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婚活のきれいごと

「きれいごと」って英語でなんて言うんだろうと検索してみたら、"fine-sounding words"という言い回しに出くわした。なるほど、耳ざわりの良い言葉か、と膝を打ったのだけど、「なに調子の良いこと言ってんだよ」みたいな場面でも使えるのかな? 使えるかもしれない。

建前と「きれいごと」

日本には「本音と建前」という言葉もあって、お互いの関係が近しくないとなおさら、口にされる建前は本音の真逆になることもある。それが「耳ざわりの良い言葉」になるのかわからないけど、思っていないことをあたかも思っているかのように言う。控え目な態度、打算、またある種のかけ引きとして。

いっぽう婚活する男女で交わされる「きれいごと」は少々様相が異なる。その建前に本音や本心も含まれるから。

彼/彼女のどちらかが「結婚にはお相手の人柄や価値観、内面を重視します」と言ったとしましょう。

それに対して、

ある男性は「なに言ってんだよ。なんだかんだ言ったって女性はイケメンや年収の高い男が好きなんだろ?」とやっかむかもしれない。

ある女性は「なに言ってるのよ。男なんて若い子が好きに決まってるわ」と、冷めた言葉を発するかもしれない。

性格重視という発言に、これらの2人は「それは表向きの、きれいごとだ」と異を唱える。

控え目に言って、こうした意見もまた真理じゃないかと思う。生活する上で経済力は大切だし、男女問わず若い人により魅力を感じるのは自然なことだし、婚活において美男/美女であることは最大の長所だから。

けれどもある年齢をさかいに、私たち大人は、結婚は経済力や年齢や容姿が整ったお相手とだけ上手く行くものじゃないと大概理解する。理解するというか、想像がつく。

そして結婚後上手くやって行くためにはお相手の誠実さや優しさや、夫婦二人で受け入れられる価値観の共有などが大事というのも同じく想像がつく。そうしたことが大前提としてまずあるものだから。

自分のなかの「きれいごと」

誰かに向けた「きれいごと」ではなく、自分自身に向けた「きれいごと」も、またあるのではないかと思う。そうありたい自分というか、自己嫌悪に陥りたくないがための自分というか。

古くからの地元の友人の話をしますね。

彼はある時期ひと回り以上年上の女性とお付き合いしていたことがあった。彼のそのときの年齢を考えると彼女は50歳を過ぎていたと思う。

彼は彼女のことを大切にしていたし、人として尊敬していたし、結婚することもまじめに考えていた。

ただ彼の両親というか、彼の育った家庭には孫にあたる子供がおらず年の離れた姉は1人いたもののその姉に子供をのぞむことは年齢的にかなりきびしかった。

つまり、彼が子供をもたない選択をするとおのずと自分の両親には孫の顔を見せられないことを意味した。お付き合いしていた彼女に既婚歴はあったものの子供はいなかったから。

最終的に彼はその彼女と別れる選択をした。両親に孫の顔を見せること以上に、彼自身も子供を望んでいたし、将来自分よりも若い女性に目移りしてその別の女性と子供をもつことを選択してしまう自分を否定しきれなかったから。お互いのためにも結婚後にそういうことを起こしては決してならないと強く感じたから。

当時の彼にとっての「きれいごと」は子供をもうけないことを受け入れた上で、その年上の彼女と一生添いとげることだった。もし可能であればそうしたかったし、自分の姉に子供がいればまた状況も変わり違う選択ができたのではないかと悩んだけれど、最後には彼が彼自身の本心にたいして誠実に向き合った結果だと思う。

自分に調子の良いことばかり言ってもいられないのだ。

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