見出し画像

デザイン事務所のお客様(7)「お任せします」の罠編

こんにちは。田舎の小さなデザイン事務所で働くたまです。

今回は、前回に引き続き女性のお客様のお話。
といっても女性「経営者」ではなく、木工製品を作っている会社の社長夫人Mさんです。
こちらの会社で新商品の高級寿司桶ができたので、PR用のリーフレット制作をお願いしたい、というご依頼をいただきました。

さて、商品のPRで重要なのはやはり「商品写真」です。
いくら言葉を尽くして商品の素晴らしさを伝えようとしても、ダイレクトに伝わる写真の訴求力にはかないません。

写真は私も代表も素人なので、お客様と相談の上、予算が取れる時は外注でプロカメラマンさんにお願いしています。(予算がない時は私と代表がひたすら撮りまくり、奇跡の一枚を狙います)

この時は料理の写真が得意なF氏にお願いしました。
代表とF氏、奥様の3人でどんな写真を撮るかの事前打ち合わせが行われたのですが、奥様は「よくわからないのですべてお任せします」とおっしゃっていたとのこと。

とりあえずその時の打ち合わせでは、「ちらし寿司」「白いごはん」「赤飯」を寿司桶に入れた3パターンの写真を撮って「ちらし寿司だけじゃなく様々なシーンで使えますよ!」という方向でリーフレットを作ろう、ということだけ決めて解散になったそうです。

さて撮影当日、公民館の調理室を借りて準備が始まりました。

料理の準備は私と代表で行います。
二人とも料理はあまり得意ではないのですが、そこはそれ、撮影用の料理なので別に味はどうだっていいんです。見た目さえ良ければ。

その時作成したちらし寿司の写真がこちら↓
(商材の寿司桶はお見せできないので一部だけ切り取っています)

画像1

このれんこんとにんじんの飾り切り、私がやったんですけど上手くないですか!!←

さて作った料理をもとにして、テーブルのセッティングを行うのは代表とカメラマンF氏。二人で慎重に料理を並べ、構図やライティングを決めていきます。私はよくわからないので、洗い物をしたりしながら撮影の様子を眺めてお勉強です。見て盗むというアレです。(いまだに盗めてませんが)

撮影は順調に進んでいたのですが、途中から撮影を見学に来た奥様がどことなく暗い顔。
寿司桶に白いご飯を入れて、お茶碗、お味噌汁、焼き魚などを並べて「朝食の風景」をイメージした写真を撮っている時に、

「あのう……食器がイマイチなので、家から食器を取ってきてもいいですか……」

と言い出したのです。
代表はにこやかに「いいですよ~」と言ってましたが、内心はおもしろくないはず。食器をあれこれ悩んで選んだのは代表ですから。

奥様が持ってきた食器で「朝食の風景」を撮り直し、赤飯の写真も撮ってその日の撮影は終了。

数日後カメラマンF氏から、撮影した写真が送られてきました。
さすがにプロだけあって、寿司桶の木目は鮮やか、手触りは滑らかそうな感じで、いかにも「高級そう」に写っています。これならきっと奥様も納得してくれるはず……と思ったのですが。
奥様に写真を送ると、こんなメッセージが入りました。

『すみません。撮り直してほしいです』

えーーー。めっちゃ綺麗な写真なのになんで?
代表が理由を教えてください、と返すと、

『思ってたイメージと違う』
『もっと上品で高級な感じにしたかった』

等々のお言葉が返ってきました。
いや十分上品で高級だと思うんですけど。
そして一番「???」だったメッセージがこちら。

『赤飯が赤すぎて。うちの寿司桶には白い赤飯の方が合います』

白い赤飯???
いやいや赤飯は赤いから赤飯でございましょ??

『私がいつも買ってるのはUというお店の赤飯で、普通の赤飯より白っぽくて品があるんです』

いやいやいやいや。
白くて品があるってなんやねん。赤い赤飯は下品なんか。普通の赤飯に謝れ(怒)

まあ百歩譲って白い赤飯が上品だとしよう。
だったら先に言え。
Uさんとこの赤飯使ってくださいって、言え。

そして問題があります。撮り直しとなると当然費用が発生するわけです。またプロカメラマンにお願いすると、再度同じだけの撮影費用がかかるわけで。
その費用を奥様は出さないと言う。もちろんうちの事務所だって負担するいわれはない。
さあどうする。

相談の結果、赤飯と白いごはんの写真は代表が撮り直す、それ以外の写真は奥様が今まで撮った写真を加工して使う、ということになりました。
そして代表を最も怒らせた奥様のセリフがこちら。

「今までお願いしてたデザイナーさんは何も言わなくてもとても素敵な写真にしてくれてたので、今回も大丈夫だと思いました」

ほおおおおお?????

それはたまたまやねん。たまたま、そのデザイナーさんと奥様の感性が合ってただけで、普通は入念に打ち合わせをして、意識をすり合わせていくもんやねん。デザイナーは超能力者ちゃうぞ。

「お任せします」って言っといて後から「ああしろこうしろ」って文句言うって、やられた方からしたらめちゃくちゃ腹が立つんです。
あれですよ、「何食べたい?」「なんでもいいよ任せる」「じゃあ中華」「えー中華の気分じゃない」っていうアレと同じですよ。

私ならもうその奥様との仕事は2度としない!と思うところですが、代表はとても忍耐強い方なので、怒りながらもやっぱり奥様の仕事を引き受けています。えらいなあ……。

ちなみにこの奥様もコロナ前にはドバイに行ってました。マダムはドバイがお好きなようです。

さて今回のお話はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。
急に冷えて参りましたのでお体に気を付けて。暖かくして季節の変わり目を乗り切ってくださいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?