摂取量は1日あたり70 g。だいぶ少ない。普通に食事していると、男性の場合、推奨の半分くらいしか取れていないことになります。何も運動をしていないならこのくらいでも良いのかもしれませんが…

タンパク質は、卵1つで約10g、鶏肉100 g に約20g、ご飯1杯に約3gなど意外に少ししか食べものに入っていません。松屋で牛丼の並を食べてもタンパク質は1杯17gです。1日3食牛丼でも1日の推奨量には全然足りません。さらに、1回の食事で30g以上を体内に取り込むのは難しいと言われています。それ以上の量を一度にとっても排泄されます。排出できない分は脂肪として体に蓄積されます。なので、毎食きちんとタンパク質を摂取しなくてはなりません

そのあたりを考えて食事を摂ると疲れにくいだけでなく、体格も競技に適したものに変化していくでしょう。

引用文献

・Paiyarat, K., Techakriengkrai, T., Jamphon, A., Penglee, N., Polyai, N., & Techakriengkrai, W. (2024). Nutrition status of elite Jiu-Jitsu athletes during training season. Scientific Journal of Sport and Performance, 3(3), 405-416.


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